原田マハ no.151        

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【書評】原田マハ「暗幕のゲルニカ」

◇アートの力とそれを信じる人々の力を描いた傑作!
暗幕のゲルニカ暗幕のゲルニカ
原田 マハ

新潮社 2016-03-28
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 名画「ゲルニカ」を巡る2つの物語。1つはピカソが「ゲルニカ」を
生み出す物語。そして、もう1つは9.11で夫を亡くしたMoMA(ニュー
ヨーク近代美術館)のキュレーター八神瑤子が「ピカソの戦争」展を開
催しようとする物語。「暗幕のゲルニカ」では過去と現代、この2つの
物語が交互に語られていく。

 どちらにも背景には戦争がある。ピカソが生きたのは大戦前夜のパリ。
「ゲルニカ」を描くきっかけとなったバスクの都市ゲルニカへの空爆、
ファシズムの台頭、そして、長い戦争が始まり、パリも陥落する。瑤子
が暮らす9.11後のアメリカでは「報復」という名の下、イラクへの武力
行使が始まる。

 ピカソの「ゲルニカ」はパリ万博のスペイン館に展示された後、戦火
を逃れてアメリカに「亡命」する。その後、スペインに民主政権が誕生
するまで長きに渡ってMoMAによって守られ続けた。今はマドリードに
あるこの名画を反戦の象徴としてぜひ「ピカソの戦争」展に持って来た
いと願う瑤子。国連本部ロビーにある「ゲルニカ」のタペストリーが暗
幕で隠された事件を発端に、2つの物語は交錯しながら進んでいく。史
実と虚構をないまぜにしたストーリー作りの巧みさはさすが原田マハだ。

 「ゲルニカ」の亡命に力を尽くしたスペイン名門一族の青年バルド・
イグナシオ、MoMAの財政的・精神的支柱ルース・ロックフェラー、そ
して、ピカソとその愛人ドラ・マール、個性的な人物を配した物語は劇
的なラストへとノンストップで突き進んでいく。スリリングでスケール
の大きな美術サスペンス!アートの力とそれを信じる人々の力を描いて
これはまさにアート小説の傑作、原田マハの最高傑作だ。(No.361)

◯原田マハのその他の小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.6.2 体調は回復基調。それにしても舛添氏…リコールは難しいの
かなぁ。読書は村上春樹「ラオスにいったい何があるというのですか」。

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【書評】原田マハ「モダン」

◇福島とワイエスの絵をシンクロさせた冒頭作の素晴らしさ。
モダンモダン
原田 マハ

文藝春秋 2015-04-13
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 表紙には「モダン」というタイトルと共に「The Modern」という英
語表記がされている。「The Modern」とはMoMA=ニューヨーク近代
美術館のこと。これは自らキュレーターであった原田マハがMoMAを題
材に書いた5つの物語からなる短編集だ。

 なんといっても最初の「中断された展覧会の記憶」が素晴らしい。あ
の大震災の時に福島の美術館でアンドリュー・ワイエスの展覧会が開か
れていた、という設定。そこにはMoMAから彼の代表作である「クリス
ティーナの世界」が出展されていた。MoMAの理事会はフクシマからこ
の名画を「救出」することを早々に決め、展覧会ディレクターである杏
子ハワードにその任務を委ねた。さて、どうなるのか。桜の季節の福島
での美術館スタッフ長谷部伸子との再会。彼女は杏子にあるものを託し
て…。このラストに僕は涙した。「クリスティーナの世界」にはモデル
がいる。ポリオで足が不自由なクリスティーナ・オルソンという女性。
彼女の不屈な精神と福島の状況がシンクロする。見事な一編!

 さらには、監視員を主人公にMoMAに現れる不思議な訪問者を描いた
「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」、初代館長との幼い頃の思い出
をインダストリアルデザイナーになった男が語る「私の好きなマシン」。
9.11で親友を亡くしたアシスタント・キュレーターの再出発を描く「新
しい出口」、研修員としてやって来た日本人とアシスタントの交流を描
いた「あえてよかった」、どれもがMoMAへの愛、美術館という空間へ
の愛、ピカソやマティスなどの絵画への愛にあふれていてとても良い。
読後、本当に幸せな気分になれる一冊。こういう小説集が賞を取れると
いいなぁ。(No.330)

◯原田マハのその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 
◯「クリスティーナの世界」という絵について

            ◯ ◯

2015.6.27 というわけで、フランス、中国共に善戦するも勝ったのは
ドイツとアメリカ。明日は早朝になでしこと豪州。勝とう!読書は窪美
澄「さよなら、ニルヴァーナ」。

