ジュンパ・ラヒリ no.35        

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【書評】ジュンパ・ラヒリ「べつの言葉で」

◇彼女はなぜ今までの言葉を捨てなければならなかったのか?
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ジュンパ ラヒリ

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 このエッセイ、すこぶるおもしろい。「その名にちなんで」「見知ら
ぬ場所で」などの世界的作家ジュンパ・ラヒリは、ベンガル人の両親を
持ち、アメリカで育った。ベンガル語は話せる程度、英語はパーフェク
トに話せて、小説も英語で書いているのだが、この2つの言葉は「仲が
悪い」と彼女自身は感じていた。そんなラヒリが2012年にイタリアに
移住する。住むだけではない。彼女はイタリア語で物語を書くことを決
心したのだ。

 周囲は当然、反対する。しかし、彼女にとってこれは「人生における
英語とベンガル語の長い対立から逃れること」なのだ。ううううむ、な
んだかスゴい…。このエッセイは移住までの顛末とイタリアに暮らし始
めてからの諸々がイタリア語で書かれている。もちろん、言葉の問題を
中心に。

 印象的なエピソードがある。イタリアで開かれる文芸フェスティヴァ
ルにイタリア語で小文を寄せた彼女が、その英訳をも自ら書くことにな
る。しかし、それがうまくいかない。彼女は「自分の英語の豊かさ、強
さ、しなやかさに圧倒される」のだが、同時に「生まれたばかりの赤ん
坊のように抱きかかえているわたしのイタリア語を守りたい」とも思う
のだ。

 これまでの彼女の小説は自らのアイデンティティーを探すために書か
れたものだった。イタリア語で書くことで、もうそういうテーマから開
放されるのではないか。もっと魂の深淵に触れるような作品が生まれる
ような予感がする。収録された2編の掌編にはすでにその萌芽がある。
ジュンパ・ラヒリの次の小説がとてもとても楽しみだ。(No.356)

◯ジュンパ・ラヒリの小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.4.25 トカラ付近で小さな地震が続いてるのが気になる。北海道
の補選、善戦したけれど…。読書は宮下奈都「羊と鋼の森」。

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【書評】ジュンパ・ラヒリ「低地」

まさに「人生」を描いて見事な物語。今年のベスト候補だ。

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ジュンパ ラヒリ Jhumpa Lahiri

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 これは今年のベストかもしれない。「停電の夜に」「見知らぬ場所」
「その名にちなんで」、どれもが素晴らしいジュンパ・ラヒリの最新長
編。その帯には「殺された弟。その妻とともに生きようとした兄。」と
ある。

 年子としてカルカッタで生まれたスバシュとウダヤン、仲の良い兄弟
として育ったが、ウダヤンはインドの革命運動に参加し、身重の妻ガウ
リの目前で射殺される。留学先のアメリカから戻ったスバシュは実家に
いる弟の妻を両親から守るため、彼女と結婚しアメリカに連れ帰ること
を決意する。なかなかすごい話だが、物語の重点は実はこの後にある。

 一人の男の死によって、彼らの人生は一変する。どちらもウダヤンの
死に心を残していて、吹っ切れることがない。特にガウリは、夫の死を
ずっとずっと引きずったままだ。彼女は、元々哲学に興味があり、最終
的にはカリフォルニアの大学で教えることになるのだが、そこには夫で
あるスバシュも娘ベラの姿もない。その残酷な決断が哀しい。

 そうするしかない、そうすることでしか生きられない。

 結局、ウダヤンの死は娘ベラの人生さえも変えてしまうことになる。
ある死、ある事がきっかけでその後が変わる。そのことにからめとられ
てうまく生きることが出来ない。それはけっしてこの物語の家族だけの
ことではないだろう。それが人生だ、ということも言えるのかもしれな
い。そういう意味では、まさに「人生」を描いて見事な一編!晩年のス
バシュとガウリ、最後に少しだけさす薄明かりが救いだ。

 短いセンテンスを積み重ねていくラヒリの文章がとてもいい。時の経
過をフラッシュバックのように描いていて素晴らしかった。(No.309)

◯ジュンパ・ラヒリの他の小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2014.12.1 昨日、若いコピーライターの友人と会う。親が僕より若い
ことを知りア然。読書は窪美澄「水やりはいつも深夜だけど」。

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移民家族の普通の人生、ジュンパ・ラヒリ「その名にちなんで」。

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ジュンパ ラヒリ Jhumpa Lahiri

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 「停電の夜に」という短編集で新人ながらピュリツァー賞を取ったイ
ンド系の女性作家ジュンパ・ラヒリ。このブログでは「見知らぬ場所
という短篇集を紹介している。この「その名にちなんで」はラヒリの初
めての長編でこれもすごく良かった。

 ひと言でいえば、この小説はインドからアメリカに渡ってきた移民家
族の物語である。タイトルの「その名」というのは一家の長男、主人公
であるゴーゴリの名前のことだ。列車事故に巻き込まれた父の命を奇跡
的に救った「本」の著者が、あのロシアの作家ゴーゴリで、なんだかん
だあって、それが彼の名前になるのだ。最初はアメリカに渡った両親の
話、そして、ゴーゴリのストーリーへと物語はバトンタッチされていく。
ある意味これは、普通の移民の普通の人生のストーリーだ。まぁいろい
ろとエピソードはあるけれど、劇的なことは何も起こらない。ゴーゴリ
は恋をし、結婚をし、父との別れも経験し、そして、最後は…。

 ラヒリが優れているのはどんなことでも描写がこまやかであること。
それは普通ならば「リアリティ」という話になるのだけど、この小説の
場合、細部を描くことで、俯瞰してみれば全体が美しい人生の模様にな
っているという感じがする。ラストのゴーゴリの述懐がなんともいえず
素晴らしい。一家の過去、現在、未来がすべてそこで見えてくるような
その語りの優しさ。う~ん、とてもとてもいいです。(No.137)

               ◯ ◯

2011.2.27 あ、すみません。妻の裂き織り、新作が出来ました。こち
で公開しています。ぜひ一度見てみてください。お徒歩ショルダー、
ぽちバッグ、織り花(ブローチ)などなど、どうぞよろしく。

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静かに語られる愛の物語、ジュンパ・ラヒリ「見知らぬ場所」。

異国に生きる人々を通して描かれる普遍の愛!

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Jhumpa Lahiri

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 「停電の夜に」「その名にちなんで」で世界にファンを作ったインド
人の女流作家ジュンパ・ラヒリ。彼女の作品はどれもインドからアメリ
カに渡った人々が主人公だ。この短編集「見知らぬ場所」では、父と娘、
母と叔父、姉と弟などファミリーの間の出来事がいつもと同じ静かな筆
致で描かれている。発端に「死」が用意されていることもあるけれど、
実際に描かれているのはそれ以降の話。普通の人々の普通の人生の普通
の日常の話だ。ラヒリはいつも同様、細部をしっかりと描き、微妙な心
の揺れをとらえ、その結果として異国に生きる人々の「愛」の物語を紡
ぎ出している。それは、大甘ではないちょっとビターな愛、しかも、人
種や国を超越した普遍の愛だ。

 2部構成で、第1部は5つの短篇、第2部は連作3部作である「ヘー
マとカウシク」。幼い頃に出会った2人が、一度離れ、再会する物語。
30年の間の出来事を3つの短篇で描いているのだけど、まさに30年を
実感するようなストーリーに仕上がっているのが素晴らしい。重いが
どこか救いがあるラストも心に残る。ジュンパ・ラヒリ、もし未体験
ならば、ぜひとも読んで欲しい作家だ。

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