ショーン・タン no.138        

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【書評】ショーン・タン「夏のルール」

◇遠い夏の日への郷愁を感じる見事なショーン・タンワールド。
夏のルール夏のルール
ショーン タン Shaun Tan

河出書房新社 2014-07-23
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 これはいいなぁ。ショーン・タンの最新の絵本。訳者は岸本佐知子!
なにがいいって、大判なのがまずいい。何判って言うのかな?ヨコ31
センチ弱でタテ28センチ弱。これぐらい大きいとショーン・タンの絵
を存分に楽しめる。パラパラ見る、じっくり見る、何度も見る。いろい
ろな謎があり、新しい発見がある。すごく楽しい!!

 タイトルの通り、これはルールの話。ルールって経験が元になってる
のだから、言い換えればひと夏の経験の話だ。主人公はショーン・タン
の兄弟がモデルになったという男の子2人。最初に「去年の夏、ぼくが
学んだこと。」とあり、次のページから「ルール」が語られていく。左
ページに一行のルール、右ページがそれに対応した絵。最初のルールは
「赤い靴下を片方だけ干しっぱなしにしないこと。」。絵は、真っ赤な
巨大ウサギが狭い路地を進んでいき、兄弟が震えているというヴィジュ
アル。もちろん赤い靴下も。なんだか恐ろしく、ちょっぴりユーモアの
ある絵が続き、不思議な気分になってくる。正装した不気味な鳥たち、
怪しい機関車、巨大な猫などなど、まさにショーン・タンワールドだ。

 「夏の最後の一日を見のがさないこと。」というお終いのルールも素
敵。読み終えて本を閉じると、子供の頃の夏休みが蘇ってくる。自由で
なんの束縛もなかった夢の様な日々!この絵本には遠い夏の日への郷愁
が確かにある。(296)

◯ショーン・タンのその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.8.21 広島、大変なことに。今年は特に水の事故が多かったよう
な気がする。読書は山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」を文庫で。

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彼がホームステイ先に残したものは…ショーン・タン「エリック」。

エリックエリック
ショーン・タン 岸本 佐知子

河出書房新社 2012-10-17
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 これは著者の「遠い町から来た話」に収録されていた「エリック」を
独立させ単行本化したものだ。「遠い〜」は大人向けに作られた作品集
だが、この小さくてかわいい装幀の本は子供でも楽しめるし、お母さん
が一緒に読んであげるのもいい。ちょっとしたプレゼントにも最適だ。

 物語の主人公は、交換留学生としてホームスティにやった来たエリッ
ク。彼は「勉強するのも眠るのももっぱら台所の戸棚の中」。そして、
どこに行っても彼が興味を持つのは「たいてい、地面に落ちている小ち
ゃなもののほう」。お母さんはそれを"お国柄"という言葉で片付けてし
まうのだけど…。小さくて何だか葉っぱのようなエリックの造形がいい。
そんな彼はホームスティ先の家族にちゃんとしたあいさつをすることも
なくいなくなってしまう。でも、彼は家族のために…。心がポッと暖か
くなるエリックの置き土産が素晴らしい。

 エリックがなんということもない小さなものたちに注ぐまなざし、作
者がエリックに注ぐやさしいまなざし。そんなまなざしの交差したとこ
ろにこの物語はある。短いけれどショーン・タンらしさにあふれた魅力
ある一冊だ。(No.229)

◯ショーン・タンの他の本のレビューはこちらから。 

               ◯ ◯

2013.2.6 勘三郎についで團十郎まで亡くなって言葉もない。新しい
歌舞伎座が春には開場するのに…。歌舞伎界の今後を思うとなんとも言
えない気分に。読書は原田ひ香「母親ウエスタン」を読了したばかり。


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細部にまで楽しさが宿る、ショーン・タン「鳥の王さま」。

鳥の王さま ---ショーン・タンのスケッチブック鳥の王さま ---ショーン・タンのスケッチブック
ショーン・タン 岸本 佐知子

河出書房新社 2012-08-25
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 「アライバル」が人気になったショーン・タン。彼の言葉を借りれば、
「"作品の素"のサンプルを、かなり緻密なデッサンからほんのいたずら
描きまで、過去12年ぶんの中から選んで集めたのが、この本」だそうだ。
それがどんなものであろうとも、ショーン・タンの絵を見るのは楽しい。
とても豊かで、じっくり見てもまったくあきることがない。走り描きの
ような絵にも細部に楽しさがある。僕はまったくの素人だが、プロの人
が見てもいろいろと感じるところが多い絵ではないだろうか。

