松家仁之 no.149        

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【書評】松家仁之「優雅なのかどうか、わからない」

◇後半にしたがって濃くなる陰影。そして、生を思う深い余韻。
優雅なのかどうか、わからない優雅なのかどうか、わからない
松家 仁之

マガジンハウス 2014-08-28
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  48歳の岡田匡は離婚し、15年余り住んでいた元代々木のマンション
を出て、井の頭公園近くの一軒家で気ままな一人暮らしを始めた。最初
の方はなんだかちょっとムカつく。結婚当時の回想なのだが、編集者で
あるこの男、マンションのリフォームと家具にやたらとお金をかけ、時
代も時代なのだがやたらとバブリーな暮らしをしていたのだ。何だかな
ぁ、と思いながらそれでも読み進めていく。

 一人暮らしを始めた一軒家の話になるとそんな思いはすぐに消えてし
まう。古い民家であるその家や周囲の自然を語る作者の描写!とにかく
うまいのだ、松家仁之は。そして、昔の恋人、佳奈との再会。ここから
は何だか男ってほんとしょうがないなぁ、って話なのかな、と思い始め
る。再会した若い彼女に激しく引きつけられ、青年みたいにふるまう48
歳。思ってることも言えず、大人の恋の成熟もない。それはそれで何だ
かとてもいいのだけれど…。

 物語は後半になるにしたがって陰影が濃くなっていく。これからどう
生きるのか、佳奈とはどうするのか。家のオーナーの園田さん、彼女か
ら託された猫のふみ、海外にいる息子、そして佳奈の父親。それぞれの
エピソードが物語に深みを与えている。前の2冊よりちょっと軽めの話
かと思っていたが、最終的にはズシリと心に残った。松家の小説はいつ
も余韻が深い。(No.305)

◯松家仁之のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2014.11.4 さて、広告のコンペも今日で終わり。もうひと頑張りして
みるか。読書はミロコマチコ「オオカミがとぶひ」。すごいっ!!

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大自然の中、儚く燃える炎のような。松家仁之「沈むフランシス」。

沈むフランシス沈むフランシス
松家 仁之

新潮社 2013-09-30
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 フランシスって何だ? まずは誰もがそう思うだろう。小説は川に流
されてきた死体の描写から始まる。どうみても人間のようだが、これが
フランシス? 表紙の犬の写真も気になる。フランシスとは何か、それ
はこれから読む人のために秘密にしておこう。

 物語の舞台は北海道東部の安地内(アンチナイ)という村。東京の大
手商社を退職して非正規の郵便配達員になった女性が主人公だ。デビュ
ー作「火山のふもとで」で美しく静謐な物語世界を創りだした松家仁之
は、ここでも北国の四季を丁寧に描いて素晴らしい。ただ、登場人物も
多く、展開もダイナミックだった前作に比べると、この物語は男女2人
の恋愛小説で登場人物も限られている。

 郵便配達員の桂子とその配達先で川の畔の木造家屋に一人で暮らす和
彦の2人は、会ってまもなく深い関係になる。何度か逢瀬を重ねていく
うちに桂子は「自分の中にある無数の細胞が活発に動いていると感じな
がら(中略)どこにも届かない曖昧な空間に宙づりされているような感
覚を覚え」始めるのだ。すべてが曖昧なままに続く男女の関係。それは、
北海道の大自然の中でチロチロと燃える儚い炎のようだ。

 男と女はただ心と心でつながっているのではない。周りの自然や出来
事が彼らの思いに強く影響を与える。フランシスの存在もまた…。美し
く未来につながるラストが強く印象に残った。松家仁之は、これからも
読み続けたい作家である。(No.265)

◯松家仁之「火山のふもとで」のレビューはこちらから。       

            ◯ ◯

2013.12.16 心にひっかかっていたこともようやく終わり、なんとか
ラストスパートへ。読書は伊集院静「ノボさん」。なかなか進まない。

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静謐で豊かで美しい文章、松家仁之「火山のふもとで」が素晴らしい。

火山のふもとで火山のふもとで
松家 仁之

新潮社 2012-09-28
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 これは今年のマイベストかもしれない。まずいいのが、静謐で豊かで
美しい文章だ。それはまるで、この小説の主人公坂西徹が勤める建築事
務所の「先生」村井俊輔が作る建物のようだ。彼の建築は、でしゃばら
ず、しかし、時代に左右されない美しさを持っている。村井俊輔は脚光
を浴びて派手に活躍するタイプではないが、日本を代表する建築家の一
人だった。

 坂西が入所した1982年には先生はすでに七十代の半ば。彼の入所後
に国立現代図書館という大きなコンペがスタートする。夏になると北軽
井沢にある「夏の家」にその機能を移転する村井の事務所。物語の大半
はこの「夏の家」を舞台に繰り広げられる。坂西の一人称で語られる小
説は、夏の避暑地の情景を見事に描き出す。北軽井沢の澄んだ空気、そ
こにある樹々や鳥たちの描写がとてもいい。多岐にわたる建築の話、コ
ンペ案を作っていくプロセスもまた興味深い。避暑地に住む老いた小説
家や先生の「パートナー」との交流。そして、主人公の淡い恋。これも
抑制の利いた筆致で描かれ、全体の調子を乱したりはしない。

 物語は4分の3を過ぎた辺りから、にわかに黒い雲に覆われ始める。
読んでいるこちらの胸を不安がよぎる。そして…。若々しい夏の季節が
過ぎて、10月半ばの北軽井沢、さらには、29年後の軽井沢へ。この小
説には世の移ろい、人生の移ろい、人それぞれの変化と変わらないもの
が描かれている。さらに、人生の時間の豊かさ、美しさを強く強く感じ
る。作者の才能は希なるものであろう。「火山のふもとで」、これは、
人生の中で何度も読み返したくなる特別な一冊だ。

 最後に作者について。松家仁之(まついえまさし)は「考える人」や
「芸術新潮」の元編集長。新人のデビュー作となっているが、朝日新聞
によると松家の作品は1979年に文學界新人賞の佳作に選ばれており、
その時の阿部昭の選評に「作者はまだ二十歳だという。なにもそう急い
で小説を書くことはないと私などは思うのだが」とあったという。(20
12.6.27松浦寿輝「文芸時評」より)結果的にこの助言が効いたのか、
作者は長い回り道?の末、33年後にこの小説で作家デビューを果たすこ
とになったのだ。(No.222)
               ◯ ◯

2012.11.28 ジェフリー・ディーヴァー「バーニング・ワイヤー」を読
み終えて、南伸坊「本人伝説」へ。年間ベストがあるので、あれとあれは
どうしても読み終えたいのだけど…。

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