■夏葉社の本 no.148        

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大切な人を失ったあなたへ。「さよならのあとで」という一編の詩。

さよならのあとでさよならのあとで
ヘンリー・スコット・ホランド 高橋和枝

夏葉社 2012-01-27
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 英国教会の神学者であり、哲学者でもあったイギリスの詩人ヘンリー・
スコット・ホランドの詩の本だ。詩集ではない。収められているのはタ
イトルの「さよならのあとで」という詩一編だけだ。ここで言う「さよ
なら」とは死別のこと。この詩は最愛の人、かけがえのない友人、大切
な家族などを失った人々のために書かれたものである。原詩も最後に記
されているのだが”Death is nothing at all”に始まり、"All is well"で終
わる英文で24行の詩は、身近な人との死別を経験した多くの人々に安ら
ぎを与えることだろう。

 僕は10年以上前に父を亡くした。2人の関係はけっして親密ではなく
クールな仲だったのだけど、なぜか喪失感が大きく自分でも驚いたもの
だ。今年の2月には長年の友を失った。友と言っても20年近く会っては
いない。時々、メールの交換はあったのだけれど。とはいえ、彼は僕に
とっては「かけがえのない友人」と言うほかない存在だった。30年以上
も前に短い期間、同じデザインオフィスで働いただけなのだが。そうい
う友人っていませんか?

 話はちょっとズレてしまったが、喪失感というものは思いがけなく深
く、人の心を苦しめ続ける。この詩は立ち直ることがなかなかできない
でいる人たちの心をやわらかく解きほぐしてくれる。何度も何度も読む。
時には気に入った一行を口の端にのぼらせてみる。最初から音読してみ
る。良い詩は声に出して読むこと自体、心地よいものなのだ。

 出したのは吉祥寺の個人出版社「夏葉社」。彼自身が3年前、一番の
親友であった従兄を事故で亡くしたという島田潤一郎氏の渾身の仕事だ。
(No.195)
               ◯ ◯

2012.4.7 花冷えとはまさに今日のような天気を言うのだろう。昼間の
井の頭公園は賑わっていたが…夜は凍えそう。読書は「犬から見た世界」
を読み始めたが挫折、三浦しをん「舟を編む」を読み始める。

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イメージがふわっと広がる上林暁の傑作小説集「星を撒いた街」。

上林暁傑作小説集『星を撒いた街』上林暁傑作小説集『星を撒いた街』
上林暁 山本善行

夏葉社 2011-07-04
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 私小説作家である上林暁の作品集が「昔日の客」の夏葉社から出た。
上林は名前は知っていたが読んだことはない作家。こういう形で傑作集
が出るのはとてもうれしい。編者は古書店店主であり希代の本読みでも
ある山本善行氏、期待も高まる。

 まずこの本、装幀がいい。昔、おやじの書架の中にこういう装幀の本
を見かけたことがあった。色のトーンも何ともいえずいい。側に置いて
おくだけで幸せな気分になる。「30年後も読み返したい」という帯の
コピーに心ひかれる人も多いことだろう。

 上林には病妻物と呼ばれる作品群があり傑作が多いらしいのだが違っ
た魅力も感じて欲しいという編者の思いから、病妻物は全7作のうち2
作。さすがにこの2作は良くて、何度も読み返したくなる。個人的に好
きなのは巻頭を飾る「花の精」と表題作「星を撒いた街」だ。「花の精」
はイメージがふわっと広がるラストの描写が素晴らしい。駅の近くにあ
るサナトリウム、ガソリン・カアのヘッドライトに映し出される月見草
の原、そして、車内で見た横綱男女ノ川の巨体…。そこに入院中の妻の
はかない姿がオーバーラップする。忘れがたいラストだ。表題作「星を
撒いた街」は旧知の友の家を訪れる男(作者)の話。友の内縁の妻は昔
カフェで働いていた知っている女だった。坂の上にあるその貧しく小さ
な家は、すぐ下が崖になっていて満天に星が乱れ咲いたような夜景が素
晴らしいのだ。それを見ながら交わす三人の会話がいい。そして、ラス
トの別れの美しいこと!

