窪美澄 no.114        

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【書評】窪美澄「アカガミ」

◇現代の若者に対する危機感と国が家族のカタチを決める怖さ。


 舞台は2030年の日本。「異性の体を直に見たいとは思わない、触れ
てみようとは思わない」、そんな若者たちばかりになってしまったこの
国。彼らは性だけではなく生にさえ興味を失い、自殺者ばかりが増えて
いる。この設定に僕がリアルを感じるのは、「アカガミ」を読む前にテ
レビでまさに「そういう若者」を見てしまったからだ。現代とまさに地
続きだと思えるこの未来では、国が「アカガミ」というお見合いのよう
な制度を立ち上げて、状況を打開しようとしている。

 主人公のミツキは老人福祉施設に勤めているが、彼女もまた他者に興
味などなく、恋愛はもちろん、その感情すら理解することができない。
自殺をはかった彼女はログという女性に助けられ、彼女のすすめで「ア
カガミ」に志願する。教習所では映画やドラマなどを題材に恋愛やセッ
クス、結婚、家族というものを学び、選ばれた誰かと「番い(つがい)」
になるための準備をするのだ。

 相手に選ばれたのはサツキという男。彼らが家族になるまでのプロセ
スに心惹かれるのは普通ならばもう恥ずかしくて書かれないようなウブ
な恋や性への思いが描かれているところだ。その手探り感がなんだか愛
おしい。2人はやっと番いになり、ミツキは妊娠する。彼らは国家によ
って衣食住が保障され、子供ができたことでさらに特別な扱いを受ける
のだが…。

 デビュー作から生と性を描いてきた窪美澄は、この物語を通して現代
の若者に対する危機感、さらには、国が家族のカタチを決めつけてしま
う怖さを描いている。「アカガミ」というタイトルをつけたことで、ラ
ストはすでに暗示されていてそこには希望はないが、ミツキとサツキ、
2人の心の中に芽生えたものに僕はかすかな希望を感じた。(No.365)

◯窪美澄の他の本の書評はこちらです。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.7.3 まだ梅雨なのに暑い!ムシ暑い!やめてくださいっっっ。
読書は宮部みゆき「希望荘」。暑いので進まない。

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【書評】窪美澄「さよなら、ニルヴァーナ」

◇自分の中でうまく消化できなかった「少年A」の物語。
さよなら、ニルヴァーナさよなら、ニルヴァーナ
窪 美澄

文藝春秋 2015-05-28
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 窪美澄は大好きなのだけど、この小説にはうまく入っていくことがで
きなかった。1997年に起こった神戸の連続児童殺傷事件がモチーフに
なった物語だ。事件がそのまま扱われているわけではない。しかし、こ
れはやはり「少年A」の物語で、舞台も神戸。犯行現場もそのままだ。
どうもそのあたりの諸々を、自分の中でうまく消化することができない
のだ。

 4人の語り手が登場する。小説家志望の女性今日子、ネット情報から
少年Aに憧れる少女莢(さや)、少年Aに娘を殺された母親なっちゃん、
そして、少年Aであった青年倫太郎。話が進むに連れて、この4人はど
こかで繋がり、そこに新たな物語が生まれる。中盤過ぎでなっちゃんが
「(娘の)光があの子に殺されたのは、ほんとうに不幸なことだっんだ
ろうか。」と考えるところでは戦慄した。作者はなっちゃんにしっかり
と寄り添っている。しかし、寄り添いすぎてこんな言葉まで母親に吐か
せているのはちょっと恐ろしい。

 この物語で僕が共感できるのは小説家志望の今日子だけだ。小説教室
に通いながら講師の男と関係を持ち、文学賞では最終選考に残り、その
うち教室の古株になって「女王」なんて呼ばれている女。東京の暮らし
に見切りをつけ故郷に帰ったならば、母と妹夫婦とのどうしようもない
日々が待ち受けていて、絶望しながらも小説家への未練を断ち切れない
女。故郷の町の近くに青年になった少年Aが暮らしてるらしいと知って
しまった女。最終章である「終曲」は彼女の語りで書かれている。これ
が何とも凄まじい。

