ジョナサン・サフラン・フォア no.144        

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9.11で父を亡くした少年は希望を見いだせるのか。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いものすごくうるさくて、ありえないほど近い
ジョナサン・サフラン・フォア 近藤 隆文

NHK出版 2011-07-26
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 映画にもなったので、この本のことを知っている人も多いだろう。主
人公の少年が9.11同時多発テロで父を亡くした設定であることも周知の
事実かもしれない。僕もそのことは知っていたのだけど、最初はかなり
とまどった。この小説の構成がちょっと分かりにくかったからだ。

 読んでいくうちにこの物語が、主人公であるオスカー少年の1本のカ
ギをめぐる冒険と彼のおじいちゃんから息子(オスカーの父)への手紙、
おばあちゃんからオスカーへの手紙で構成されていることが分かってく
る。作者はこの物語を9.11にとどめることなく、第二次世界大戦のドレ
スデン爆撃や広島の原爆投下なども交えながら話を進めていく。おじい
ちゃんおばあちゃんはドレスデン出身でこの街で出会った。手紙で語ら
れるのは、波瀾万丈とも言える2人の物語だ。

 そして、父が遺したカギと「ブラック」という言葉だけをヒントにニ
ューヨーク中を歩き回るオスカー。おじいちゃんおばあちゃんと彼に共
通するのは愛する人を失った喪失感、その悲しみの深さ。それでも何と
か元のような普通の日々に戻りたいと願う強い思いだ。

 作者は、その表現としてヴィジアル・ライティングの手法を採り入れ
ている。ページの間に多くの写真や絵が挿入されたり、字の級数や文字
の詰め、行間などを変えたり、そこには様々な工夫がある。そして、そ
れは、テーマを表現するひとつの方法として完全に物語に溶け込んでい
る。特にラストのヴィジュアルには心を打たれた。

 ヘンに大人びたところがあるオスカー少年だが、彼が亡き父との接点
を求めて、懸命になればなるほど痛々しい感じがする。それでも作者は
なんとか希望を見いだそうとする彼に寄り添うようにこの物語を書き続
けている。長編2作目という作者ジョナサン・サフラン・フォア。この
俊英がこれからどんな小説を書いていくのか大いに楽しみにしたい。
(No.200)
               ◯ ◯

2012.5.25 書評の最後に付いてるナンバーが200に。200冊の本を紹
介したことになります。ううむ。読書は小林信彦の「非常事態の中の愉
しみ」。

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