 帯のことを書いたが、上林の私小説は30年後はもちろんだが、明日に
でも読み返したくなる。読めば読むほど味わい深く、読めば読むほどイ
メージが広がる。彼の他の小説も読んでみたくなった。(No.166)

               ◯ ◯

2011.8.1 お、8月になっちゃった。読書は川上弘美「天頂より少し下
って」を終えて、宮部みゆき「チヨ子」に。

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これぞ復刊!「関口良雄さんを憶う」の喜び!!

関口良雄さんを憶う関口良雄さんを憶う
岩波 蔵松 尾崎 一雄 上林 暁 山高 登 他

夏葉社 2011-02-19
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 このブログでも紹介した復刊本「昔日の客」の著者である関口良雄さ
んが亡くなったあとに、尾崎一雄、山高登両氏を中心に作られた追悼の
一冊だ。一冊と言っても70ページほどの小冊子。しかしながら「昔日の
客」の読者にとっては、これほどうれしいものはない。これこそ本当の
「復刊」じゃないだろうか。出版元である夏葉社にパチパチパチと大拍
手を送りたい。

 さて、この追悼集、有名無名の26人が大森の古書店の店主であった関
口さんを「憶う」文章を書いている。最後には息子さんの「父の思い出」
という一文と妻洋子さんの「御礼」が入る。ひとつひとつにはあえて触
れないが、これを読むと関口さんという人に無性に会いたくなってくる。
表紙に写真があるが、もっといろんな顔を見たくなる。プロはだしの俳
句をさらに読みたくなってくる。大森山王書房の店主は、おもしろくて
おかしくて、深くて優しくて魅力いっぱいの人だったのだ。ヘンなこと
を言うが、ここに文章を寄せた人々は関口さんの死を惜しんではいるけ
れど悲しんではいないような気がする。死んでも彼はずっと一人一人の
心の中に生きている。思い出せばポッと灯りがともるようにそこにいる。
関口良雄というのはそういう人なのだ。

 「昔日の客」とあわせてこれを読むことは本好き、書店好き、古本好
きにとってはまさに幸せそのものである。(No.145)

「昔日の客」の書評はこちら
昔日の客
関口 良雄
4904816013

               ◯ ◯

2011.4.16 野球が始まるとハレホレとそっちの方に行っちゃうのよね
私。ま、しょうがないか。読書は金城一紀「レヴォリューションNo.0」
へ。この世界は好きだなぁ。

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しみじみ良かった「昔日の客」。表紙だけでお酒が飲めますよ。

昔日の客昔日の客
関口 良雄

夏葉社 2010-10
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 しみじみ良かった。この本、装幀からしてたまらない。布の表紙はも
ちろんだが、ご本人による題字と著者名、これが何ともいいのだ。この
表紙をつらつらとながめながら酒が飲めるなぁ、これだけでいい気分だ
なぁ、と下戸ながらも思ってしまう私である。

 待望の復刊といわれ昨年話題になった「昔日の客」。これは大森にあ
った山王書房という古本屋の主人関口良雄さんのエッセイ集だ。ここに
書かれているのは昭和30年代から40年代の古本屋の暮らしと本をめぐ
る様々な出来事である。関口さんの人柄からか、そこに集まる本の魅力
からか、山王書房にはいろいろな人がやって来る。有名作家から市井の
本好き、そして、作家志望の若者たち。彼らを語るその語り口は平易だ
が滋味があり、ヘンにたたみかけたりしない上品さがある。酔うと有名
な先生の前でも歌い踊り出すという関口さんだが、文章には彼の人間性
がそのまま現れているようだ。