 ここで語られるのは今日子の述懐であると共に、小説家窪美澄の心の
叫びでもある。彼女がこの物語を苦しみながらも書き続け、もっともっ
と「人の中身が見たい」と思い、さらに書き続けていこうと決意してい
ること。「自分が見た地獄など、地獄の入口ですらない」「ならば、も
っと地獄に行こう。もっと深くて、もっと暗い、地獄に下りていこう」
と語る今日子。ううむ。とにもかくにも、これからも僕は窪美澄の物語
を読み続けていくだろう。数年経って読んでみたら「さよなら、ニルヴ
ァーナ」への自分の思いは変わっているのだろうか。(No.333)

◯窪美澄のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2015.7.27 梅雨が明けた途端にやたらと暑くなっちゃったじゃないか。
ドラマ「民王」がおもしろい。読書は朝井リョウの「武道館」。

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【書評】窪美澄「水やりはいつも深夜だけど」

◇強い共感と明日への勇気を与えてくれる家族の物語。
水やりはいつも深夜だけど水やりはいつも深夜だけど
窪 美澄

KADOKAWA/角川書店 2014-11-14
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 同じ幼稚園に子どもを通わせている5つの家族の物語。窪美澄の小説
は直接それを描いていなくても、根底にはいつも家や家族がある。夫と
妻、親と子、さらには、祖父や祖母の存在。彼女が描く家族、それは、
女性の立場から一方的に描かれたものではない。この短編集でも5つの
うち2つが「夫」の一人称で書かれているのだが、彼らの生き方、社会
人としてのありよう、妻との関係、交わされる会話、どれもが間違いな
く「男」であり「夫」なのだ。

 窪美澄は常に家をみつめ、家族を考え、夫と妻、親と子の関係に思い
を馳せている。だからこそ、その登場人物も物語もリアルで、読む側は
強く共感するのだ。彼女の読者は女性が多いのだろうけれど、一人でも
多くの男性に読んでもらいたいと僕は切に思う。

 理想的な家族、そんなものはどこにもないだろう。ここに出てくる夫
婦もトラウマや不安や情けなさやいろいろなものを抱えていて、関係も
ギクシャクしている。そんな中でも彼らは、何とか希望を見出して家族
として生きていこうとしている。同じだ、私たちと同じだ、この家族、
この妻、この夫、この子は同じだ、そう思うことで僕らは救われ、勇気
をもらえる。
 
 窪美澄はやっぱりいい。今年のマイベストに間違いなく入る1冊。最
後の1編「かそけきサンカヨウ」、女子高校生となさぬ仲の母、実の母
の話。そのストーリーとサンカヨウの透明な花の美しさが掉尾を飾るの
にふさわしい。(No.310)

◯この本の特設ページはこちら
◯窪美澄のその他の本書評はこちらから。
※一番上にはこのページがでます。
◯サンカヨウの花、ってこんなの

            ◯ ◯

2014.12.17 校正が‥。ああせいこうせいで、もう何だか‥。やるこ
とばかりが増えている。読書は宮部みゆき「荒神」。

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【書評】窪美澄ほか「きみのための棘を生やすの」

◇5作の中では彩瀬まるに◯。あとは△と×。
きみのために棘を生やすのきみのために棘を生やすの
窪 美澄 彩瀬 まる 花房 観音 宮木 あや子 千早 茜

河出書房新社 2014-06-12
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 略奪愛をテーマにした書き下ろし恋愛官能小説集と河出のHPの紹介
にはある。ま、官能でもなんでもないですが…。別にそれに期待してい
たわけじゃないけれど、官能するならちゃんと官能してくださいね。

