小川洋子 no.12        

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【書評】小川洋子「琥珀のまたたき」

◇幽閉された子供たちのピュアではかない暮らし。
琥珀のまたたき琥珀のまたたき
小川 洋子

講談社 2015-09-10
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 小川洋子は尋常ではない状況に置かれた人間たちをよく描く。近年で
は「人質の朗読会」が思い出される。「琥珀のまたたき」もまた、そう
いう物語である。この話の主人公は琥珀という名を与えられた1人の少
年。彼には姉のオパール、弟の瑪瑙(めのう)という姉弟がいる。

 末妹は病で亡くなったのだが、彼らの母親はその原因になった「魔犬
の呪い」から逃れるという口実で、3姉弟を父親が残した別荘に閉じ込
める。彼らは敷地内から出ることも許されず、母親は日々、療養施設に
働きに出かける。幼い3姉弟だけの時間。小川洋子の静謐な筆致で描か
れる子供たちの日々。それは、けっして退屈なものではなかった。彼ら
は自由な発想で様々な遊びを生み出していくのだ。

 ある日、琥珀は自らの左目に異常を感じ、見えにくくなった目の中に
亡くなった妹の姿を見出す。そして、父親が残した大量の図鑑の片隅に
その姿を描き留めることを始めるのだ。それはパラパラ漫画のように活
き活きと妹の姿を蘇らせる。母と姉弟たちと皆でそれを見る場面が強く
心に残る。この小説は3姉弟の暮らしを描くと共に、アンバー氏と呼ば
れる年老いた琥珀の姿も同時に紹介していく。老人が人々に見せる「一
瞬の展覧会」の描写もとても美しい。

 ピュアではかない彼らの暮らしを見つめる作者の目は優しく慈愛に満
ちている。しかし、そういうものが長く続かないことを作者もそして僕
たちもすでに知ってしまっているのだ。(No.347)

◯小川洋子のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2015.12.20 作詞家の岡本おさみさんが亡くなった。「落陽」など吉
田拓郎の歌をたくさん思い出す。読書は東山彰良「流」。

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人にとっての動物を描く、小川洋子「いつも彼らはどこかに」。

いつも彼らはどこかにいつも彼らはどこかに
小川 洋子

新潮社 2013-05-31
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 事前に読んだ内容紹介で動物たちの物語、と書かれていたので、その
つもりで読み始めたら全然違っていた。というか、この8編の物語、確
かにタイトルは動物絡みだし、馬やビーバーや兎など動物たちが登場す
る。しかし、これはまぎれもなく人間の物語なのだ。

 小川洋子の小説はいつもカッコの中で語られているような気がしてい
る。しかし、最初の1編「帯同馬」はかなりリアルな話で驚いた。主人
公は、スーパーのデモンストレーションガール。彼女は、電車に乗り放
っておいたらどこまでも自分の知らない果ての地まで連れて行かれるか
もしれないという恐怖に怯えていた。そのために彼女はモノレールにし
か乗れず、その沿線に住み、沿線の店だけでデモンストレーションの仕
事を続けているのだ。そんな彼女が新聞で見つけたのが、凱旋門賞に出
る競走馬ディープインパクトの帯同馬の記事だ。ピカレスクコートとい
うその馬はディープインパクトが慣れない土地でストレスを感じないよ
う一緒に渡仏するというのだ。帯同馬、という存在に強くシンパシーを
感じる彼女。折も折、彼女は店のお客さんと旅に出ることになるのだが。

 ラストの1編「竜の子幼稚園」はうって変わってカッコの中でしか語
れないであろう小川洋子らしい不思議な話でこれがとてもいい。全編に
共通しているのは人間にとっての動物たちの存在の意義、「いつも彼ら
はどこかに」いて、人の力になっている。心に残る話が多い好短編集だ。
(No.250)

