カズオ・イシグロ no.27        

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【書評】カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」

◇人は記憶に支配されているのか、それとも。
忘れられた巨人忘れられた巨人
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro

早川書房 2015-05-01
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 読みだしてすぐにとまどった。とまどったまま読み進めていくと、何
だかトールキンの「ホビットの冒険」でも読んでいる気になってしまっ
た。カズオ・イシグロ久々の長編小説の舞台は、なんとアーサー王統治
後のブリテン島。伝説の世界だ。ううむ。とはいえイシグロはこれまで
もSF的な「わたしを離さないで」など様々なスタイルで小説を書いて
いる。だからまぁこういうファンタジー的な物語でも驚いちゃいかんの
だ。でも、やっぱり…。というわけで、ちょっとノロノロの読書になっ
てしまった。

 「忘れられた巨人」の主人公はアクセルとベアトリスの老夫婦。小さ
な村に住む2人は息子に会うために旅に出る。しかし、この村、いやこ
の国自体が「健忘の霧」に覆われていて、誰もがいろいろなことをハッ
キリと思いだせないでいる。アクセルたちも息子がなぜ自分たちの元を
去ったのかその理由さえわからない。旅の先では本当にいろいろなこと
が起こる。そして、この霧の原因もわかるのだが…。

 これは記憶にまつわる物語であり、老夫婦の愛の物語でもある。霧は
すべての記憶を覆い隠す。良い記憶も悪い記憶も。この霧が晴れた時、
ブリトン人とサクソン人という2つの民族がかつて憎しみ合っていたら
しいこの国は、いったいどうなるのか。いろいろと事情がありそうなア
クセルとベアトリスの2人はどうなるのか。ベアトリスは言う。「途中
どんな紆余曲折があっても、(中略)アクセルとわたしは一緒に人生を
思い出します」と。愛も憎しみもすべてを包み込んだ記憶。人は記憶に
支配されているのか、それとも記憶によって救われているのか。
(No.338)

◯カズオ・イシグロのその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2015.10.2 ありゃりゃ、10月になっちゃった。ヤクルト優勝かぁ。
パチパチパチ…。読書は池井戸潤「下町ロケット」!

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【書評】カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」

「世界名作文学全集」に入るレベルの完成度の高さ。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
土屋政雄

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 解説で柴田元幸氏がこの小説は「細部まで抑制が利いていて、入念に
構成されていて、かつ我々を仰天させてくれる、きわめて希有な小説」
と書いている。カズオ・イシグロの最高傑作と言われるこの長編は本当
にすごい小説だ。ただ、その抑制の利いた文章に最初はいらだつ人がい
るかもしれない。しかし、この文章があってこそ主人公たちの哀切な青
春が見事に浮かび上がってくることも確かなのだ。

 そして、その内容。これもちょっと言うことができない。そんなに終
盤ではなく、主人公たちが何者なのかはわかるのだけど、やっぱりこれ
はまっさらな、何も情報がないままで読んだ方が絶対にいい。そういう
物語だ。たとえばここに登場するのは「提供者」と呼ばれる人々、彼ら
を助ける「介護人」、「保護官」と呼ばれる教師たち。主人公は「提供
者」たちがいる施設ヘールシャムの生徒であるキャシー・H(彼女は後
に優秀な介護人になる)、その親友のルースとトミー。青春のただ中を
生きる彼らを待つ残酷過ぎる運命とは…。ルースが探す「ポシブル」と
は…。この物語はSF的な要素を含みながらもその完成度はまさに「世
界名作文学全集」に入っている作品のようだ。淡々としながらも深くせ
つないラストがたまらない。

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【書評】カズオ・イシグロ「夜想曲集」

吐息のように音楽が流れる!カズオ・イシグロ初めての短篇集。
 カズオ・イシグロは世界がその最新作を待ち望む作家の一人だ。「夜
想曲集」と名付けられた初の短編集は「音楽と夕暮れをめぐる五つの物
語」という副題が付いている。各話の主人公は往年の名歌手や無名のミ
ュージシャン。彼らは何らかの問題を抱えている。

 そんな音楽家たちにからんでくるもう一人の人物がいる。その関係が
なかなかおもしろい。例えば、往年の名歌手の物語にはカフェバンドで
ギターを弾く共産圏出身の男が、離婚の危機を迎えている夫婦の物語に
はスタンダードジャズを愛する定職を持たない男が、無名ながら才能を
感じさせるチェリストの物語には自らの才能を守るためにチェロに触れ
ることさえしない中年女がそれぞれ登場する。どの話も出てくる人物は
少なく、会話中心に物語は進んでいく。さすがイシグロというか、まっ
たく飽きさせないし、先の展開が気になりページを繰るのももどかしい。

 5つの短篇を通して読むとこれは結局、コミュニケーションと才能の
物語なのだと気がつく。才能のあるものとないもの、成功したものとそ
うでないもの、彼らは互いを理解できたのか、できなかったのか、それ
とも理解しようとしなかったのか。物語のバックでは吐息のように音楽
が流れ、なんともせつない。巻を置いてもその音は頭の中でいつまでも
いつまでも流れ続けているような気がする。

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
土屋政雄
4152090391


◎「夜想曲集」は2011年2月4日、ハヤカワepi文庫で文庫化されました。
夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro 土屋 政雄
4151200630


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