 窪美澄が好きなので、とりあえずこういう収録作品も読んでおきたか
った。その「朧月夜のスーヴェニア」はタイトルはなかなかだけれど、
話としてはそれほどおもしろくない。認知症と周囲から思われている老
婆の独白スタイルで語られる戦争があった時代の恋の話。他の作品に比
べればいいのかもしれないが、それほど心には残らない。

 窪も含め5人の作家が登場するが一番おもしろかったのは彩瀬まるの
「かわいいごっこ」。簡単に言っちゃうと女が文鳥と同棲してる男の親
指を取り合う話。簡単に言い過ぎか。でも、これ展開もおもしろいし、
いいです。やはりこういう企画物では作者が仕掛けないとつまらない。
彩瀬まるに◯。宮木あや子「蛇瓜とルチル」は主人公が芸能界の衣装さ
んで、なかなか読ませる。

 千早茜と花房観音の2作品は確実に暴言を吐きそうなので感想は書か
ない。全体的に不満が多く、そういう時はついつい他人の評を見てしま
うのだが、チラチラ見た感じでは女性の評判がけっこういい。いやぁ、
こういうので満足してたらダメでしょう。マズイと思うなぁ、いやいや
ホント。それともこういう小説集を男が読むのが間違ってるのか?
                           (No.293)

◯すごくおもしろい方の窪美澄本の評はこちらから。 

              ◯ ◯

2014.7.24 え〜っと暑いじゃないか、暑いじゃないか。今年初めのク
ーラー導入作戦はいつの間にか消えてなくなり、今年も変わらぬオクー
家。読書は角田光代「平凡」。

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【書評】窪美澄「よるのふくらみ」

◇1人の女に兄と弟。誰もがせつない。そして、苦しい。
よるのふくらみよるのふくらみ
窪 美澄

新潮社 2014-02-21
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 6つの話からなる連作短編集。もちろんひとつの長編とも言えるのだが
ひとつひとつの話のクオリティがとても高い。主人公は3人。その3人が
2話ずつ代わる代わる語り手になっている。物語は過去と現在を行ったり
来たりしながら進む。同じエピソードが違う視点で語られることで、より
重層的になり、そこに大きなうねりを生み出している。

 みひろという女性と圭祐と裕太という兄弟の物語。1人の女に男2人、
これを安易に三角関係とは言いたくない。とにかくせつない。みひろもせ
つない、圭祐もせつない、裕太もせつない。身を震わせて慟哭し、それで
もおさまらないほど彼らは苦しんでいる。常にいろいろなものが付いてき
てちっとも自由じゃない男たち。荒ぶる欲望や感情に振り回されながらも
出口を探し続ける女。せつなさはそれぞれだけれど、読む側はどうにも心
がいっぱいになってたまらない。

 物語は、彼らの親たちの問題なども描きながらザワザワとしたまま進ん
でいくが、窪美澄が描くリアルな世界は3人の感情を見事に浮き彫りにし
ていく。特に第4話にあたる表題作は、みひろの思いが痛々しくて強く心
を打つ。この章のラストは本当にすごい。いろんな思いが混ざり合い重な
り合って爆発してしまいそうだ。

 窪美澄の文章はいつものように前のめりで心がキシキシして来るのだけ
ど、この物語はどこかで少しやわらかい。最終話で兄は、誰かに抱きしめ
られたい、と願うのだが、僕らはこの物語を通して作者に強くやさしく抱
きしめられている、そんな気がした。(No.281)

◯窪美澄のその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.4.16 なんだかちょっと落ち着かない日々。これ、終わりはあるの
だろうか…不安。読書は「フラニーとズーイ」がもうちょっと。

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希望はない、共感がある。窪美澄「雨のなまえ」が素晴らしい。

雨のなまえ雨のなまえ
窪 美澄

光文社 2013-10-18
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 窪美澄はリアルの作家だ。ていねいにリアルを積み重ねていくことで
主人公たちが生きているその世界をくっきりと浮かび上がらせる。だか
らこそ、彼や彼女の言動が読んでる者の心に突き刺さるのだ。5つの物
語を収めたこの短篇集もまたリアルで、ちょっと恐ろしい気さえする。

