絲山秋子 no.24        

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【書評】絲山秋子「離陸」

◇時間と空間、生と死…浮遊感を感じる不思議な物語。
離陸離陸
絲山 秋子

文藝春秋 2014-09-11
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 絲山秋子は好きでほとんどの小説を読んでいる。ただ、この「離陸」
は理解するのが難しい。だからといってつまらないわけではなく、なん
だか「不思議な感じ」がしてとてもおもしろいのだけど。ひとつだけハ
ッキリしているのは絲山秋子は物語というものに挑戦状を突きつけてい
る。そんな感じがする。

 八木沢ダムで管理の仕事をする国交省の若い役人佐藤のもとに、イル
ベールという謎の黒人が訪れ「女優」を探して欲しい、と頼む。「女優」
とは佐藤の元の彼女乃緒(のお)のことで、彼の前から突然姿を消して
いた。このあと主人公である佐藤は、パリ、熊本八代、福岡、佐賀の唐
津と居所を変えていく。こうした空間移動の中に時空間の話が紛れ込む。
佐藤はパリで、1930年代に乃緒がマダム・アレゴリという名でスパ
イとして暗躍していたという文書を手に入れるのだ。

 この物語では佐藤の大切な人が次々と死んでいく。彼は言う、人はみ
な最後には飛行機みたいにこの世から離陸していく。生きてる自分たち
はまだ空港にいて行列に並んでいるのだと。時間と空間、生と死…そこ
に生きている自分。そんなことを考えているとなんとも「不思議な感じ」
になってしまう。それは浮遊感と呼んでいいものなのかもしれない。

 ミステリアスで不思議な物語であるけれど、実はリアルで心に残るエ
ピソードも多い。パリで結ばれた女性リュシーとのこと、乃緒の息子ブ
ツゾウとの交流、佐藤の妹で目が見えない茜のこと。そして、佐藤の身
近に常にある「水」のイメージ!これは、繰り返し読むことで作者の意
図がさらに見えてくるに違いない深くて豊かな物語。(No.325)

◯絲山秋子、その他の小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2015.5.16 5月に半袖のTシャツでうろうろしてる私。なんだかもう
四季がよくわかんないな。読書は、北村薫「太宰治の辞書」。

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戻りたい場所にはもう戻れない。絲山秋子「忘れられたワルツ」

忘れられたワルツ忘れられたワルツ
絲山 秋子

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 7つの物語が収録された絲山秋子の最新短編集。震災後を舞台に被災
地とは少し離れた街や村を舞台にした話だ。この震災があの震災なのか
何なのかはよくわからない。ただ「それ」は確かにあった。そして、人
々は「その後」を生きている。

 自衛隊しかない町の工務店に勤める女性事務員の恋愛論、強震モニタ
を見続ける友との再会の夜、先生の葬儀に向かう雪のハイウェイで出会
ったオーロラを運ぶ女、空に向かって音符を投げる預言者との不思議な
出会い、得意先に向かう電車が見知らぬ駅に着き戸惑う上司と部下、母
の間男を捕まえに行くピアノ好きの姉、女装を趣味とする老人が体験し
た神との不思議な遭遇。いつもの絲山の文章のようであるが、何だか少
し違う。

 帯に伊坂幸太郎が「『何気なく見えるのに、奥深い』小説をどうやっ
たら書けるのか、僕には分からない」という一文を寄せている。人々の
心を揺るがす大きな出来事があった後、戻りたいはずの場所は近いよう
でとても遠い。そこに帰り着くことはできそうでできない。日常を描き
ながらも怪しさや不安定さを強く感じるこれらの物語、そこにある「気
分」に激しく共感している自分がいる。やはり、絲山秋子はすごい作家
である。(No.252)

◯絲山秋子のその他の本のレビューはこちらから。         

       ◯ ◯

2013.8.19 夏バテで胃が弱り、ついに病院に行った。薬を飲んでいる
が全快までにはほど遠い感じ。早く涼しくなって欲しいが…。読書は朝
井リョウ「世界地図の下書き」が終わり、宮部みゆき「泣き童子」。

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絲山秋子「不愉快な本の続編」はまたまたラストがとんでもない!

