佐藤泰志 no.125        

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男たちの痛々しさ…佐藤泰志「大きなハードルと小さなハードル」。

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佐藤 泰志

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 ずっと読んできた佐藤泰志も文庫作品はこれで終わり、初期作品集を
残すのみとなった。何だかちょっと寂しい。さて、この「大きなハード
ルと小さなハードル」は「秀雄もの」と呼ばれているらしい連作5作が
第一部、その他の短篇2作が第二部という構成。さて、第一部、最初の
「美しい夏」で主人公の秀雄は光恵という女性と暮らしているが、その
タイトルとは逆で全編を被っているのは、ギスギスとした何ともイヤな
空気だ。そのほとんどは主人公秀雄が生み出している。次の「野栗鼠」
では2人の間に陽子という三歳の娘がおり、表題作「大きなハードルと
小さなハードル」では秀雄の重度のアルコール中毒が明らかになる。い
たたまれないような家庭の雰囲気、少しも噛み合うことのない夫婦の会
話、この連作にはこれまでの佐藤の作品にはあった、ささやかな喜びや
かすかな希望さえ感じることができない。作者のいつもながらのリアリ
ティに感心しながらも戸惑っている自分がいる。

 第二部はまったく違う主人公たちの話なのだが、やはり居心地の悪さ
というか読み心地の悪さがある。この本の男たちは常にいらだっている
のだ。ラスト一作だけ少し明るいトーンがあるのが救いだが…。あがき
ながら、もがきながら、なんとか輝きを取り戻そうとする男たちの痛々
しさに少々まいった。(No.163)

               ◯ ◯

2011.7.12 妻の裂き織りネットショップ「糸糸のたね」。新作3点が
アップされました。今回はいろいろ工夫もあるみたい。ぜひ、見てみて
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若者たちのけだるい夏を描いて見事な表題作、佐藤泰志「黄金の服」。

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佐藤 泰志

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 3編収録。やはり芥川賞の候補にもなった表題作「黄金の服」が一番
いい。「泳いで、酔っ払って、泳いで、酔っ払って」を繰り返す男女の
ひと夏の物語。主人公の義男は24歳、大学生協の書籍部に勤める彼は、
その大学の学生である道雄や慎と毎日のようにプールで泳ぎ、夜はジャ
ズバーで酒を飲んでいる。義男が惹かれているアキは離婚経験のある2
つ年上の女。慎が心を寄せる文子もそこに加わる。リアルな会話と何か
が起こりそうで起こらない日々。5人の造形の見事さと佐藤らしい巧み
な表現で、いつの間にか物語に引き込まれていく。けだるい夏のけだる
い毎日、やり過ごすように日々を消費していく若者たち。彼らには夢や
希望はあるのだろうか?義男とアキの恋の行方は?ラスト、心を残しな
がらもすべてを受け入れる主人公の姿に共感する。この小説ではいたる
ところに作者の姿が透けて見えるような気がする。それは、珍しくつい
ている「あとがき」のせいだろうか。

 「オーバー・フェンス」は職業訓練校を舞台にした話。タイトルにし
てもラストにしても作者の意図があらわになり過ぎていて残念。これも
芥川賞候補だというが、どうかなぁ。「撃つ夏」は入院中の男が主人公
で、同室の男や友人とのやり取りがなかなかいい。(No.156)

               ◯ ◯

2011.6.8 今日は珍しく息抜き。原宿で「クーザ」を見る。シルク・ド
ゥ・ソレイユはやっぱりスゴいなぁ。読書は角田光代「夜をゆく飛行機」。

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今を感じる作家佐藤泰志の傑作2編!「きみの鳥はうたえる」。

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佐藤 泰志

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 さらに佐藤泰志を読み進めている。「きみの鳥はうたえる」は表題作
と「草の響き」の2作を収録。2つともとてもいい出来。芥川賞候補に
なった表題作は印象深い作品だが、後に読んだ分「草の響き」に心ひか
れるものが多い。主人公は印刷所勤め。精神の不調が大きくなり、医師
からランニングを勧められる。会話の少ない文章だが「移動動物園」で
感じた「こまかすぎる描写」はこまやかで的確な描写に進化していて、
会話が少なくてもスムーズに読める。文章のテンポもいい。絶望を感じ
るような初期の症状から、ランニングを通じて徐々に安定を取り戻して
いく主人公。友人の研二との会話、暴走族の若者たちとのつかの間の交
流が心に残る。ラスト近く「振り出しに戻りたくなかった」という彼の
独白。希望はあるのかないのか、少なくともその終わりは絶望ではない。

 「きみの鳥はうたえる」、こちらは会話も多い。書店員の主人公と共
に住む友人の静雄、書店の同僚佐知子という3人の男女の物語。前半の
主人公と佐知子が次第に親密になっていくところの描写など本当にうま
い。会話もリアルでグッと引き込まれる。男2人と女1人、しかし、こ
れは三角関係ではない。主人公はあっさりと佐知子を静雄に譲り渡す。
「そのうち僕は佐知子をとおして新しく静雄を知るだろう」という一文
が光る。どこかクールで恋にも醒めた感じの主人公。充実感のない日々
を送る若者たち。今を生きる僕らには彼らに対する共感が確かにある。
佐藤泰志はやはり今の作家なのだと僕は再度思った。(No.154)

他の佐藤泰志作品の書評はこちら

               ◯ ◯

2011.5.28 読書はさらに佐藤泰志「黄金の服」。うちの犬ひなたの歯
が欠けて手術が必要に。大丈夫かなぁ、心配。5月に台風…。

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作者の確かな実力を感じさせる短篇集、佐藤泰志「移動動物園」。

