沢木耕太郎 no.47        

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【書評】沢木耕太郎「流星ひとつ」

◇若き藤圭子の魅力を見事に浮き彫りにした傑作ノンフィクション。
流星ひとつ流星ひとつ
沢木 耕太郎

新潮社 2013-10-11
売り上げランキング : 6732

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 これ、去年読んでいたらベスト5には入っていたと思う。1979年、
引退を発表した藤圭子に著者がしたインタビューがこの「流星ひとつ」の
元になっている。当時、刊行することに迷いを感じた沢木は、結局この物
語を発表せず、特別に作った一冊だけを彼女に贈った。

 永遠に葬ったと思っていたその本が復活したのは、言うまでもなく藤圭
子が自ら命を断ったからだ。娘である宇多田ヒカルのコメントを聞いた時、
沢木は思った。藤圭子という女性の「水晶のように硬質で透明な精神を定
着したものは、もしかしたら『流星ひとつ』しか残されていないかもしれ
ない」と。

 以上の話は著者の「後記」によるものだ。本文は地の文はなく会話(イ
ンタビュー)だけで表現されている。しかし、これは雑誌などの「インタ
ビュー記事」とはまるで違う。沢木耕太郎が構成に工夫を凝らし、インタ
ビューする自らの言葉を操りながら作った、まさに野心作だ。そこがまず
素晴らしい。そして、何より感動するのが、28歳の藤圭子が女性として
本当に魅力的なことだ。真っ直ぐで純粋で可憐で大胆!あまりに真っ正直
に様々なことが語られて戸惑う部分もあるのだが、それより何より、彼女
の話に引き寄せられてしまう。

 宇多田ヒカルはこの本を読んだのだろうか? 幼い頃から病が進行して
いくだけの母を見てきた彼女が、母親にもこういうピュアな魂を持った時
代があった、ということを知ることができたならば。それだけでも、この
1冊が世に出た意味は大きいと僕は思う。(No.271)

◯沢木耕太郎のその他の本のレビューはこちらから。        

            ◯ ◯

2014.2.3 フィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなったというニュース
にショックを受ける。いい役者でした。読書は宮部みゆき「ペテロの葬列」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
スポンサーサイト

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

【書評】沢木耕太郎「キャパの十字架」

◇1枚の写真のために十字架を背負った男の人生を追った傑作。

キャパの十字架キャパの十字架
沢木 耕太郎

文藝春秋 2013-02-17
売り上げランキング : 1927

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 カメラマンであるキャパの傑作として名高い「崩れ落ちる兵士」。タ
イトルは知らなくても見れば誰もが「あぁ」とうなずく一枚だ。「ピカ
ソの「ゲルニカ」と並ぶ、スペイン戦争のイコン」と作中で登場人物が
語るその写真には、以前から疑問を呈する声があったという。

 作者は伝記の翻訳がきっかけでキャパへの関心を高め、この写真に対
しては「訳していく過程で小さな疑問が芽生え、やがてそれはみるみる
大きなものになっていった」と言う。彼はその疑問を自分なりに解決す
るために動き始める。最初は同じ場所で撮ったと思われる数枚の写真を
足がかりに。ついには現地まで飛んで。その取材や考察を通じて明らか
になった「真実」。これには本当に驚かされた。え〜っそうなの?そん
なことがあっていいの?

 NHKスペシャルを見た人もいるだろうが、テレビはまず結論ありき
だ。しかし、そこまでたどり着く過程こそがおもしろいので、ぜひ本書
を手に取って読んでみて欲しい。その検証は精緻を極め、おそらく多く
の人にとって納得のいくものであろう。長年ノンフィクションやドキュ
メンタリーに携わってきた作者ならではの観察力、洞察力の鋭さを改め
て感じた。

 ここで明らかになったことは、ある意味「裏切り」というべきものな
のかもしれない。しかし、これは告発の書ではないのだ。「キャパの十
字架」というタイトルでわかるように、この1枚の写真のために十字架
を背負ったキャパという人間がそれ以降をどう生き、死んでいったか。
作者はそれを描くことで、この一冊を見事なノンフィクション作品に仕
上げたのである。(No.236)

◯沢木耕太郎の他の本のレビューはこちらから。 

◎「キャパの十字架」は2015年12月4日、文春文庫から文庫になりま
 した。
キャパの十字架 (文春文庫)
沢木 耕太郎
4167905167

               ◯ ◯

2013.4.17 ボストンはやはりテロなのだな。みんなが心を解放して楽
しんでいる場での卑劣な行為。許しがたい。読書は椎名誠「三匹のかい
じゅう」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。他の書評ブログもここから。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