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【書評】原田マハ「太陽の棘」

◇戦後すぐの沖縄、画家たちと従軍医の運命の出会いがあった。
太陽の棘(とげ)太陽の棘(とげ)
原田 マハ

文藝春秋 2014-04-21
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 キュレーターであった原田マハの「絵」をテーマにした物語はいつも
興味深い。「太陽の棘」は戦後の沖縄にあった美術村の作家たちとその
絵に魅せられたアメリカ人従軍医の話だ。

 プロローグは現代、84歳になった主人公エドの日常が描かれ、そこ
から静かに60年前の回想が始まる。このプロローグの静謐さがとても
いい。そして、物語は1948年の沖縄へ。大学院を出たばかりで何も
わからないまま精神科の軍医として在沖アメリカ軍に派遣されたエド。
暴力沙汰を起こす兵士の多いタフな仕事の合間、仲間とドライブに出た
彼はそこで運命の出会いをすることになる。

 「ニシムイ・アート・ヴィレッジ」、そこは沖縄の画家たちが集まっ
た美術村。彼らは肖像画やポストカードなど「売り絵」を描きながらな
んとか生計を立て、自分たちの描きたい絵を描き続けている。特にリー
ダー格のタイラはエドの出身地サンフランシスコの美術学校に通ってい
た男で2人は意気投合する。そこから始まるタイラたち画家との密度の
濃い交流。台風による村の崩壊、エドの失言からの絶交、そして、ある
事件が起こり…。「太陽の棘」は、絵を描くことに情熱を傾ける沖縄の
画家たちの真摯さ、粘り強さ、その人間性を活写して素晴らしい。エド
との交流には絵を愛するもの同士の信頼と愛があり、読むものの心を捉
えて離さない。

 これは史実を基に書かれた物語だ。タイラのモデルは沖縄画壇を代表
する画家になる玉那覇正吉。彼が描いたエド(モデルはスタンレー・ス
タインバーグ博士)の肖像画と自画像がこの本の表紙と裏表紙を飾って
いる。彼らの絵をもっともっと見てみたい。(No.302)

◯原田マハのその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.10.8 ノーベル賞、中村教授の「闘い」にはずっと注目していた
のでうれしい。読書は津村記久子「エヴリシング・フロウズ」。

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【書評】原田マハ「翔ぶ少女」

◇生き抜くことを選んだ少女のやさしく力強い再生の物語。
翔ぶ少女 (一般書)翔ぶ少女 (一般書)
原田マハ

ポプラ社 2014-01-10
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 夢の様な現実のような心がフワッとするような導入部。しかし、そのや
さしい気分は一瞬のうちに破られてしまう。これは神戸の震災でパン屋を
営む両親を亡くした仁華(ニケ)という少女の話だ。彼女には逸騎(イッ
キ)というお兄ちゃんと燦空(サンク)という妹がいる。一瞬のうちに孤
児になってしまった3人の子供たち。しかも、仁華は脚にケガを負い、自
由に歩くこともままならない。子供たちは、結局、地震の時に助けてもら
ったゼロ先生という心療内科のお医者さんと一緒に暮らすことになる。彼
もまた、震災で妻を失ったのだ。

 復興の日々、仁華はしだいしだいにクラスの中で孤立していく。周囲の
同情がイヤだし、友だちと遊ぶよりゼロ先生と一緒に復興住宅を訪れ、お
年寄りたちと話すことのほうが楽しいのだ。そして、そんなある日…。急
にファンタジーっぽい展開になるので驚く。しかし、これはファンタジー
ではない。仁華の思いの強さ!大切な人を大事に思う祈りのような感情、
そんなもろもろがひとつになり生み出された「物語の奇跡」なのだ。

 心身ともにうちのめされ、立ち直ることなどできないと思ったあの日。
「翔ぶ少女」は、そんな日々から立ち上がり、生き抜くことを選んだ少女
のやさしく力強い再生の物語だ。

 ゼロ先生は佐元良(さもとら)という姓なので、ニケはサモトラケのニ
ケ(ルーヴルにある羽がはえた勝利の女神像)である。しかも、ゼロ先生
に逸騎(イッキ)、仁華(ニケ)、燦空(サンク)という名前。これはさ
すがにやり過ぎだろうと途中まで思っていた。しかし、最後まで読んでみ
ると、このファンタジー的な部分を支えるためにこういう仕掛けが必要だ
ったのだということがよくわかる。原田マハ、さすがである。(No.279)