移動動物園 (小学館文庫)移動動物園 (小学館文庫)
佐藤 泰志

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 さてさて今大注目の佐藤泰志、今度は3編の小説が収められた「移動
動物園」を読んだ。これを読み、やはりこの人は力のある作家だと再認
識した。もう少し早くその存在に気がつくべきだったのかもしれないが、
しょうがないのかなぁ…ううむ。表題作は1977年発表でこれが佐藤の文
芸誌デビュー作、2編目「空の青み」が82年「水晶の腕」が83年発表だ。

 「移動動物園」はデビュー作といってもとりたてて気負いのようなもの
は感じられない。とはいえ、この3編の中では今一つの感が強い。描写が
あまりにこまかすぎるというのもあるし、登場人物に魅力がない。飛び抜
けてよかったのは最後の「水晶の腕」だ。この3編に共通し、佐藤泰志の
小説のひとつのパターンともいえるのが、不安定な現状、その現状をてい
ねいに描く事で見えて来る心理的な不安、そこに差すかすかな希望、とい
うような流れがあるのだが、それが一番うまく描けているのがこの「水晶
の腕」だ。機械梱包工場で働く青年を主人公に職場の仲間たちや恋人との
やりとりを通して、彼の刹那的な暮らしが見えてくる。職場の様子が見事
に活写されているのがいい。仲間たちの造形もなかなかだ。「空の青み」
はマンション管理人とエジプト人一家との出来事を描いた都会的な一編で
珍しい。(No.151)
               ◯ ◯

2011.5.12 読書は山田太一の「空也上人がいた」を読み終え、伊集院
静の「いねむり先生」へ。山田作品、これ感想書けるかなぁ。ううむ。


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感情の微妙な濃淡を描き分ける、佐藤泰志「そこのみにて光輝く」。

そこのみにて光輝く (河出文庫)そこのみにて光輝く (河出文庫)
佐藤 泰志

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 このブログでも「海炭市叙景」を紹介した夭折の作家佐藤泰志、彼の
作品が次々と文庫化されている。「そこのみにて光輝く」もそのひとつ。
唯一の長編で三島賞候補にもなった傑作だ。

 冒頭、主人公の達夫はパチンコ屋で拓児という若者と知り合う。20代
後半の達夫は町一番の造船会社を辞めたばかり。少し年下の拓児はテキ
屋のまねごとをしている。出会いの後、達夫は拓児の家を訪ね、姉の千
夏を紹介される。バラックに住む貧しい一家にひかれていく達夫。佐藤
泰志は彼が拓児を受け入れていく様子や千夏を好きになっていく過程を
きめこまかに描いている。黒か白かではなく、グラデーションのように
変化する感情、その濃淡を描くのが佐藤は巧い。そのこまやかな描写こ
そこの小説の一番の魅力のような気がする。

 二部形式のこの物語、第一部は、鬱々としており、救いさえない。拓
児たちとの出会いから数年後の二部は、物語に薄明かりがさしていてホ
ッとする。ここで達夫は松本という隻眼の男と知り合う。彼は鉱山で水
晶の採掘をやっている。そんな仕事に激しくひかれる拓児、達夫もまた
「山はいいな」とつぶやく。日々の暮らしの中で、自分なりの自由だと
か夢は失われてしまう。そこに射す一条の光。ここでも佐藤はその心の
動きを丁寧に描写する。読んでいる僕ら自身も主人公の心に寄り添うよ
うに。達夫たちに本当に未来はあるのか?ラストの浜辺の場面が何とも
いい。(No.149)
               ◯ ◯

2011.5.3 さて、連休。佐藤泰志の「移動動物園」がなかなか進まず、
その間に「ブイヨンの日々」、コミックの「ふらり。」を読んじゃう。
「移動動物園」、これはちょっときついなぁ。

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街とそこに生きる人々の物語、佐藤泰志「海炭市叙景」

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佐藤 泰志

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 昨年は復刊され話題になった本が多かったが、この「海炭市叙景」の
映画化、それに伴う文庫化も出版界のトピックだった。それだけこの物
語を愛し、大切に思っている人が多かったのだろう。僕もようやく手に
取ったのだが、噂に違わず素晴らしい物語だった。

 函館がモデルといわれる海炭市を舞台にした18の物語。最初の9編は
ゆるやかにつながっており、短篇集というより、連作短篇、というより、
「一つの街とそこに生きる人々をめぐる長編小説」と呼びたい。時は80
年代の終わり、バブルのまっただ中の地方都市、描かれているのはけっ
して恵まれず地を這うように必死で生きる人々だ。冒頭の「まだ若い廃
墟」は哀しい物語である。これを最初に持って来たことが佐藤のスゴさ
だと思う。読後に残った不安がうっすらとではあるが、この小説の全編
を被うことになる。それは地方都市が抱える不安であり時代が内包する
不安でもある。読み進めながらも僕らはこの最初の話を忘れることがで
きない。

 印象的な話は本当に多い。学校をずる休みして切手を買いに行く少年
の話(「一滴のあこがれ」)、孫が生まれる日にいつも通り路面電車を
運転する男の話(「週末」)、職業安定所に勤める男を描き少々強烈な
印象を残す「衛生的生活」などは特に心に残る。全編を通して街が描か
れ、同時にそこで働く人々が描かれている。作者のこの街とそこに住む
人々への共感は深い。「海炭市叙景」が世に出てすでに20年の歳月がた
つ。しかし、この物語はまったく古びてはいない。それは私たちが今ま
さに時代の不安を抱えているからだろうか。作者の佐藤泰志は41歳で自
死、未完のこの小説はその翌年発刊された。(No.131)

               ◯ ◯

2011.2.3 あ~ぁ、大相撲もなぁ。八百長あるとは思ってたけどあのメ
ールの軽さがショック。なんだかなぁ。読書は「Q10シナリオBOOK」。

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