今僕に旅する力はあるのだろうか?沢木耕太郎「旅する力」。

旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)
沢木 耕太郎

新潮社 2011-04-26
売り上げランキング : 209

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 僕の頭の中には沢木耕太郎と天童荒太と野島伸司が「同類」としてあ
る。彼らに共通するのが、まず結論ありきで、そのためならどんな表現
もいとわない、というところだ。だからなんだか物語が「作り物」めい
てくる。その、作り物めいちゃうけどやっちゃうのよね的な感じがダメ
なのだ。沢木耕太郎は最初の頃はそんなことはなかったんだけどなぁ。
ある時期からこの傾向が強くなった気がしてどうにもイヤになっちゃっ
たのだ。

 さて、今度、文庫になったこの「旅する力」だが、単行本が出た時に
読んで素直におもしろかった。副題に「深夜特急ノート」とあるように
これはあの名作「深夜特急」の最終便として書かれたエッセイだ。そこ
にはデリーからロンドンまでバスで行くというあの旅に至るまでの話、
旅の最中の話、その後日談、そして、彼の今現在が綴られている。沢木
氏の旅の哲学や「深夜特急」では書かれなかった裏話的なものも紹介さ
れていてうれしい。肩肘張らないリラックスした語りなので、こちらも
素直に楽しむことができた。

 旅の適齢期について語った文章が心に残る。彼は言う「かつて、私は、
旅をすることは何かを得ると同時に何かを失うことでもあると言ったこ
とがある。しかし、齢をとってからの旅は、大事なものを失わないかわ
りに決定的なものを得ることもないように思えるのだ」と。う~む。今
の自分に旅する力はあるのだろうか?

 「深夜特急」を読んだ人はぜひぜひ。読んでない人は本編(文庫で全
6冊)を読んでからぜひ。(No.148) 

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)
沢木 耕太郎
4101235058

               ◯ ◯

2011.4.29 そうか、ゴールデンウィークか。フリーランスというのは
あまり大型連休は関係がない。毎日が休みのようであるし、毎日が仕事
のようでもある。そういう日常から逃げ出すには旅に出るといいのだけ
ど、「旅する力」なさそうだしなぁ…。

◎応援クリックぜひぜひよろしく。他の人の書評も読めますよ!

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ


テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

読む者は彼らと共に北壁を登る、沢木耕太郎「凍」!

息苦しいほどのリアリティ!本を離れても2人はそこにいる。

凍 (新潮文庫)凍 (新潮文庫)

新潮社 2008-10-28
売り上げランキング : 54173
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 世界的クライマーである山野井泰史とこれまた女性では世界一とも評
される妻の妙子、希代のクライマー2人が難峰ギャチュンカン北壁登頂
に挑んだ数日間を描いたノンフィクション。それにしても、この克明な
記述は何だろう!2人に聞き書きしてまとめたものを読みながら、さら
に手を入れる、こんな作業を何度も繰り返したのだと思うとめまいがし
てくる。この本を読んでる間、読者は、本を離れている時間でも2人の
ことを忘れることができない。頭の中で彼らは、吹雪の中で垂直に近い
壁に張り付いたままだし、10センチあるかないかのところで立ったまま
ビバークしているのだ。息苦しいほどのリアリティ!

 クライミングのスタイルには多人数でキャンプを作りながら登頂をめ
ざす「極地法」と少人数あるいは単独で酸素ボンベも持たず一気に山頂
を目指す「アルパイン・スタイル」があるという。山野井の登り方は後
者だ。極地法にもドラマはあるだろうが、それは人間ドラマだろう。一
方、アルパインスタイルの場合は、自然とのドラマなのだ。より自由だ
がより厳しいスタイルでの登頂を目指す山野井夫妻、だからこそ、僕ら
は2人に強い共感を寄せ、彼らと共に北壁を登る。文句なしの傑作!!

ランキングに参加中、押していただけるとうれしいです。他の本の情報もここから!

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

プロフィール

オクー

Author:オクー
コピーライターであるようだ。
吉祥寺にいるようだ。
そんなに若くはないようだ。
犬ブログもよろしく!

okuuuをフォローしましょう
更新情報はツイッター
フェイスブックで。
Akihiko Okumura

amazon
電子書籍で探す!
映画・ドラマなら
News
最新記事
お気に入りリンク
ブログランキング
blogram投票ボタン
カテゴリ
RSSリンクの表示
ブログ村
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。