不愉快な本の続編不愉快な本の続編
絲山 秋子

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 いやぁ、絲山秋子、スゴいなぁ。いったいどこに行こうとしてるのだ
ろう、この人。冒険する作家というか挑戦する作家というか。皆さん、
当然、タイトルにも心ひかれるでしょうが、6つに分かれた各編に付い
ているサブタイトルが意味深だ。「生まれる」「取り立てる」「好きに
なる」「盗む」「佇む」「入る」だって。ううむ。この物語、主人公で
ある乾って男が東京、新潟、富山、そして、故郷の呉へとめぐり行く話
だ。乾は自分のことを「生まれながらのヨソ者」と呼ぶ。フランスに留
学していたらしいのだが、取り立てをやったり、なんだかヘンな男なの
だ。ヘンなヤツだが、けっこうカワイイ。この話、乾の一人称で書かれ
ているが、少々軽みのあるその文体がこの男をさらにつかみどころのな
い人間に仕立て上げていく。

 「好きになる」は新潟が舞台で、彼はユミコという女と出会い、なん
と結婚までしてしまう。この2人の関係がすこぶるおもしろい。その結
末も愉快だ。舞台を富山に移した「盗む」では、乾が言葉通りの行動に
出ちゃう。それもなんと…。「生まれながらのヨソ者」はいったいどこ
にたどり着くのか?そう思って読み始めたラストの「入る」。あららぁ、
こういうことをしちゃうのね。本当に困った人だなぁ、絲山さん。自分
の小説をどうしようとしているの??(No.180)

               ◯ ◯

2011.11.7 ううむ、やっぱりというか椎名誠の「そらをみてますない
てます」は傑作だ。これは確実に年間ベストに入ってくるぞ。

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不思議な魅力にあふれた物語、絲山秋子「末裔」。

末裔末裔
絲山 秋子

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 不思議な魅力にあふれた物語だ。絲山秋子の小説はそう感じるものが
多いのだがこの「末裔」は特に魅力的だ。まずは冒頭、主人公である省
三の自宅玄関の鍵穴が無くなってしまう。ここからもう絲山ワールドに
グイグイと引き込まれていく。自分の家に入れなくなり呆然とするこの
男、区役所に勤める公務員だが、妻を亡くし、自宅はいつの間にかゴミ
屋敷と化している。一周忌が過ぎ、娘も家を出た。行く宛もない省三は
街をうろつくうちに乙と名乗る見知らぬ男から声をかけられる。この乙
との出会い、それに続くエピソードも普通におもしろいのだが、これか
らあとが傑作だ。

 彼は昔よく行った鎌倉の伯父の家を訪ねる。それまでは公務員然とし
ていた男が、鎌倉に来てからは文学者を父に持つ風変わりな男へと変わ
っていく。空き家同然の伯父の家には「かって犬だった者」なんていう
のが訪ねてきたり、疎遠だった娘と会ったり、不思議な夫婦との出会い
があったりと、何だかおもしろい。ここで彼は過ぎ去りし日々に思いを
馳せる。伯父とのこと、父や叔父が持っていた教養について、死んだ妻
や親族との関係。さらに、自分自身の人生、家族との在り方にも思いを
巡らす。タイトルの「末裔」ともここでつながっていく。この物語が帯
に書かれたような「家族小説」なのかどうかは僕にはよく分からない。
ただこれを読むと、命の連なりとその末端にいる自分を考えざるを得な
い。あまりに心細いそのひとつの魂を。(No.147)

               ◯ ◯

2011.4.25 スーちゃんの死は我々世代にとってそう簡単に受け入れら
れるものではない…。55歳なんてあまりに早すぎる。読書は佐藤泰志の
「そこのみにて光輝く」を終え、同じく佐藤の「移動動物園」へ。

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ダメ男たちとの物語、絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」。

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)
絲山 秋子

文藝春秋 2006-05
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 女性では宮部みゆき、川上弘美、佐藤多佳子などが好きな小説家だが、
絲山秋子はなんだか特別な存在、という気がしている。その絲山さんの
デビュー作がこの「イッツ・オンリー・トーク」。文學界新人賞を取り、
「やわらかい生活」というタイトルで映画にもなった。この映画のシナ
リオを「年鑑代表シナリオ集」に載せるにあたって裁判があったがそれ
はまた別の話。

 さて、この小説、まず何と言っても小気味の良い文体がいい。初めは
ちょっと違和感があったのだけど、読み進めていくうちにそれが快感に
変わっていった。短めの文章でつないでいくスタイルは、失敗すると小
学生の作文のようになってしまう。ある意味、冒険的なスタイルだが、
常に文体にこだわる作家、絲山秋子のデビュー作なのだから、これはも
う冒険でもなんでもないのだろう。

 「直感で蒲田に住むことにした。」という文章で始まるこの小説、優
子という躁鬱の気がある女性とダメ男たちの物語だ。彼女の相手は友人
の都議会議員、鬱病のヤクザ、痴漢の男、自殺志願のいとこなどなど、
誰もが何だか情けない。そういう男たちと間抜けなやり取りを繰り返す
優子。でも何故かそこには真実がある。超然としていて不思議な個性を
感じる優子のキャラもいい。「イッツ・オンリー・トーク、全てはムダ
話」と言い放つ、ラストもかっこいい。そうこのタイトルはキング・ク
リムゾンのフレーズから来ているのだ。ここから絲山秋子が始まった、
そういう思いを強くする傑作。もう一編収録されている「第七障害」も
かなり読ませる。(No.118)

