■は行の作家 no.74        

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【書評】原田マハ「暗幕のゲルニカ」

◇アートの力とそれを信じる人々の力を描いた傑作!
暗幕のゲルニカ暗幕のゲルニカ
原田 マハ

新潮社 2016-03-28
売り上げランキング : 612

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 名画「ゲルニカ」を巡る2つの物語。1つはピカソが「ゲルニカ」を
生み出す物語。そして、もう1つは9.11で夫を亡くしたMoMA(ニュー
ヨーク近代美術館)のキュレーター八神瑤子が「ピカソの戦争」展を開
催しようとする物語。「暗幕のゲルニカ」では過去と現代、この2つの
物語が交互に語られていく。

 どちらにも背景には戦争がある。ピカソが生きたのは大戦前夜のパリ。
「ゲルニカ」を描くきっかけとなったバスクの都市ゲルニカへの空爆、
ファシズムの台頭、そして、長い戦争が始まり、パリも陥落する。瑤子
が暮らす9.11後のアメリカでは「報復」という名の下、イラクへの武力
行使が始まる。

 ピカソの「ゲルニカ」はパリ万博のスペイン館に展示された後、戦火
を逃れてアメリカに「亡命」する。その後、スペインに民主政権が誕生
するまで長きに渡ってMoMAによって守られ続けた。今はマドリードに
あるこの名画を反戦の象徴としてぜひ「ピカソの戦争」展に持って来た
いと願う瑤子。国連本部ロビーにある「ゲルニカ」のタペストリーが暗
幕で隠された事件を発端に、2つの物語は交錯しながら進んでいく。史
実と虚構をないまぜにしたストーリー作りの巧みさはさすが原田マハだ。

 「ゲルニカ」の亡命に力を尽くしたスペイン名門一族の青年バルド・
イグナシオ、MoMAの財政的・精神的支柱ルース・ロックフェラー、そ
して、ピカソとその愛人ドラ・マール、個性的な人物を配した物語は劇
的なラストへとノンストップで突き進んでいく。スリリングでスケール
の大きな美術サスペンス!アートの力とそれを信じる人々の力を描いて
これはまさにアート小説の傑作、原田マハの最高傑作だ。(No.361)

◯原田マハのその他の小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.6.2 体調は回復基調。それにしても舛添氏…リコールは難しいの
かなぁ。読書は村上春樹「ラオスにいったい何があるというのですか」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

スポンサーサイト

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

【書評】東山彰良「流」

◇フツーにおもしろい小説だ。それ以上でも以下でもない。
流
東山 彰良

講談社 2015-05-13
売り上げランキング : 818

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 これはフツーにおもしろい小説である。「二十年に一度の傑作(北方
謙三)」でも何でもないし「十五年間で一番幸せな選考会でした(林真
理子)」なんて言われても困っちゃう。いくら直木賞受賞の審査コメン
トだからってここまで言うとは…。皆さんどうかしちゃったんじゃない
かしらん。

 舞台は台湾の台北市、1975年の蒋介石の死から物語は始まる。まさ
に国中を揺るがしたその死の後に、主人公である葉秋生の祖父が何者か
によって殺される。第一発見者は17歳の秋生だった。祖父の葉尊麟は、
中国本土での内戦に敗れて台湾へと逃れてきた国民党の生き残りで、ど
うやら本土では悪行の限りを尽くしてきたらしい。そんな祖父の死を心
のどこかに引きずりながら秋生はその青春を生きている。

 この物語がいいのは、喧嘩を通して育っていく友情の物語や幼なじみ
の看護師・毛毛との恋の物語、父や祖父、親戚のおじさん、じいちゃん
たちとの交流の物語、そして祖父の死のミステリーが当時の台北そのま
まに混沌と描かれているところだと思う。この混沌さこそが「流」とい
う物語の大きな魅力だ。そして、それを支えているのは作者の感情表現
の巧みさ、ユニークさだろう。「流」は最終的には祖父殺しの犯人探し
になり、舞台も中国本土へと移っていく。その大団円の見事なこと!う
ん。これはフツーにおもしろい小説だ。それ以上でも以下でもない。過
大評価は逆に作者を貶めることにならないのか。(No.348)