◯小川洋子のその他の本のレビューはこちらから。 

◎「いつも彼らはどこかに」は2015年12月23日、新潮文庫から文庫
 になりました。
いつも彼らはどこかに (新潮文庫)
小川 洋子
4101215278

               ◯ ◯

2013.8.5 また猛暑復活?恐い…。え〜っと読書は絲山秋子「忘れられ
たワルツ」。久々の絲山本だけど、やっぱりこの人、いいなぁ。

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小川洋子らしさに溢れる静謐で美しい物語「ことり」。

ことりことり
小川 洋子

朝日新聞出版 2012-11-07
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 小川洋子ワールドは常に静謐で少しヴェールに被われ、なんだか不思
議だ。この「ことり」も確かにそうだが、「小鳥の小父さん」と呼ばれ
る主人公は、これまでの数学博士やチェスのプレイヤー以上に普通の人
だ。小父さんのお兄さんは「ポーポー語」という不思議な言葉をしゃべ
り、それを理解できるのは小父さんと小鳥たちだけだった。兄と弟、世
間の片隅でひっそりと生きている2人の心の交流がとてもいい。夜、静
かにラジオを聴いたり、幼稚園の鳥小屋で小鳥たちの声に耳を澄ませた
り。時には「準備だけで終わる旅」を楽しんだり。社会との交わりも少
ない2人だが、そこには確かに心の揺れや喜びが感じられるのだ。作者
は常に真摯なこの兄弟と向かい合い、彼らの心の底から湧き出る思いを
紡ぎ出している。

 お兄さんが亡くなった後、一人になった小父さんには淡い恋や不思議
な出会いがあり、最後には傷ついたメジロとの遭遇がある。普通に生き
る人々の普通の人生のなかに垣間見える奥深さ。そこに自分と共鳴する
ものを感じる読者もいるはずだ。これは小川洋子らしさに溢れる静かで
美しく魅力的な物語である。(No.232)

◯小川洋子の他の本のレビューはこちらから。 

◎「ことり」は2016年1月7日、朝日文庫で文庫化されました。
ことり (朝日文庫)
小川洋子
4022648031

               ◯ ◯

2013.3.4 なんだかまた寒くなっちゃいましたね。Jリーグが始まり
WBCも始まって春の気分なのになぁ。読書は佐藤正午「カップルズ」。

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【書評】小川洋子「最果てアーケード」。

◇色濃い死の気配、深い少女の孤独。
最果てアーケード最果てアーケード
小川 洋子

講談社 2012-06-20
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 「博士の愛した数式」「猫を抱いて象と泳ぐ」「人質の朗読会」など
独自の世界を創り出している作家・小川洋子。最新の「最果てアーケー
ド」もまた小川洋子ワールド全開の物語だ。舞台はどこか遠い果てにあ
る世界で一番小さなアーケード。そこにある奇妙なお店、風変わりな店
主とお客さん、そして、大家の娘である少女…。少女には売れた商品を
客の家まで届ける配達係という仕事がある。物語は彼女の語りで進んで
いく。

 アーケードというより「何かの拍子にできた世界の窪み」と言った方
がいいようなその場所。売られているのは、使い古されたレースや義眼、
古い絵葉書、ドアノブ、勲章などなど。店主たちは静かに「死者より長
生きした物たちの行く末を見守」っている。訪れる客たちにもそれぞれ
いろんな事情があって…。物語は死の気配が色濃く、父と友を亡くした
少女の孤独は深い。それは終盤になればなるほど深まり、しだいに生と
死の境界が曖昧になって来る。少女の存在さえあやふやなのだ。ドアノ
ブを扱う店の話「ノブさん」とレース屋の話「遺髪レース」が特に印象
的。この作品、有永イネのコミックの原作として書かれたものだそうだ。
そちらの方もぜひ読んでみたい。(No.208)

◯小川洋子の他の本の書評はこちらから

◎「最果てアーケード」は2015年5月15日、
  集英社文庫で文庫化されました。
最果てアーケード (講談社文庫)
小川 洋子
4062931028

               ◯ ◯

2012.8.15 世間はお盆のようですね。フリーランスはお盆もあまり関
係なくて…。読書はジェフリー・ディーヴァー「追撃の森」。

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人質たちは自らの過去と向き合う、小川洋子「人質の朗読会」。

人質の朗読会人質の朗読会
小川 洋子

中央公論新社 2011-02
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 第一夜から第八夜まで、ここに書かれた8つの物語は、タイトルの通
り、ゲリラに捕まった人質たちが、地球の裏側にある土地で夜毎語った
物語だ。といっても、リアルな設定ではない。あくまで、この短篇集の
くくりとしての設定だ。これらの話を語るために、こういう設定を生み
出したのか、全体のテーマを追求していく中で、こういう設定が浮かび
上がったのか。いずれにしても、小川洋子という人はスゴい人である。

 語られるのはどれもが静謐な物語だ。そして、少し奇妙。その静謐で
奇妙なところが何ともいい。「やまびこビスケット」の主人公は、大家
のおばあさんとアルファベットのビスケットでいろいろな単語を作る。
「B談話室」の彼は、ふと入った公民館で「危機言語を救う友の会」の
メンバーや「運針倶楽部定例会」の婦人たちと時を過ごす。「槍投げの
青年」では、おばさんがなぜか青年のあとを付け、その投擲を盗み見る。
ここにあるのは、語り手たちが人生の中でほんのつかの間、出会った人
々の話だ。どこか優しく温かい気持ちになれるようなそんな物語だが、
一方で、語っている彼ら自身の孤独も垣間見えてくる。極限ともいえる
軟禁状態の中で、人質たちは過去と向き合い、自らと向き合う。