 さらにこの本、岸本佐知子訳で数カ所に散りばめられたショーン・タ
ンの言葉が示唆に富んでいてとても素晴らしい。「はじめに」という冒
頭の言葉、「自分の作品について語るとき"インスピレーション"という
言葉を使うのには、いつもためらいがある。まるで空から一方的に降り
注ぐお天気雨を、ただ五感を研ぎすませて受け止めるだけ、みたいな感
じがするからだ」。そしてまた、こんな言葉。「スケッチのすばらしい
点は、生物の胚のように未分化であいまいなところだ。ざっくりと粗い
タッチで描いた走り描きは、自分でも予期しなかった物や仕草や表情を
そこここにはらんでいて、そこからどれでも好きなものを取り出して発
展させていくことができる」。いいですねぇ、いいです。

 「鳥の王さま」は絵を見るだけでもウキウキと楽しく、文章を読めば
クリエイティブな人々にとっても多いに刺激になる、そんな本。まさに
ショーン・タンの才能を再確認できる一冊だ。(No.220)

◯ショーン・タンの他の本の書評はこちらをどうぞ。 

               ◯ ◯

2012.11.12 松家仁之の「火山のふもとで」いいなぁ。じっくりと読
んでいます。まだあれとかあれとか読みたい本はいっぱい。


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ショーン・タンらしさが息づくデビュー作「ロスト・シング」

ロスト・シングロスト・シング
ショーン タン 岸本 佐知子

河出書房新社 2012-06-23
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 「アライバル」が高い評価を受けたショーン・タンが2000年に発表
した絵本作家としての本格デビュー作。その後の彼の作品でテーマとな
っているものがシンプルに表現されている。デビュー作といっても、ま
ったく気負いを感じさせないのが素晴らしい。

 ボトルの王冠を集めるのが趣味のちょっとオタクっぽい老け顔の少年
が主人公。彼はビーチで「そいつ」と出会う。やけに大きくて、赤くて、
奇妙な形をしたそれは、何をするでもなく居心地わるげにそこに座って
いたのだ。なぜか気があった2人?はビーチで遊び、その後、少年はそ
いつを自宅へと連れ帰る。誰も迎えに来る様子もないし、もしかしらこ
の異形のモノは独りぼっちなのかもしれないから。とはいえ、両親と共
に住むその家では彼の居場所もなく…。ふと目に留まった新聞広告を見
て、翌朝、「そいつ」をある場所に連れて行くのだが…。

 ショーン・タンが「アライバル」等で描いてきたのは、存在の不安定
さ、どこにも属さないことへの不安なのだが、この作品の「そいつ」も
またそういう存在である。表情などはまったくない。しかし、読み進め
ていくうちに彼が愛おしくなり、その孤独が心にグッと迫ってくる。シ
ンプルながら強い表現はさすがショーン・タンだ。彼らしいこまやかな
描写と細部へのこだわりが楽しい。エドワード・ホッパーの絵をパロデ
ィにしたコマがあると訳者のあとがきにある。その訳者、岸本佐知子さ
んの文章も平易な言葉を使いながらスッと心に届くとても素晴らしい出
来である。(No.216)

◎ショーン・タンのその他の本の書評はこちらから。
 
               ◯ ◯

2012.10.10 やっと秋らしくなってきましたね。っていうかけっこう
寒い。そういえば最近、日本人がいろんな分野で活躍をみせていてなん
だかうれしいですね。あ、ノーベル文学賞は今夜8時発表だ。読書は水
村美苗「母の遺産 新聞小説」。↑あ、間違えた、明日の夜8時だ。

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心の奥底にずっととどまる、ショーン・タン「遠い町から来た話」。

遠い町から来た話遠い町から来た話
ショーン タン 岸本 佐知子

河出書房新社 2011-10-14
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 ショーン・タンの「アライバル」はグラフィック・ノヴェルとして秀
逸だった。その彼の日本での最新作がこの「遠い町から来た話」。まっ
たく文字がない「アライバル」と違ってこちらは絵があり文がある。全
部で15のストーリーだ。見返しに入っている彼の落書きみたいな絵が楽
しい。そして、タイトルが入った最初の見開きページ。そこに描かれた
不思議な絵。ボートに乗った赤い服を来た女性が住宅地の道路の上に浮
かんでいる。この絵を見ているうちに僕らはいつのまにかショーン・タ
ンワールドへと引き込まれていく。