 長編「アニバーサリー」でもそうだったが、作者はもうラストで希望
を提示したりはしない。結婚生活に満たされず浮気に走る男、パート先
の若いアルバイトに心惹かれる主婦、自分とあまりに不釣り合いな美女
と結婚した営業マン、自殺した幼なじみとクラスの少女の姿が交錯する
中学教師、そして母親たちとの付き合いのただ中にいるシングルマザー。
誰もが、自らを取り囲む状況の中でいっぱいいっぱいになり、一歩も動
くことができなくなっている。そんな彼らに降り注ぐ雨!

 確かにここにはひとカケラの希望もない。しかし、登場人物への共感
があるならば、そこに自らを重ね合わせることができるならば、それこ
そが希望だろう。それこそが救いになるだろう。窪美澄は長編の人だと
思っていた。まさか短篇集で直木賞を受賞するとは。いや、まだだけど、
きっとそうなる。(No.263)

◯窪美澄のその他の本のレビューはこちらから。        

               ◯ ◯

2013.12.1  あぁ、師走突入。あわただしくしてるのは自分か?読書は
松家仁之「沈むフランシス」を読み終え、関容子「勘三郎伝説」。

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恋愛短編って難しい。7人の女流作家による競作「恋の聖地」。

恋の聖地: そこは、最後の恋に出会う場所。 (新潮文庫)恋の聖地: そこは、最後の恋に出会う場所。 (新潮文庫)
原田 マハ 千早 茜 窪 美澄 三浦 しをん 柴門 ふみ 大沼 紀子 瀧羽 麻子

新潮社 2013-05-27
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 全国にある「恋人たちの聖地」を舞台にした7人の女流作家によるア
ンソロジー。個人的にはこういう「しばり」ってつまんないと思うけど
編集者もいろいろ大変なのだろう。窪美澄が参加してるので、それだけ
読めればよかったのだが、もちろんすべて読んだ。

 短編、特に恋愛短編って難しいなぁ、と思う。「まぁ、いいんだけど」
という感想が7編のうち4編。それ以上の感想はない。ただ、柴門ふみ
の漫画は、やっぱり漫画って小説とは文法がまったく違うよなぁ、と改
めて思ってしまった。

 残りの3編。まずいいのは三浦しをんの「聖域の火」、恋の聖地とい
うしばりを真正面から受け止め、しかも、恋愛小説としての精度が高い。
愛した人をどうやってあきらめるか、ということの答えを何とかして見
いだそうとしている。ちょっとひねりの効いたラストが好きだ。次にい
いのが窪美澄「たゆたうひかり」、相変わらず描写がリアルで、それゆ
えに「今の時代の今の気分」がしっかりと伝わってくる。「長野市の高
校に行ったときも、東京の大学に行ったときも、同級生たちをぐいぐい
追い越した気でいた。けれど、今は周回遅れだ。東京でいい気になって
仕事だけしていたら、気がつかないうちに、どこかで追い越されたのだ」
というフレーズにグッと来た。

 最後は瀧羽麻子(たきわあさこ)「トキちゃん」。「あのころの、」
というアンソロジーでも他の人とは違うアプローチをしていた瀧羽だが、
ここでも違ったことをやっていてとてもいい。ラストが非常にうまい。
この人、近い将来、大きな仕事をやってくれそうな気がする。期待度大
である。(No.247)

◯三浦しをんのその他の本のレビューはこちらから(って一冊だけだが)。
◯窪美澄のその他の本のレビューはこちらから。 

               ◯ ◯

2013.7.15 ほとんどお腹など壊したことがない妻が腹痛になり、昨
日は大変だった。治ったけど。読書は原田マハ「ジヴェルニーの食卓」。

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窪美澄の新作は3世代を通して描かれた力強い「女性」史だ。