            ◯ ◯

2016.1.18 雪、積もっています。今は雨だけど。雨バンバン降って雪
が溶けないかなぁ。雪かきイヤだぁ。読書は中島京子「長いお別れ」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

【書評】原田マハ「モダン」

◇福島とワイエスの絵をシンクロさせた冒頭作の素晴らしさ。
モダンモダン
原田 マハ

文藝春秋 2015-04-13
売り上げランキング : 12665

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 表紙には「モダン」というタイトルと共に「The Modern」という英
語表記がされている。「The Modern」とはMoMA=ニューヨーク近代
美術館のこと。これは自らキュレーターであった原田マハがMoMAを題
材に書いた5つの物語からなる短編集だ。

 なんといっても最初の「中断された展覧会の記憶」が素晴らしい。あ
の大震災の時に福島の美術館でアンドリュー・ワイエスの展覧会が開か
れていた、という設定。そこにはMoMAから彼の代表作である「クリス
ティーナの世界」が出展されていた。MoMAの理事会はフクシマからこ
の名画を「救出」することを早々に決め、展覧会ディレクターである杏
子ハワードにその任務を委ねた。さて、どうなるのか。桜の季節の福島
での美術館スタッフ長谷部伸子との再会。彼女は杏子にあるものを託し
て…。このラストに僕は涙した。「クリスティーナの世界」にはモデル
がいる。ポリオで足が不自由なクリスティーナ・オルソンという女性。
彼女の不屈な精神と福島の状況がシンクロする。見事な一編!

 さらには、監視員を主人公にMoMAに現れる不思議な訪問者を描いた
「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」、初代館長との幼い頃の思い出
をインダストリアルデザイナーになった男が語る「私の好きなマシン」。
9.11で親友を亡くしたアシスタント・キュレーターの再出発を描く「新
しい出口」、研修員としてやって来た日本人とアシスタントの交流を描
いた「あえてよかった」、どれもがMoMAへの愛、美術館という空間へ
の愛、ピカソやマティスなどの絵画への愛にあふれていてとても良い。
読後、本当に幸せな気分になれる一冊。こういう小説集が賞を取れると
いいなぁ。(No.330)

◯原田マハのその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 
◯「クリスティーナの世界」という絵について

            ◯ ◯

2015.6.27 というわけで、フランス、中国共に善戦するも勝ったのは
ドイツとアメリカ。明日は早朝になでしこと豪州。勝とう!読書は窪美
澄「さよなら、ニルヴァーナ」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

【書評】原田マハ「太陽の棘」

◇戦後すぐの沖縄、画家たちと従軍医の運命の出会いがあった。
太陽の棘(とげ)太陽の棘(とげ)
原田 マハ

文藝春秋 2014-04-21
売り上げランキング : 92738

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 キュレーターであった原田マハの「絵」をテーマにした物語はいつも
興味深い。「太陽の棘」は戦後の沖縄にあった美術村の作家たちとその
絵に魅せられたアメリカ人従軍医の話だ。

 プロローグは現代、84歳になった主人公エドの日常が描かれ、そこ
から静かに60年前の回想が始まる。このプロローグの静謐さがとても
いい。そして、物語は1948年の沖縄へ。大学院を出たばかりで何も
わからないまま精神科の軍医として在沖アメリカ軍に派遣されたエド。
暴力沙汰を起こす兵士の多いタフな仕事の合間、仲間とドライブに出た
彼はそこで運命の出会いをすることになる。

