山本文緒 no.181        

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【書評】山本文緒「なぎさ」

◇この世の中をとまどいながら生きているすべての人へ。
なぎさ (単行本)なぎさ (単行本)
山本 文緒

角川書店 2013-10-19
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 冒頭、主人公の一人である冬乃が故郷を出て海辺の町へ行く「思い」を
語る。「森をつくる一本の樹だった私たちは、せっかく張った根を引き千
切るようにして長野県を出た」、読み進めながらもこの言葉が心に突き刺
さったように忘れられずにいた。それほどまでの思いで故郷を捨てなくて
はならなかった理由は何なのだろう?

 登場人物は多彩だ。冬乃とその妹の菫(すみれ)、ブラック企業に勤め
る冬乃の夫・佐々井とその部下・山崎君、菫の怪しい知人モリ。ワキの人
物たちもなかなかいい。冬乃と菫がカフェを始める話や山崎君のブラック
企業での話が物語の軸になるのだが、それよりも登場人物一人ひとりのこ
とが気にかかる。各々が各々の立場でいろいろなモヤモヤを抱え生きてい
る。幸せとか不幸とかさえ考えられず、生きることに精一杯な人間たち!

 全体的にこの小説はタラ〜っとしてる、何かにググっと収斂したりしな
い。そこがいい。小説家は人を描きたがっている。彼らの心に寄り添い、
その思いを僕らにしっかりと伝えてくれる。だからこそ、余韻は深い。

 最初に書いた冬乃の思い、その理由はラスト近くになって語られる。人
の中に人が巣食うという苦悩…。冬乃と川崎君、それでも生きていく、と
いう思いを感じるそれぞれのラストが強く心に残る。この世の中をとまど
いながら生きている人たちにぜひ勧めたい小説だ。(No.292)
       
            ◯ ◯

2014.7.19 イマイチはっきりしない天気が続く。愛犬は雷が鳴るとひど
く怖がる。読書、窪美澄ほかの「きみのために棘を生やすの」。

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