アニバーサリーアニバーサリー
窪 美澄

新潮社 2013-03-22
売り上げランキング : 7311

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 「アニバーサリー」の主人公は娘と祖母ぐらいに年齢差がある2人だ。
75歳で未だ現役のマタニティスイミングの指導者である晶子、その元
生徒で30歳を過ぎたカメラマンの真菜。彼女の母親は著名な料理研究
家だ。物語は3.11の2人の再会に始まり、駆け足ながらも晶子の75年
の人生と真菜のこれまでを描いていく。戦争の悲惨さと戦後の自由な空
気を体験し、結婚後は仕事一辺倒の夫を支え、40近くになってから仕
事と家庭を両立させていった晶子。一方、真菜は、幼い頃から母との関
係がうまくいかず、高校生の時には悪い友達とつるむようになる。写真
だけが希望だったが望まぬ子を宿し、たった一人で途方に暮れている。

 そんな2人の人生が大震災の日に交差する。地震や原発に恐怖し、出
産後は子育てに怯えている真菜。彼女を何とか自分やその友との関わり
の中でつなぎとめようとする晶子。この2人の間の世代には家庭を犠牲
にしながらも自分の力で仕事を切り拓いて来た真菜の母がいる。「アニ
バーサリー」は、3世代の女性たちを通して描かれた女性史、とも言え
るのではないか。3.11後を生きる真菜は、否定も肯定も含めて晶子や母
の世代から受け継ぎ預けられたものを娘の絵莉奈へとリレーのように渡
そうとしている。そこに作者の思いがある。

 この小説のラストで窪美澄はこれまでの作品のようにささやかな希望
を提示していない。しかし、僕らは、特に女性たちは感じるのではない
か。この終わっていく世界をとにかく生きていこうと。先の世代の人々
が生きて来たように、一日一日、自分なりに生きていこうと。「アニバ
ーサリー」は常に「家族」と「女性」を意識して描いて来た窪美澄のひ
とつの到達点だと思う。必読!!!(No.235)

◯窪美澄の他の本のレビューはこちらから。

◎「アニバーサリー」は2015年7月29日、新潮文庫で文庫化されました。
アニバーサリー (新潮文庫)
窪 美澄
4101391432
 
               ◯ ◯

2013.4.2 新年度になりましたね。ちょっとだけ期するところあり。読
書は沢木耕太郎の「キャパの十字架」。クドカンの朝ドラが楽しみ!!

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「家族」を通して自分を見つめる。窪美澄の新作がとてもいい。

クラウドクラスターを愛する方法クラウドクラスターを愛する方法
窪 美澄

朝日新聞出版 2012-10-19
売り上げランキング : 3585

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 「ふがいない僕は空を見た」の窪美澄の最新作を読んだ。表題作「ク
ラウドクラスターを愛する方法」と短編「キャッチアンドリリース」が
収録された3冊目の小説集だ。表題作、軽い感じで始まるので、おぉ今
回はライトな物語なのか、と思ったが、だんだんとあの前のめり感のあ
る文章になってきてうれしくなる。窪美澄はやっぱりこうじゃなくちゃ。
ま、後半はまた、やわらかな感じに戻るのですけどね。

 「大晦日の朝、三年間いっしょに暮らしていた向井くんが出ていった」
というフレーズでこの小説は始まる。語り手は主人公の紗登子。売れな
いイラストレーターだ。彼女は休み明けに渡す予定のイラストを寝ない
で仕上げて、東武東上線沿線にある母となさぬなかの父の住むマンショ
ンに向かう。ここから、向井くんとのこと、3年前に再会した母親との
こと、彼女のこれまでのことがしだいに明らかになっていく。イラスト
レーターとしての営業の日々、出版社に勤める男との恋愛も赤裸々に語
られる。ここで描かれるのは結婚をゴールという人生ではなく、とはい
え、仕事はうまくいかず、自分の能力にも自信を持てない等身大の30前
の女性だ。そんな彼女は「人生がうまくいくか、いかないか、それは生
まれつき持っている運なのだろうか。輝くような人生の流れに乗るため
のボートは、どこにあるんだろう」とつぶやいたりする。