 話は短いものから長いものまでいろいろ。好きな話はたとえば、「遠
くに降る雨」。これは、誰かが書いた、読まれなかった詩、の話だ。往
生際の悪い詩が逃亡を図り、そのうちいろいろな詩と一緒になり巨大な
「詩の球」になってしまう。いいんです、これ。終わり方も好き。「底
を流れるもの」はいつもどなり声が聞こえる家の芝生の上に、ある日突
然、ジュゴンが現れる。大騒動のあと、ジュゴンは運ばれていく。その
夜、家から小さな男の子が出てきて…これ、余韻の残るいい話だ。「葬
送」は、飼っていた犬を殴り殺した男の家に百頭近くの犬が集まって来
る話。1ページの短いストーリーだがラストの数行には涙があふれる。
とにもかくにも、この日常と非日常、異形のものとふつうの人々、その
2つがない交ぜになった物語はショーン・タンの絵の魅力、岸本佐知子
の翻訳の見事さともあいまって、僕らの心の奥底にコトリと音を立てて
たどり着き、そこにずっとずっととどまっているような気がする。

 残念なことがひとつ。切り貼りした紙に文字を連ねストーリーを進め
ていく物語がいくつかある。文字が英語ならいいのだろうけど、日本語
だとどうにもおさまりが悪い。しょうがないことではあるのだけど。
(No.193)

◯ショーン・タン「アライバル」の書評はこちら

               ◯ ◯

2012.3.17 このところ週末はずっと天気が悪いですね。ひと雨ごとに
春は近づいているのでしょうか。読書、やや進まず。依然「11」。

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読むほどに謎が深まる大傑作、ショーン・タン「アライバル」。

アライバルアライバル
ショーン・タン 小林 美幸

河出書房新社 2011-03-23
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 おおっ、これはスゴいぞ。「本の雑誌」の上半期ベスト10に入ってい
て興味をひかれた一冊。ちょっと大判の「グラフィック・ノベル」(と
言うらしい)だ。絵本というよりこういう言い方の方がよく似合う。シ
ョーン・タンの精緻なイラストがなんともいいし、そこで語られる物語
に心ひかれる。言葉は一切ない。絵だけで語られるストーリーだ。しか
し、読み進めていくうちにたくさんの音と言葉が聞こえて来る。頭の中
で、どんどんどんどん登場人物が動き始める。それは、映画を見ている
感覚に近い。ううむ、ショーン・タン、驚きの作家だ。

 物語は「夫婦とその娘の写真」を梱包するところから始まる。見開き
の左側に9コマで額に入った小さな写真を包んでいる様子が描かれてい
る。それはトランクに仕舞われ、右ページには大きな絵が一枚。トラン
クの上で手を重ねる夫婦の姿がある。2人の表情は暗く、その旅立ちが
不安を伴うものだということがわかる。どうやら、この旅は夫一人だけ
のものらしい。涙の別れがあり、汽車は出て行く。男は船に乗り、どこ
か見知らぬ国に行くようだ。

 その異国の地の様子とそこでの暮らし、人々との交流が「アライバル」
の一番の見どころだろう。移民から見たその初めての土地の様子をショ
ーン・タンはリアルにではなくファンタジックに描いていく。そこでは
見知らぬ文字が踊り、異形のものたちがいて、街は恐怖に満ち満ちてい
る。ただ「人」だけが優しい。謎のような物語は、多くの謎を残したま
ま終わる。だから僕らは、何度も何度もこの「アライバル」をひも解く。
読むほどに謎は深まり、飽きることはない。素晴らしい一冊!!この物
語に4年の歳月を費やしたというショーン・タンに大喝采!!(No.182)

               ◯ ◯

2011.11.23 bk1「今週のオススメ書評」に「水域」が選ばれました。
やや渋いコミックですがこれはなかなかいいですよ。bk1のページは
ちら
(木曜日まで)、当ブログでの書評はこちらです。読書はまだ佐藤
正午「事の次第」。

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