◯原田マハのその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.4.1 4月になっちゃった。いろいろなものが終わり、いろいろな
ものが始まった。少しやる気になる。読書は吉田修一「さよなら渓谷」。

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原田マハのアートの話をもっと読みたい!「ジヴェルニーの食卓」。

ジヴェルニーの食卓ジヴェルニーの食卓
原田 マハ

集英社 2013-03-26
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 「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞を受賞した原田マハ。ニューヨ
ーク近代美術館に勤務し、キュレーターでもあった彼女がまた絵と画家
をテーマにした小説を書いた。「ジヴェルニーの食卓」、直木賞候補に
もなった4話収録の作品集だが、これ、いいなぁ。原田マハ、ずっとこ
ういうテーマで書けばいいのに。もっともっとアートの話を読みたいぞ。

 さて、収録された4つの物語は、どれも印象派とその周辺にいた画家
たちを描いているのだが、彼らの近くにいた女性たちから見た画家とい
うスタイルを取っているのがうまい。身の回りの世話をした女性が語る
マティス、そして友人のピカソ。自らも画家であるメアリー・カサット
が見たドガ。セザンヌをひいきにした画材屋(ピカソもモデルにしたタ
ンギー爺さん)の娘が彼に送った4通の手紙。そして、表題作である最
後の作品は、晩年を共に過ごした義理の娘から見たモネの物語だ。ここ
で描かれているのは、画家たちの狂気であり、貧困であり、焦燥、執念、
老いである。身を粉にして制作を続ける彼らの姿と素晴らしい画家の身
近にいることに至福を感じ、同時代を生きていることを強く意識してい
る女性たちの心を作者は見事に描き出している。4編どれもが心に残る
がマティスを描いた最初の物語が個人的には好きだ。モネの「睡蓮」の
一部を使った装幀もまた魅力的である。(No.251)

◯原田マハ「楽園のカンヴァス」の書評はこちらから。

◯この小説は2015年6月25日に文庫になりました。
ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)
原田 マハ

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               ◯ ◯

2013.8.12 ヒィーヒィー暑い。夜、眠りが浅く、食欲もなく、ちょ
っと夏バテ気味だ。読書は朝井リョウ「世界地図の下書き」。


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知的好奇心をくすぐる、原田マハ「楽園のカンヴァス」。

楽園のカンヴァス楽園のカンヴァス
原田 マハ

新潮社 2012-01-20
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 今年の山本周五郎賞の受賞作、直木賞候補にもなった。アートを題材
にしたこの作品はニューヨーク近代美術館勤務の経験があり、フリーの
キュレーターでもあった作者が初めて自らの得意分野に挑戦した野心作
だ。アンリ・ルソーの知られざる名画を題材にした小説だが、最近のこ
の手の物語と同様にグイグイと読ませるし、構成もアイデアも素晴らし
い。もの足りない部分がないこともないのだけど、これだけ楽しませて
くれたら上出来である。

 発端は2002年の倉敷、大原美術館で監視員を務める早川織絵のエ
ピソード。そして、物語は一気に時をさかのぼり1983年のスイス・
バーゼルへ。当時、新進気鋭のルソー研究者だった彼女は、伝説のコレ
クター、コンラート・バイラーに密かに招かれスイスを訪れた。目的は
彼が秘蔵する「夢を見た」と名付けられたアンリ・ルソーの絵の真贋を
もう一人の男と争い見極めるためだ。しかも、絵ではなくある「物語」
を通して。この設定がなかなかいい。

 「夢を見た」はルソーのあの名作「夢」に極似した作品だった。なぜ
こんな絵が存在するのか?そして、美術界に暗躍する人だけが知るこの
絵をめぐるある噂…。それをここで明かすわけにはいかないが、この噂
が真贋の話を複雑にし、だからこそこの物語はおもしろいのだ。織絵た
ちが読んだ「物語」の中で語られる晩年のルソーの暮らしぶり、「夢」
のモデルになった女の「永遠に生きる」という意味、バイラーという男
の正体などなど、単純ではない作りがなんともうれしく、知的好奇心を
大いにくすぐられる。まさに読み応えのある傑作である。(No.217)

◯この小説は2014年6月27日に文庫になりました。
楽園のカンヴァス (新潮文庫)楽園のカンヴァス (新潮文庫)
原田 マハ

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               ◯ ◯

2012.10.19 水村美苗「母の遺産 新聞小説」もそろそろ終わり。こ
ういう展開になるとは…。やっぱり小説っておもしろいよなぁ。

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