 一方で彼女は「家族という確かな足場を作って、それを手がかりにし
て、社会に居場所を作っていくことが怖い」のだ。紗登子には家族とい
うものがしっくりこない。父母との関係も微妙だ。後半に登場する母親
の一番下の妹である克子おばさんがいい。なんだか自由で楽しそうに生
きている感がある。その先の未来で「今よりもっと深い呼吸がしたい」
と願う紗登子の救いとなってくれる人だ。

 いろいろあるけれど結局は、自分らしく生きていくことでしか道はひ
らけないとこの小説は教えてくれる。そして、そのためには日だまりの
ような場所が必要だということも。作者はこれまでの物語と同様にラス
トでささやかな希望を提示することを忘れない。というか、窪美澄はそ
のために物語を綴っているのだと僕は思う。主人公と同じ想いを抱えた
何万何十万という人々にエールを送るために。「キャッチアンドリリー
ス」もいいぞ。(No.223)

◎「クラウドクラスターを愛する方法」は2015年11月6日、朝日文庫
 で文庫化されました。
クラウドクラスターを愛する方法 (朝日文庫)
窪 美澄
4022647981

               ◯ ◯

2012.12.4 フジテレビの勘三郎追悼番組を録画で見る。転移があった
んだなぁ…。未だに彼の死が信じられない。読書は当分「ソロモンの偽
証 第2部決意」。

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6人の女性作家が「女子高生」を描いた「あのころの、」。

あのころの、 (実業之日本社文庫)あのころの、 (実業之日本社文庫)
窪 美澄 瀧羽 麻子 吉野 万理子 加藤 千恵 彩瀬 まる 柚木 麻子

実業之日本社 2012-04-05
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 6人の女性作家による「女子高生」をテーマにしたアンソロジー。窪
美澄以外は書き下ろしでいきなり文庫での発売だ。このメンバーでは窪
美澄は間違いなく別格で、彼女の短篇を読みたいがためにこの本を買う
人も多いだろう。僕もそうだけど。他の5人は柚木麻子以外よくわから
ない。「旬の作家」と裏表紙にあるから、そうなのだろうなぁ。

 さて、窪美澄「リーメンビューゲル」、もうこのタイトルから彼女ら
しい。しかも、巧みだ。でも、この人はやはり長編の人で、長編でこそ
その力を存分に発揮できるのだと思う。はやく「次」を書いてくれっ!
他の5編で一番好きなのは瀧羽麻子の「ぱりぱり」だ。17歳で詩人にな
った姉とその妹の話。他の人が友人との関係を描いている中で、瀧羽は
こういう話を作った。姉の造形と共に強く印象に残る。その次は柚木麻
子の「終わりを待つ季節」。ラスト近く、受験シーズンの終わりから卒
業式までの描写がとてもいい。

 若い女性作家に「女子高生」をテーマに小説を書いてもらう、彼女た
ちにとって、あれやこれやと題材はいっぱいあるだろう。といっても、
私小説みたいになったり、どこかに作家自身を感じてしまうのは読んで
る側として大変つまらない。朝井リョウの学園小説に彼自身を感じるこ
とはないのだ。そういう作品があったのはちょっと残念。と言っても、
これはもう若くはない男の感想。若い女性が読めば、あ~こんな感じだ
った、わかるわかるよくわかる、と共感が寄せられるのかもしれない。
大体、こんな小説を読むおじさんはそうそういないぞ。(No.201)

               ◯ ◯

2012.6.5 月曜日の月食も見られなかったし、明日の金星の太陽面通過
も雨でダメそう。あぁぁぁぁ、つまらない。読書は椎名誠「大きな約束」。

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