 第九話はゲリラグループの動向をうかがうため、盗聴器から彼らの行
動の一切を聞いていた男の話だ。彼は人質たちの物語を聞きながら、ハ
キリアリの行進を思う。「自らの体には明らかに余るものを掲げながら」
黙々と歩むアリたちのことを。「自分が背負うべき供物を、定められた
一点へと運ぶ」ことだけを考えている彼らのことを。これは深く心の奥
底にまで届く物語である。(No.142)

               ◯ ◯

2011.4.4 4月になりましたが、井の頭公園の桜はまだまだ。水曜日
以降、気温が上がるみたいなので満開はそれからでしょうか。ま、花は
咲いても、春はなかなかやって来そうにないけれど…。

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日記というスタイルを借りた最新長編、小川洋子「原稿零枚日記」。

原稿零枚日記原稿零枚日記
小川 洋子

集英社 2010-08-05
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おすすめ平均

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 小川洋子の最新刊は、原稿を書くのがなかなか進まない小説家の日記
という形で書かれた長編小説だ。その女流小説家は、取材旅行の帰りに
苔料理の専門店に寄ったり、週刊誌の取材を受けているうちに祖母の右
肘に住んでいた2人の老女を思い出したり、運動会や子泣き相撲にまる
で関係者のようなふりをして入り込んだりする。有名な作家の名前が浮
かばず何とか思い出すために彼の小説を盗作したり、あらすじを書くの
が得意で「あらすじ教室」の講師まで頼まれている。

 これらすべては「現実」を足がかりにしながら、虚構の世界にそっと
足を踏み入れているような話だ。すべてが虚なのではない。実の中に虚
がある。その世界を楽しみながら、人間の不思議さやおもしろさ、奇妙
さを思い、僕らが生きているこの世界自体の不条理さをも感じることが
できるのだ。もちろんそれは「日記」というスタイルだからこそ表現す
ることができたものなのだろう。最後近くの現代アートの祭典をめぐる
ツアーの展開が秀逸。ラストが図鑑の話であっけなく終わるのもいい。
小川洋子らしい小説ではあるけれど、微妙なテイストの違いが後を引く
しばらくたって1日分を読み返してみるとまた新たな発見があるような
小説だ。一読の価値あり!(No.103)

               ◯ ◯

2010.10.25 昨日は調布の多摩川河川敷で行われた「もみじ市」に。
おいしいチーズケーキとパンを発見できて喜ぶ。それにしても、個人で
がんばっているアートやフードな人は多いなぁ。すごい。

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去年のベストは小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」

ティム・バートンがこの物語を知ったら、必ず映画にするだろう
今年始まったブログなので、遅まきながら去年のベスト本の話を。小川
洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」だ。この物語は、外国映画の原作になっ
てもおかしくない。監督は、そう「ビッグ・フィッシュ」や「チャーリ
ーとチョコレート工場」のティム・バートン!彼の映画のテイストをこ
の小説に強く感じるのだ。読む者の想像力を喚起し、しかも、限りなく
美しいストーリー。エンドクレジットが出るまで僕らは目を離せない。

主人公は11歳の身体のままで生き続けている、リトル・アリョーヒン。
「大きくなること、それは悲劇」、という警句を胸に彼は生きている。
それは、大きくなり過ぎたため屋上から降りられなくなった象のインデ
ィラの逸話や彼にチェスを教えてくれたマスターの太り過ぎの悲劇、壁
の間に挟まれたまま出られなくなったミイラと呼ばれる少女など、虚実
入り交じった話から得た教訓なのだ。

チェスで非凡な才能を発揮した少年は、そのうち、チェスを指す自動人
形の中にその小さな身体を隠し、様々な客と戦うようになる。そこでの
彼のこだわりは勝ち負けではなく、棋譜の美しさ。彼にとっては美しさ
こそがすべてだった。淡い恋も織り交ぜながら描く伝説のチェスプレー
ヤーの軌跡、彼の人生はまさにその棋譜のように美しくはかない。これ
こそ小川洋子、といえる傑作です。

猫を抱いて象と泳ぐ猫を抱いて象と泳ぐ

文藝春秋 2009-01-09
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◎「猫を抱いて象と泳ぐ」は2011年7月8日、文春文庫で文庫化されました。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)
小川 洋子
4167557037

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