飯嶋和一 no.37        

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江戸の昔、男は空を飛ぼうと願った。飯嶋和一の傑作「始祖鳥記」。

綿密な考証と大胆な創作で描く、鳥人幸吉の物語。

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 「始祖鳥記」、これは江戸・天明の頃、空を飛ぼうと夢想し、それを
実現しようとした男の話だ。所は備前岡山。男の名前は幸吉。物語はこ
の幸吉が捕らえられるところから始まる。以前から城下で話題だった怪
鳥鵺(ぬえ)の正体はこの男だという。巨大な翼を持つその鳥は「イツ
マデ、イツマデ」と鳴いて藩の失政をあざ笑い、空を飛んでいたのだ。
3部構成の第1部はそこから時代をさかのぼり、凧揚げが好きで手先も
器用だった幼い頃の幸吉のこと、一度空を飛ぼうとした時のことなどを
こまやかに描いてゆく。

 見事なのはここからで、第2部はまったく別の男たちの話になる。地
廻りの塩問屋、巴屋伊兵衛。弁財船の船主、福部屋源太郎。2人は結託
し、粗悪な塩の専売を許す幕府に一泡吹かせようと新たな塩ルートを開
拓している。彼らがどう鳥人幸吉と結びついていくのか、ここがこの本
一番のポイントだ。そして、話は怒濤の第3部へ。大団円になるラスト
で幸吉がつぶやく言葉は涙なしには読めない。ただただ空を飛びたい、
と思い続けた男の最後の言葉。う~~~ん。

 ライト兄弟より百年以上も前に空を飛んだというこの男は実在したら
しい。飯嶋和一は綿密な考証と大胆な創作で、ひとりの男の一生を浮き
彫りにした。もうこれは見事というしかない傑作!

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