               ◯ ◯

2010.12.9 東京もかなり寒くなってきました。今日から暖房入れます。
ベストテンが載ってる「本の雑誌」を買いに行きたいのだけど、家から
出るのが面倒くさい。


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絲山秋子「妻の超然」、三話三様の超然がたまらなくおもしろい。

妻の超然妻の超然
絲山 秋子

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 いやいやいや、絲山秋子は大好きな作家だが、この新作はまたまたお
もしろい。まずは「超然」ありき。それをキーワードにして作られた3
つの短編、「妻の超然」「下戸の超然」そして「作家の超然」。同じ超
然でもその超然は三話三様と言っていい
。まずは「妻超(すまん)」、
50にも手が届きそうな妻、夫は浮気をしている。この物語、登場人物や
ら何やらがいちいちおかしい。そして、いろいろいろいろあった後で妻
は「超然」にたどり着く。でも、この超然は情けない超然。とほほの超
然であったのだ。「下戸超(すまん)」は30過ぎの男が主人公。恋人が
出来るが彼女はけっこうな酒飲み。これもラスト近くで「超然」にたど
り着くのだが、これは無意識の超然だ。というか、男と女の意識のズレ
から生まれた超然。それにしても酒飲みのはずの絲山さん、下戸のこと
も男のこともホントよくわかってる。ま、それが作家か。3作の中では
平凡な恋物語っぽいこれが一番おもしろい。そして、問題作である「作
家の超然」。「おまえ」と呼ばれる主人公は作家だ。絲山さん自身と言
っても、まぁいい。そして、この作家はすべてに超然としていたい、で
もそれはできない。この小説はいつの間にか経済学だとかマスコミだと
かの話になり、最後は「文学は長い移動を終えて、ついに星のように消
滅するだろう」などという言葉にまでたどりつく。何だかわかんないが、
何だかスゴい。超然としてはいられない3つの物語なのである。
(No.111)
               ◯ ◯

2010.11.15 あやややや、白鵬なすすべもなく負けちゃいましたね。
今場所はこれからどんどん盛り上がると思ってたのに。相撲協会にとっ
てもこの負けは痛すぎるよなぁ。それにしても九州、入りが悪い。

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車好きにはたまらない!? 絲山秋子の「スモールトーク」。

スモールトーク (角川文庫)スモールトーク (角川文庫)
絲山 秋子

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 自慢じゃないが免許は持っていない。車に興味がないのって何だかち
ょっと男としては欠陥があるみたいな感じもするのだが、どうだろう?
まぁ、それはそれとして「スモールトーク」である。かなりのカーマニ
アである作家絲山秋子が書いた、車をテーマにした連作小説だ。

 主人公ゆうこの元に昔の男がオレンジ色のTVRタスカンに乗って現れ
る。その美しく、いかがわしい車に魅せられ、「乗れよ」の声に押され
るようについつい中に滑り込んでしまうゆうこ。そこから物語は走り始
める。カマキリと呼ばれるその昔の男は、次にジャガーのXJ8、その次
はクライスラーのクロスファイアと車を変え、なぜかそのたびに彼女の
元にやってくる。よりを戻したいのか何なのか?この2人のくされ縁み
たいなやりとりが何ともおもしろい。車談義もわからないなりに楽しい。
車好きにはこれ、ちょっとたまらないんじゃないだろうか。ラストも気
持ちよく、さすが絲山秋子だ。車エッセイも6編収められているが、彼
女がINAXの営業だった頃、自分好みに営業車のカローラバンをチューン
ナップしていく話がやたらとおもしろい。ホントに車好きなんだなぁ。
(No.104)

               ◯ ◯

2010.10.28 最近、秋の花粉症である。目がかゆい。来春は花粉が10
倍飛ぶなんて書いてあったが、秋はどうなのよ?なんだか例年よりもひ
どいような気がするぞ。

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別れてしまった男女のラブストーリー、「ダーティ・ワーク」。

「ばかもの」を思い出させるラスト、ほのかに見える希望が素晴らしい。

ダーティ・ワーク (集英社文庫) (集英社文庫 い 66-1)ダーティ・ワーク (集英社文庫) (集英社文庫 い 66-1)
絲山 秋子

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 絲山秋子はやっぱり巧い。「ダーティ・ワーク」は全7編からなる連
作短編集。といっても、実際に連作だと気がつくのは何編か読んでから
だ。書名を含め、各短篇のタイトルはストーンズの曲名が使われている。

