■た行の作家 no.72        

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【書評】津村記久子「エヴリシング・フロウズ」

◇心も人間関係も漂うように過ぎていく。
エヴリシング・フロウズエヴリシング・フロウズ
津村 記久子

文藝春秋 2014-08-27
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 津村記久子は本当にいい。タイトル、これ何と訳すのがいいのかなぁ、
と思いながら読んでいたら最後の最後に答えがあった。「すべては漂っ
ている」、この言葉で物語は終わる。「エヴリシング・フロウズ」は、
まさにタイトル通りの物語だ。

 中3生のヒロシは絵を描くのが好きだけれど、すべてのことに自信が
持てない男子だ。といっても頭のなかではいろんな思いが渦巻いている
のだが、そのことをうまく言葉にすることが出来ない。級友である野末、
ヤザワ、大土居…ヒロシは彼女が好きなのか?彼とは親友なのか?彼女
と妹をどうしたいのか?ヒロシの周りにいるのは群れたりしない男子女
子ばかりなのだが、彼らとの関係も何だかあやふやなままだ。事件みた
いなこともあるけれど、彼はできることをできる範囲でやるだけだ。受
験に対してもすごく気合が入ってるわけではない。

 主人公のこのフラットな心が何だかとてもいい。心も人間関係も漂う
ように過ぎていく。自分みたい、と共感するのは学生だけではないだろ
う。社会人だってヒロシみたいな人間は多い。作者はそういう人たちを
肯定している。というか「ま、こんなもんですよ。いいんじゃないです
か」と言ってるような気がした。津村記久子、今まで一冊しか読んだこ
とがないのだけど、全部読みたいなぁ、ううむ。(No.303)

◯津村記久子のその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.10.16 東京地方、なんだか急に寒くなった。マフラーしてる人
もいた。読書は松家仁之「優雅なのかどうか、わからない」。

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【書評】辻村深月「島はぼくらと」

◇これは、青春小説にとどまらない深くて大きな物語。
島はぼくらと島はぼくらと
辻村 深月 五十嵐 大介

講談社 2013-06-05
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 最初は青春小説だと思った。表紙もあの五十嵐大介が描いたこんな感
じだし。「島はぼくらと」は、確かに青春を描いた小説ではあるのだけ
どそれだけにはとどまらない深くて大きな物語だった。舞台は瀬戸内に
浮かぶ本土とはフェリーで20分ほどの距離の冴島。主人公は同学年が
島に4人しかいない高2生、朱里と衣花、そして、源樹と新だ。島に高
校がないので4人は毎日本土へと通っている。

 冴島はIターンの居住者を積極的に受け入れている。シングルマザー
もたくさん島にやってくる。そういう島だからこそ起こる物語がここに
はある。島に伝わる「幻の脚本」を探しに来た男、すべてを捨ててこの
島に移住してきた「銀色のマーメイド」蕗子、皆から愛される地域活性
デザイナー・ヨシノ、彼らの話は朱里たちや島の人々の心にさざ波を起
こす。

 ヨシノのテレビ出演の話を境に、物語はさらに大きな展開を見せる。
島の住民、Iターンの人々、若者に大人、彼らのいろいろな思いや人生
がその中で交錯する。後半、朱里のおばあちゃんの親友探しが、朱里と
衣花、2人の友情の話へシンクロしていく構成がうまい。彼女たちの熱
い想いに思わず涙する。エピローグとして語られる26歳の2人。この
サプライズのなんとも素晴らしいこと!さすが昨年の話題作だ。今年発
売だったらマイ・ベストに入れたくなる傑作小説。(No.299)

            ◯ ◯

2014.9.15 世間は3連休ね。フリーランスにはあまり関係がない。読
書は中原清一郎「カノン」。なんだかすごい話だなぁ。

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「言葉のめぐり」がぐんと良くなる「土屋耕一のことばの遊び場。」。

土屋耕一のことばの遊び場。土屋耕一のことばの遊び場。
土屋耕一 和田誠

東京糸井重里事務所 2013-05-11
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 伊勢丹の「なぜ年齢をきくの」資生堂の「サクセス、サクセス」など
を手がけ、まさにコピーライターの先達といえる土屋耕一さん。糸井重
里編の「ことばの遊びと考え」、和田誠編の「回文の愉しみ」という函
入り2分冊で、彼が残した「ことばの仕事」と「ことばの遊び」をまと
めたのがこの本だ。これ、特に言葉に関係した仕事をしてる人にすすめ
たい。いや、ただ勉強になる、というのではない。この2冊を読んでな
んだかんだとやってみると、血のめぐりならぬ「言葉のめぐり」がよく
なるのだ。これがなんともうれしい。

 たとえば「回文の愉しみ」、ここには回文だけではなく「替え句」や
「替え句掛け解き」「いろは文字ぐさり」「武玉川」など多彩な言葉遊
びが紹介されていて、土屋さんが実演?してくれている。「替え句」は
アナグラムのことね。「すいか」を入れ替えて「いかす」とか「スカイ」
にする遊び。「替え句掛け解き」はただのアナグラムじゃなくて、出来
たものに関連付けが必要。たとえば「田中角栄」を「高く買えない」、
「耳鼻咽喉科」を「美人開口」とか。僕も作ってみた。編者である「糸
井重里」は「才と至芸と」、おもしろいでしょ?もちろん、回文につい
ても実技講座でじっくりと教えてくれる。