 正宗白鳥、上林暁、尾崎一雄、尾崎士郎など、作家たちとのエピソー
ドももちろんいいが、個人的には警察署長の娘百合子さんと尾崎一雄と
の交流を描いた「可愛い愛読者」や季節季節の花を持って山王書房を訪
れた塩谷さんの話「大山蓮華の花」など市井の人々の話が心に残った。
若き野呂邦暢とのエピソードを綴った表題作「昔日の客」も素敵だ。

 これはけっして古き良き時代の話でも電子書籍時代の夢物語でもない、
と僕は思う。だって、この本の復活を望む多くの人がいて、それを実現
させた孤高の若き編集者がいて、復刊された本は見事にヒットしたのだ。
今日もどこかの書店や古本屋で、本をめぐるいろいろなエピソードが生
まれているに違いない。都会の喧噪の中、彼らの顔は見えず、声もよく
は聞こえないけれど。(No.128)

               ◯ ◯

2011.1.21 芥川賞・直木賞も決まりましたね。どちらも2作受賞でめ
でたしめでたし。本屋さんもお喜びでしょう。あ、豊崎由美さん、って
いうかトヨザキ社長が始めた「Twitter文学賞」の投票も始まってます、
どうぞよろしく。

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人間を描いて見事な短篇集、「レンブラントの帽子」。

レンブラントの帽子レンブラントの帽子

夏葉社 2010-05
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 1960年代から70年代なかばにかけて日本でも翻訳本が多く出されて
いたバーナード・マラマッド、彼の代表的短編集の中から3編を選び、
吉祥寺の小さな出版社夏葉社によって復刊されたのがこの「レンブラン
トの帽子」だ。地元吉祥寺に出版社があるというだけで何となくうれし
いのに、処女出版であるこの本、さらに続けて出された「昔日の客」が
本好きを大いに喜ばせているという。これはもうパチパチパチと大拍手
を送りたくなってしまう。「夏葉社」かぁ、名前もいいなぁ。

 さてその3編だが、表題作はニューヨークの美術学校に勤める美術史
家と同僚である初老の彫刻家の話、「引出しの中の人間」はソ連に観光
で訪れた傷心のライターと不遇なロシア人作家の話、「わが子に、殺さ
れる」はひきこもりのような息子とその父親の話だ。どの話も登場人物
たちは対立、あるいはベクトルの違いがあり、良好な関係を作れていな
。2人の関係はうまく修復できるのか?物語の結末に向かってのその
「プロセス」こそがこの作家の真骨頂と言えそうだ。

 特に表題作には心を揺さぶられた。白い帽子をかぶっている彫刻家を
めざとく見つけた美術史家が「それ、とてもいい帽子ですね」「レンブ
ラントの帽子そっくりなんですよ」と声をかける。その会話の後から、
なぜか彫刻家は彼を避けるようになり、何だかわからないまま彼の方で
も彫刻家を嫌うようになってしまう。半年近くもそんな状況が続いた後、
美術史家はふと思う。「なにがいったい、奴さんの癇(原文は病だれに
利)にさわったというのだろう?」と。そこで彼が思い至ったこと、そ
の後の行動、そして、忘れがたい結末へ、この流れがなんとも素晴らし
い。ラストは本当にグッと来る。
 
 バーナード・マラマッドは、人と人との間の理解や誤解、寛容や不寛
容、疑いや共感、そういう様々なものを描きながら、人間というものの
おかしさや哀しさを見事に浮き彫りにする
。まさに心に残る一冊!マラ
マッドという作家の存在を私たちに教えてくれただけでもこの短編集の
価値はとてもとても大きい。訳者にあの小島信夫がいること、装丁が和
田誠であることも付け加えておきたい。(No113)

               ◯ ◯

2010.11.20 一昨日、佐藤多佳子さんから直接ツイートをもらいちょ
っとあせる。そのくせ、そっけない返事を書いてしまい、なんだかなぁ、
なのだ。佐藤さぁ~ん「第二音楽室」昨日、買いましたよぉぉぉぉ。


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