西川美和 no.45        

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【書評】西川美和「永い言い訳」

◇しょうもない小説家が妻の死を通して気づく人生の痛恨!
永い言い訳永い言い訳
西川 美和

文藝春秋 2015-02-25
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 映画監督でもある西川美和、小説家としての成長を感じさせる見事な
一編だ。主人公は「衣笠幸夫」だという。のっけからカウンターパンチ
だ。その名前の話から始まるこの物語はしばらくはどこに向かって進む
のか行方がわからない。読み進めると、なんと幸夫の妻夏子がバスの事
故で死んでしまう。小説家・津村啓でもある幸夫は身勝手極まりない男
で、しかも夏子との間は完全に冷め切っていた。それでも「妻を亡くし
た悲劇の小説家」を演じたりもするのだが…。

 大きな転換点が訪れる。夏子の友人で共に事故死したゆきの家族、大
宮陽一と真平・灯兄妹との出会いだ。忙しいトラック運転手の陽一に代
わって兄妹と接しているうちに幸夫の心に今までとは違う感情が芽生え
てくる。彼には夏子を亡くした喪失感などない。だって、愛してなかっ
たんだもん。でも、幸夫は物語の終盤で「愛するべき日々に愛すること
を怠ったことの、代償は小さくはない」ことに気がつく。夏子としっか
りと向き合わなかったこと、自分のことだけしか考えて生きてこなかっ
たことへの痛恨!悔恨!彼は最後に「人生は他者だ」と気づき、初めて
夏子の死を悲しむのだ。

 西川美和は一人称、三人称と語り口を変え、さらに語る人を代えなが
ら、このしょうもない小説家の変化を立体的に描いていく。映画がよく
て小説も素晴らしくて、困っちゃうなぁ西川美和!あ、で、これ、彼女
自身が映画化するらしい。観たいぞ、観たいぞ、早く観たいぞ。
(No.343)

◯西川美和の他の作品の書評はこちらです。
※一番上にはこのページがでます。 
◯映画「永い言い訳」のサイトはこちら。とい ってもこれはまだ情報がなにもないのでこちらを。
            ◯ ◯

2015.11.17 またまたリライトの仕事が舞い込むが科学分野でなかな
か難しい。ちょっとプレッシャー。読書は長野まゆみ「冥途あり」。

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あの戦争を身近に感じる「その日東京駅五時二十五分発」。

その日東京駅五時二十五分発その日東京駅五時二十五分発
西川 美和

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 「夢売るふたり」の公開が迫っている西川美和監督の最新小説。タイ
トルだけでは内容がわかりにくいが、先の戦争の物語だ。1945年8月
15日、東京発のこの列車に乗り主人公の吉井は友人と共に西に向かう。
終戦のこの日、彼は故郷である広島に帰るのだ。吉井にとっての「戦争」
は一風変わったものだった。戦争末期に召集された彼は、陸軍情報の根
幹を握る東京の通信隊本部に配属される。そこで広島に「しんがたばく
だん」が使われたことを知り、どこよりも早く敗戦を察知。なんと通信
隊は玉音放送の前にさっさと解散してしまうのだ。

 実はこれ、まったくのフィクションではない、広島出身である著者の
伯父の体験が元になっている。吉井のこんなつぶやき、「ぼくは国家と
か民族とか、そんなものにほぼ何の関心も無い。ただ、怖い目にあわず
に、小さな安全を確保された場所で、ひっそりと自分の生活を守ってい
られればそれでいい」。戦争らしくない戦争体験と弱っちい通信兵であ
る主人公。だからこそ、これを読む僕らは彼がいる場所と地続きのとこ
ろにいる自分を感じる。彼の中に人間を感じ、戦争というもの、そこに
いた人々を身近に感じることができるのだ。

 広島に到着した吉井が見た故郷。その感慨が胸に迫る。同時に広島弁
で交わされるある姉妹との会話に人間のたくましさを感じる。あとがき
で、著者はこの小説は3.11と前後して書き進められたものだと語り、震
災を経験しなければ「全く別のものに仕上がっていた」と書いている。
伯父とのいきさつも綴られたこのあとがきも含めてこれは一つの物語で
ある。(No.211)
               ◯ ◯

2012.9.6 まだまだ暑いのに雨が降って、窓を閉め切っておかなくちゃ
ならないなんて、何ということでしょう。こんな時、ノーエアコンはつ
らい。読書は宮部みゆき「ソロモンの偽証 第一部」に突入。ドキドキ。

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映画からこぼれ落ちた物語、西川美和「きのうの神さま」。

映画とは無関係、しかし、おもしろさは抜群!

きのうの神さまきのうの神さま

ポプラ社 2009-04-16
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 「きのうの神さま」というこの短編集、一編を除けば映画と同じく
医療に携わる人々の物語だ。「ディア・ドクター」という話もあるの
でまぎらわしいが、映画とは基本的には関係がない。作者が最後に書
いているように、これは映画の取材でこぼれ落ちた「様々なエピソー
ドや人々の生き方を」小説として蘇らせたものなのだ。映画の原作的
な物語も読みたい気はするが、これはこれでスゴくおもしろい。

 西川映画のファンならば5つの短編のうち最後の「満月の代弁者」
に強く惹かれるだろう。彼女の映画の魅力は、なんといっても虚実が
ない交ぜになったストーリーだ。虚が実であり、実が虚であり、結局、
あいまいなまま…そのスレスレの感じがたまらない。さて、「満月の
代弁者」。古い港町から都会に戻る若い医者がお別れに患者の家をま
わっている。そのうちの一軒、そこには92歳の患者と彼女の面倒を見
る30代後半の孫娘がいる。その家で医者は孫娘にちょっとしたウソを
つく。「早く逝きたいよ~」とうそぶく92歳、女盛りで仕事もできる
アラフォーの孫娘。医者が彼女にささやいたのは…。いやぁ~楽しい。
2人のアブナいやり取りがたまらない!ラストも素晴らしくまさに西
川ワールドだ。セリフのうまさもさすがで、西川美和の才能を再確認
できる短編集といえる。

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