村田紗耶香 no.161        

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【書評】村田沙耶香「消滅世界」

◇日本の未来を暗示する?村田沙耶香、入魂の一冊。
消滅世界消滅世界
村田 沙耶香

河出書房新社 2015-12-16
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 そこは、人が人工授精を受けて出産し、もう交尾(セックス)によっ
て子供を産むこともなくなってしまった世界。未来というよりパラレル
ワールドだ。この世界の住人が恋をする相手は、アニメや漫画や本の中
のキャラクターがほとんどで、少数だがヒトの異性に恋する人間もいる。
夫婦にとっては「家族」であることと子育てだけが大事で、夫婦間のセ
ックスは「近親相姦」とみなされタブー視されている。夫婦が恋をする
ことはなく、結婚しても外に恋人がいたりするのだ。

 そんな世界で生きる主人公の雨音には大きなヒミツがあった。彼女は、
父と母の性行為で生まれた子供なのだ。それはコンプレックスであると
同時に、自分の中に母と同じ血が流れていることを彼女は恐れている。

 大人になった雨音は結婚をし恋人もできるのだが、あることがきっか
けで夫と共に実験都市・千葉へと移住することになる。そこでは、生ま
れた子は名前ではなく「子供ちゃん」と呼ばれ、すべての大人がすべて
の子供の「おかあさん」になる。男も人工子宮で妊娠する。雨音は、そ
の異様な世界に最初は嫌悪感を抱いていたのだが…。

 この小説の設定のスゴさ!セックスレスだと言われる現在の日本と地
続きの場所にあるようでやたらと怖い。これからこの国はどうなってい
くのか?男と女の関係、夫婦の関係、親と子の関係はどうなるのか?家
族とその未来は?いろいろなことを考えずにはいられない村田沙耶香、
まさに入魂の一冊!

◯村田沙耶香のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。

            ◯ ◯

2016.3.7 義母の葬儀も終わり、ようやく日常が戻ってきた。妻はまだ
いろいろ大変だが。読書はピエール・ルメートル「その女アレックス」。

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三島賞受賞!村田紗耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」は…。

しろいろの街の、その骨の体温のしろいろの街の、その骨の体温の
村田沙耶香

朝日新聞出版 2012-09-20
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 本年度の三島由紀夫賞受賞作品。2部構成だ。1部は主人公の結佳が
4年生の頃の話。2部で彼女は中学2年生になっている。結佳が住むの
はいわゆるニュータウン。1部では白くてヘンに整然としたその街はさ
らに工事が進み増殖中だ。時代的には80年代ぐらいだろうか。2部で
はこの街、すでに工事は中断し「新品の廃墟」のようになってしまって
いる。

 小学校で仲良しだった、結佳と若葉と信子はスクール内カーストのた
だ中にいる。若葉は一番上のグループだが以前のような輝きはすっかり
失せ、結佳は下から二番目の「大人しい女子」のグループ。信子は行き
場のない子たちが寄り添っているような一番下のグループだ。小学校の
頃、同じ習字教室に通う伊吹という子供っぽい男の子に何度もキスを迫
ったりして「おもちゃ」にしていた結佳。その伊吹はカーストなんてあ
ることも知らない人気の男子になり、自然に一番上のグループに入って
いた。それでも結佳は伊吹と2人の時だけ、昔からの支配関係を続けて
いるのだ。

 ニュータウンという背景、その中で当たり前のように存在するスクー
ル内カースト、クールで観察眼がするどい結佳、そんな彼女の奥深くで
うずくような欲望や性!それぞれが重層的に重なりあい、そこにリアル
な1人の女の子の姿が浮かび上がってくる。そのリアルさ!村田紗耶香
は風景と会話とハートをこまやかに描写して見事だ。

 クラスメートとの関係、街との関係、伊吹との関係がしだいに変化し
ていき、結佳の中で沸点に達した時に彼女は自らの身体、肉体を触るこ
と、さらには他人に言葉をぶつけ世界に少しずつ触れることで変化して
いこうとする。そんなラストが力強くて素晴らしい。(No.241)

◎「しろいろの街の、その骨の体温の」は2017年7月7日、朝日文庫で
 文庫化されました。
しろいろの街の、その骨の体温の (朝日文庫)
村田沙耶香
4022647841

               ◯ ◯

2013.6.16 さてさて明日のサッカー豪州戦、すっきり決めて欲しいも
のです。読書はまだまだ「土屋耕一のことばの遊び場」。


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