盛田隆二 no.119        

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【書評】盛田隆二「父よ、ロング・グッドバイ─男の介護日誌」

◇著者だからこそ書けた介護生活の「リアル」。


 「男の介護日誌」という副題の通り、著書の父が91歳で亡くなるま
での約10年間の介護生活を描いたノンフィクションだ。「リアリズム
の名手」と呼ばれる小説家がノンフィクション、しかも自らの体験を
書くのだから、この「リアル」は本当に心に迫る。盛田隆二だから書
けた一冊だと思う。

 実家に住む父と母、そして妹。少し離れたところに住む盛田夫妻。
冒頭で語られる母の病気と死。妹の病。父親は妻を亡くしたことで生
きる意欲を失い認知症がひどくなってしまう。それがすべての始まり。

 介護というのはただのルーティンではない。介護するべき人がいる、
ということで生活の全てが変わってしまう。そして、何事かが起これ
ばその大きな波にのまれて、まる1日、時には数日の暮らしを失い、
精神的なダメージを受け、「普通の暮らし」ができなくなる。父親の
言動に振り回される盛田氏の日々を読んでいると、このことを強く強
く感じる。

 タイミングの悪いことに、この時彼は小説家一本で生きていこうと
決意したばかりだった。大切な依頼原稿を断らなければならなくなっ
た辛さと焦り。様々なことが重なって、彼自身も心の均衡を失ってい
く。盛田氏は全編を通じて「介護っていったい何なんだ?」と自らに
問いかけているように思う。同時に読者にもその問いは向けられる。

 介護生活というものは、一家族一家族違う。だからこの本が今家族
を介護してるすべての人の参考になるわけではない。それでもこの実
話を通じて感じる強い共感は、大きな力になるのではないか。エピロ
ーグ。父が語る母との出会いの話。そして、ラストを飾る一葉の写真。
自然と涙がこぼれた。(No.364)

◯著者はこの介護経験を背景にした「二人静」という恋愛小説を書い
ています。これもまたおすすめです。

◯「二人静」を含む盛田隆二の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.6.24 さてさて参院選が始まった。ヘンな人がヘンはことをしな
いように最低限のことはしなければ。読書は窪美澄「アカガミ」。

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【書評】盛田隆二「身も心も」

◇リアルの中に見える老いらくの恋の真実。
身も心も (テーマ競作小説「死様」)身も心も (テーマ競作小説「死様」)
盛田隆二

光文社 2011-06-18
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 前回の「ダンスホール」に続く、光文社テーマ競作小説「死様」の中
の一冊。嫁に勧められイヤイヤ通い始めた老人クラブの絵画同好会で礼
二郎は幸子という女性と出会う。エキゾチックな顔立ち、上品な笑みに
強く惹かれる礼二郎だが、自分はもう75歳。64歳の彼女とは歳の差もあ
る。これ、いわゆる老いらくの恋の物語である。設定や出会いにはあま
り新鮮味は感じられない。しかし、そこは「リアリズムの名手」盛田隆
二。礼二郎の亡くなった妻への想い、幸子のつら過ぎる過去、そして、
出会いを重ねながら少しずつ打ち解けていく2人の様子を丹念に描いて
いくことで、いつの間にか物語にグイグイと引き込まれていく。

 さて、この恋、このままうまく行くのかと思ったら、礼二郎に大きな
アクシデントが起こる。実はここからがこの話はおもしろい。おもしろ
いというかグッと来る。様々な不安に苛まれながらも幸子との日々を大
切に思う礼二郎、彼との出会いを喜び変わらぬ愛を捧げる幸子。「死様」
というテーマもあり、ラストに向けてこの2人の恋がどうなるのか、ペ
ージを繰る手が止まらなかった。さすが、盛田隆二!

 光文社のこのテーマ競作小説シリーズだが、一つひとつはそれほど長
くはないので、文庫2冊に6人分を入れて、全部読めるというような文
庫書き下し企画の方がよかったのではないか?他の4人の「死様」は気
になりながらもパスの予定。(No.165)

◎「身も心も」は2014年10月9日、光文社文庫で文庫化されました。
身も心も (光文社文庫)
盛田 隆二
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               ◯ ◯

2011.7.24 東京は台風の後、涼しい日々が続いている。今週も気温は
それほど高くならないそうだ。いいぞ、いいぞ、このぐらいがいいっ!