 最初の物語がまずいい。ちょっと男っぽい外見のギタリスト熊井は、
自分のことを持て余すような日々を生きている。そんな彼女がいつも思
うのが中2の頃から仲間だったベーシストTTのこと。自分の間違いから
大学の時に別れてしまった彼のことが熊井は今でも好きなのだ。そして、
彼のことをいつも心配している。そんな彼女が健康診断を受け…。最終
話にたどり着くまでに、いろいろな人物が登場する。2話では貴子とい
う女とその恋人辰也、兄嫁の麻子、3話は遠井という男と悪性リンパ腫
で入院している美雪。4話以降ではそれらの人物とさらにつながりのあ
る別の人物が出てくる。出会ったり、別れたり、友人だったり、兄弟だ
ったり、そんなつながりと登場人物一人一人がきちんと描かれ、本当に
リアルなストーリーに仕上がっている。いくつかの伏線とちょっとした
仕掛けがあり、それが物語をさらに味わい深いものにしている。

 この小説に登場する様々な男女、彼らは人生をうまく生きることがで
きない人間たちだ。そういう若者たちの物語、ということもできるのだ
が、最終話を読み、これは結局、1話に出てきた熊井とTTのラブストー
リーなのだと確信した。ラストは本当にグッと来る。絲山の名作「ばか
もの」の最後につながるようなラスト。ほのかに見える希望が素晴らし
い!(No.92)
               ◯ ◯

2010.9.25 今朝なんかはちょっと寒すぎるぐらい。なんだかなぁ。日
本政府もなんだかなぁ。「ダーティ・ワーク」が終わり「獣の奏者」の
外伝を読み始める。これがまたいいんだぁ。

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絲山秋子すごし!「海の仙人」は何度も何度も読みたい小説だ!!

孤独をしっかり受け止め愛だけに逃げ場を求めていない男女の物語。

海の仙人 (新潮文庫)海の仙人 (新潮文庫)
絲山 秋子

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 このブログではすでに「ばかもの」を紹介しているが絲山秋子は時代
を代表する作家である。発表される一作一作がクオリティが高く、読み
応えがある。読んだことがない人はぜひぜひ読んで欲しい。

 さて、「海の仙人」。文庫になって読んだのだが、160ページぐらい
の薄いものだし、あまり期待もしないで読み始めたら…。いやいやいや、
この人は本当に大変な人だわ。芥川賞でもノーベル賞でもなんでもあげ
てください(芥川賞はもうもらってる!)。こんな中編でこんな奥深い
物語を紡ぎだせる作家はそうそういない。しかも、難解さはみじんもな
いのだからすごい。

 主人公の河野が宝くじに当たって隠遁生活を始めていたり、「ファン
タジー」という出来損ないの神様が登場したりと、リアルな話ではない
のだけれど、そこから立ち上がってくる主人公たちの孤独はあまりに深
くせつない。主人公河野と彼を愛する2人の女性、中村かりんと片桐妙
子。それぞれがその孤独をしっかりと受け止め、愛だけに逃げ場を求め
ていないのが、気持ちいい。せつなくて哀しいけれど、愛おしくなるよ
うな日々がそこにはある。そして、その先には…。

 ラストはなんだかほんとにかっちょいー。涙でるなぁ。何度も何度も
読み返してみたくなる物語だ。
               ◯ ◯

2010.7.20 ちょっとちょっとちょっと、これは暑過ぎるだろう。あま
りに反則だろう。こういう時に限って仕事がある。ま、仕事をしてれば
暑さもまぎれる、ってことがないこともない。それにしてもなぁ…。

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絲山秋子「ばかもの」は恋愛小説の傑作である!!

不器用な男と女、彼らは生きたいと願い、愛したいと思った。
 絲山秋子という小説家の素晴らしいところ、それは文体をそれぞれの
内容に合わせてガラリと変えてくること。リアルなストーリーの中にも
どこか不思議さが漂っていること。いずれにしても彼女が時代を代表す
る小説家の一人であることは間違いない。

 さて、「ばかもの」である。主人公の2人、ヒデと額子は2度出会う。
若い頃の最初の出会いはただただ互いが欲しかっただけ。そして10年以
上たった2度目の出会い、それもやはり互いが欲しかっただけ。でも、
その「欲しがりよう」がまるで違うのだ。絶望しそこから何とかはいあ
がり、ふたたび求め合った2人。男はアル中になり、女は片腕を失い…。
それでも2人は生きたいと思い、愛する人を必要とし、不器用ながらも
互いを求めた。その結果としての再会。

 ラストの川のシーンが何ともいい。笑い声とかすかな希望、命の躍動、
本当に本当に少しだけど明日への希望が生まれた男と女。その明るさが
そこまで読んできた読者を救う。ヒデが時々口にする「想像上の人物」
というのがすごくおもしろい。その不思議さも物語に奥行きを生み出し
ている。

ばかもの
4104669032

◎「ばかもの」は2010年10月1日、新潮文庫で文庫化されました。
ばかもの (新潮文庫)
絲山 秋子
410130453X


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