 こういうことやってるとホント言葉のめぐりがよくなってくるんだよ
ねぇ。ふふふ。「ことばの遊びと考え方」は言葉をめぐるエッセイとコ
ピーの話。とても役に立つ。というわけで、これ、少し高いけれどおす
すめの一冊、いや二冊だ。(No.242)

               ◯ ◯

2013.6.15 やっと梅雨らしい天気になって来ましたね。西日本はヘンに
暑いようだけど。読書は伊集院静「逆風に立つ」。

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ボヤッとしたリアル感がいい津村記久子「とにかくうちに帰ります」。

とにかくうちに帰りますとにかくうちに帰ります
津村 記久子

新潮社 2012-02-29
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 いやぁ、津村記久子っておもしろいなぁ。これは「職場の作法」とい
う大タイトルがついた4つの連作短編と「バリローチェのファン・カル
ロス・モリーナ」、表題作「とにかくうちに帰ります」が収められた作
品集。前の2つは同じ職場の同じ人々が主人公で、僕は表題作よりこち
らの方を随分とおもしろく読んだ。

 先輩である田上さんと浄之内さん、そして語り手である鳥飼嬢。「職
場の作法」で語られるのは地理情報会社で働く女性たちの日常だ。それ
は、たとえば、田上さんの自らのルールにしたがった仕事の進め方だっ
たり、浄之内さんにちょっかいを出す部長の話だったり、人の持ち物を
平気で失敬しちゃう定年前のおじさんの話もおもしろい。「バリローチ
ェの〜」は、アルゼンチンの地味なフィギュアスケート選手をめぐる鳥
飼嬢と浄之内さんの静かなバトル…。

 この2編は、職場とその人間関係を描いているのだが、作者独特のユ
ーモアもあり「リアル」な話とはちょっと違う。あるようなないような、
いるようないないような、わかるようなわからないような。この「ボヤ
ッとしたリアル感」が何だかいい。そしてそれは、1本の補助線を引け
ば確実に自分の日常や人生に行き当たる。読みながら、いつの間にか大
したこともないわが人生について考えている自分がいた。ううむ。この
人の小説、もっと読まなくては。

 表題作は豪雨のためバスが停まってしまい、橋を渡り本土の駅まで歩
くことを余儀なくされた人々の話。雨と寒さの中、ただただ家に帰り着
き、暖まりたいと願う彼ら。ここには、非日常の中に日常がある。この
短編でもまた作者のユーモアのある文章が巧みで、豪雨の中、帰りを急
ぐ人々を見事に活写していく。読み終わると不思議なことに元気になる
ような小説。そして、これ、しばらくたつと無性に再読したくなってく
るのだ。(No.210)

◎「とにかくうちに帰ります」は2015年9月27日、新潮文庫から文庫
 になりました。
とにかくうちに帰ります (新潮文庫)
津村 記久子
4101201412

                ◯ ◯

2012.8.29 いったいいつまで暑いのかな?読書は綿矢りさ「ひらいて」
を読了したばかり。あ、そろそろパラリンピックが始まるぞ。


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女は元気になり、男は頭を抱える、田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」

大人の女のしたたかさを見事に描いた傑作短編集。

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

角川書店 1987-01
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 申しわけないが、田辺聖子という作家の本を普通に生きてる普通の男
が手に取る機会ってそうそうないんじゃないか、そんな気がする。僕自
身も読んだのは40代になってから。きっかけは当時「本の雑誌」に小説
家の小川洋子さんが書いた一文だった。そこで彼女は「凄い。こんなに
凄い小説がこの世にあるのを,今まで知らずにいたなんて、私はあまり
に愚かだった」とこの小説を絶賛したのだ。こういうほめほめの評価に
僕は弱い。しかも、小川洋子である。これはもう読むしかない。

 それでも、けっこう軽い気持ちで読み始めたのだが、いやいやいや、
芥川賞作家だもんなぁ。これはもう女の人はノックアウトでしょう。8
編の短編、どれもがおもしろいけど「ジョゼ~」を除いて、主人公は20
代後半から30代、40代の大人の女性。そんな女たちと男たちの物語を田
辺さんは、軽やかな大阪弁でテンポよく綴ってゆく。女性のタイプも愛
のかたちも違う物語なのだが、共通項としてあるのは彼女たちのしたた
かさ。それがなんとも気持ちいいのだ。これを読んだら、女たちは「そ
うや、そうや、ほんまにそうや」とうなずき、なんだか元気になり、男
たちは「う~ん、えらいもん読んでしもた」と頭を抱えてしまう。それ
にしても、こんな小説家読まずにいたなんて…「私はあまりに愚かだっ
た」と当時の僕も確かに思った。

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