 「ニシムイ・アート・ヴィレッジ」、そこは沖縄の画家たちが集まっ
た美術村。彼らは肖像画やポストカードなど「売り絵」を描きながらな
んとか生計を立て、自分たちの描きたい絵を描き続けている。特にリー
ダー格のタイラはエドの出身地サンフランシスコの美術学校に通ってい
た男で2人は意気投合する。そこから始まるタイラたち画家との密度の
濃い交流。台風による村の崩壊、エドの失言からの絶交、そして、ある
事件が起こり…。「太陽の棘」は、絵を描くことに情熱を傾ける沖縄の
画家たちの真摯さ、粘り強さ、その人間性を活写して素晴らしい。エド
との交流には絵を愛するもの同士の信頼と愛があり、読むものの心を捉
えて離さない。

 これは史実を基に書かれた物語だ。タイラのモデルは沖縄画壇を代表
する画家になる玉那覇正吉。彼が描いたエド(モデルはスタンレー・ス
タインバーグ博士)の肖像画と自画像がこの本の表紙と裏表紙を飾って
いる。彼らの絵をもっともっと見てみたい。(No.302)

◯原田マハのその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.10.8 ノーベル賞、中村教授の「闘い」にはずっと注目していた
のでうれしい。読書は津村記久子「エヴリシング・フロウズ」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

【書評】原田マハ「翔ぶ少女」

◇生き抜くことを選んだ少女のやさしく力強い再生の物語。
翔ぶ少女 (一般書)翔ぶ少女 (一般書)
原田マハ

ポプラ社 2014-01-10
売り上げランキング : 143429

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 夢の様な現実のような心がフワッとするような導入部。しかし、そのや
さしい気分は一瞬のうちに破られてしまう。これは神戸の震災でパン屋を
営む両親を亡くした仁華(ニケ)という少女の話だ。彼女には逸騎(イッ
キ)というお兄ちゃんと燦空(サンク)という妹がいる。一瞬のうちに孤
児になってしまった3人の子供たち。しかも、仁華は脚にケガを負い、自
由に歩くこともままならない。子供たちは、結局、地震の時に助けてもら
ったゼロ先生という心療内科のお医者さんと一緒に暮らすことになる。彼
もまた、震災で妻を失ったのだ。

 復興の日々、仁華はしだいしだいにクラスの中で孤立していく。周囲の
同情がイヤだし、友だちと遊ぶよりゼロ先生と一緒に復興住宅を訪れ、お
年寄りたちと話すことのほうが楽しいのだ。そして、そんなある日…。急
にファンタジーっぽい展開になるので驚く。しかし、これはファンタジー
ではない。仁華の思いの強さ!大切な人を大事に思う祈りのような感情、
そんなもろもろがひとつになり生み出された「物語の奇跡」なのだ。

 心身ともにうちのめされ、立ち直ることなどできないと思ったあの日。
「翔ぶ少女」は、そんな日々から立ち上がり、生き抜くことを選んだ少女
のやさしく力強い再生の物語だ。

 ゼロ先生は佐元良(さもとら)という姓なので、ニケはサモトラケのニ
ケ(ルーヴルにある羽がはえた勝利の女神像)である。しかも、ゼロ先生
に逸騎(イッキ)、仁華(ニケ)、燦空(サンク)という名前。これはさ
すがにやり過ぎだろうと途中まで思っていた。しかし、最後まで読んでみ
ると、このファンタジー的な部分を支えるためにこういう仕掛けが必要だ
ったのだということがよくわかる。原田マハ、さすがである。(No.279)

◯原田マハのその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.4.1 4月になっちゃった。いろいろなものが終わり、いろいろな
ものが始まった。少しやる気になる。読書は吉田修一「さよなら渓谷」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

人と犬との絆の深さを描いた物語、馳星周「ソウルメイト」。

ソウルメイトソウルメイト
馳 星周

集英社 2013-06-05
売り上げランキング : 48188

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 登場する犬の名を付けた7つの物語からなる短編小説集だ。チワワ、
ボルゾイ、柴、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ジャーマン・シ
ェパード・ドッグ、ジャック・ラッセル・テリア、バーニーズ・マウン
テン・ドッグの7話。舞台は著者が住んでいるという軽井沢近郊が多く、
ラストのバーニーズは彼自身が飼っていた犬種らしいので、どうしても
イメージがダブってしまう。