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真摯に恋と人生に向き合う男女。盛田隆二「夜の果てまで」。

夜の果てまで (角川文庫)夜の果てまで (角川文庫)
盛田 隆二

角川書店 2004-02
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 冒頭でいきなり「失踪宣告申立書」なるものが登場する。不在者は涌
井裕里子、申立者はその夫だ。1991年3月に失踪した妻との婚姻を解消
するための書類で1998年に出されている。

 これからその失踪の話が始まるんだなと思ったら、第一章は90年3月
の日付だ。そうか、これは失踪までの経緯を描く物語なのか、なるほど。
まず登場するのが北大の学生で新聞社への就職をめざす安達俊介。その
バイト先で必ず「M&M」のチョコを万引きしていく女がいる。それが
涌井裕里子だ。年齢が一回りも違う2人。ラーメン屋の主人と結婚して
いる裕里子だが、いろいろとわけもありそう。この物語は春、夏、秋、
冬の各章からなっている。ストーリーがポイントなので、ここでどこま
で書くべきか迷うのだが、秋の章でこの2人は札幌を飛び出し、東京で
暮らし始める。あれ?失踪の時期が違う…。どういうことだろう?もち
ろんその答えは、最後にちゃんと用意されている。

 「夜の果てまで」は恋と自分の人生に真摯に向き合う男と女の物語だ。
度胸の据わった行動をとる裕里子はもちろんのこと、いろいろ考えてる
ようで行き当たりばったり感が強い俊介も自分なりに懸命に考え、最善
の道を選ぼうとする。なによりその真摯さがいい。リアリズムの名手と
呼ばれる作者によるリアルな作りが物語を支えている。途中で出て来る
老夫婦とのエピソードが何ともおもしろい。ちょっと唐突な感じもする
のだがスパイスとして良く効いているし、彼らは俊介へ大きな影響を及
ぼす。そして、ラスト。そうかこういうふうに終わるのか。鮮やかな終
わり方に拍手!拍手!

 佐藤正午の解説が秀逸だ。そういえば佐藤も失踪小説?を書いている。
「ジャンプ」やこのブログでも紹介した「身の上話」。あ、失踪つなが
りで選ばれたのね。(No.146)

               ◯ ◯

2011.4.19 この本の作者盛田隆二さん。なんと僕と誕生日が一緒で1
歳違い。しかも、同じ大学の同じ学部を出てるらしい。あ~驚いた。


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多くのリアルなテーマと恋の物語、盛田隆二「二人静」。

二人静二人静
盛田 隆二

光文社 2010-09-17
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 Twitter文学賞国内部門で第1位だった盛田隆二の「二人静」を読ん
だ。これが私の初盛田。この人、「リアリズムの名手」と言われてるら
しい。なるほど、これは納得!この小説で盛田は、主人公周吾の父親の
認知症、入院する介護施設の実態、もう一人の主人公であるあかりの元
夫のDVとストーカー行為、さらには娘志歩の場面緘黙(かんもく)症
という病気など、ある意味、現代を生きる人間ならいつ自分や家族の身
に降りかかってもおかしくないような問題をまさにリアルに描いている。
徹底した取材の成果だと思われるが、盛田はこんな盛りだくさんの問題
を巧みにストーリーの中に組み込みながら、無理なく一編の小説に仕立
てあげている。一方で周吾のあかりへの想いも描かれる。彼は父が入っ
た介護施設で介護士のあかりと出会い、いつしか彼女に惹かれていくの
だ。様々なリアルな問題とせつないほどの恋模様、このたて糸とよこ糸
のバランスが絶妙だ。あかりの娘志歩と周吾が心を通わせていくプロセ
スもなかなかいい。

 少しだけ個人的な希望を言うなら、この恋の結末はもう少しだけ突っ
込んだものにして欲しかった。だってぇ……。これ、草なぎくん主演で
テレビドラマにするといいな。あかりはちょっと地味だけど紺野まひる
などどうだろう?いずれにしてもこの「二人静」、盛田リアリズムを堪
能できる読み応えたっぷりの物語だ。(No.135)

◎「二人静」は2012年11月13日、光文社文庫から文庫になりました。
二人静 (光文社文庫)
盛田 隆二
433476486X

               ◯ ◯

2011.2.18 お、今日は満月。え~っと「二人静」終わったので、やっ
とミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」に突入。うふふふふ。

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