 「ソウルメイト」は、人と犬、犬と人との深い絆を描いた物語だ。登
場する人間たちは決して幸福とは言えない。不幸ではない人間もどこか
心がギスギスしている。妻と娘たちに見捨てられた男、新しい父に慣れ
ることができない小学生、震災で母を亡くしたワインコーディネーター、
離婚寸前の夫婦などなど。彼らのそばにはただそこにいるだけで気持ち
が安らぐ犬たちがいる。犬たちはいつしかそばにいる人間たちの心をと
らえ、魂の交流が始まる。

 特に印象的だったのは、被災地で母の愛犬と再会する「柴」、そして、
死の宣告をウケたバーニーズとの別れを描いたラストの「バーニーズ・
マウンテン・ドッグ」だ。特に最後のこの話は、犬好きにはたまらない。
バーニーズには遺伝性の疾患として「組織急性肉腫」という病気がある
のを初めて知った。それにしても、この別れ…辛すぎる。

 その最終話に登場するフレーズ、「犬は人間の魂の伴侶だ。人は犬を
よく理解し、犬も人をよく理解する。他の種族間には存在しえない深い
絆を持つ」、魂の伴侶=ソウルメイト、愛犬と飼い主との関係は、まさ
にこの言葉に尽きる。そして、彼らとの日々がどれだけ人間を救ってい
るか、この7つの物語を読むことで僕らはそれを確信するのだ。
(No.256)

◎「ソウルメイト」は2015年9月18日、集英社文庫で
文庫化されました。
ソウルメイト (集英社文庫)
馳 星周
408745360X

              ◯ ◯

2013.9.23 うちのジャックは、あまりに元気すぎてドラマチックな小
説になんかなりようがない。読書は綿矢りさ「大地のゲーム」。な、な
んだこれは!

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。
他の書評ブログもここから。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

原田マハのアートの話をもっと読みたい!「ジヴェルニーの食卓」。

ジヴェルニーの食卓ジヴェルニーの食卓
原田 マハ

集英社 2013-03-26
売り上げランキング : 1699

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞を受賞した原田マハ。ニューヨ
ーク近代美術館に勤務し、キュレーターでもあった彼女がまた絵と画家
をテーマにした小説を書いた。「ジヴェルニーの食卓」、直木賞候補に
もなった4話収録の作品集だが、これ、いいなぁ。原田マハ、ずっとこ
ういうテーマで書けばいいのに。もっともっとアートの話を読みたいぞ。

 さて、収録された4つの物語は、どれも印象派とその周辺にいた画家
たちを描いているのだが、彼らの近くにいた女性たちから見た画家とい
うスタイルを取っているのがうまい。身の回りの世話をした女性が語る
マティス、そして友人のピカソ。自らも画家であるメアリー・カサット
が見たドガ。セザンヌをひいきにした画材屋(ピカソもモデルにしたタ
ンギー爺さん)の娘が彼に送った4通の手紙。そして、表題作である最
後の作品は、晩年を共に過ごした義理の娘から見たモネの物語だ。ここ
で描かれているのは、画家たちの狂気であり、貧困であり、焦燥、執念、
老いである。身を粉にして制作を続ける彼らの姿と素晴らしい画家の身
近にいることに至福を感じ、同時代を生きていることを強く意識してい
る女性たちの心を作者は見事に描き出している。4編どれもが心に残る
がマティスを描いた最初の物語が個人的には好きだ。モネの「睡蓮」の
一部を使った装幀もまた魅力的である。(No.251)

◯原田マハ「楽園のカンヴァス」の書評はこちらから。

◯この小説は2015年6月25日に文庫になりました。
ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫)
原田 マハ

by G-Tools


               ◯ ◯

2013.8.12 ヒィーヒィー暑い。夜、眠りが浅く、食欲もなく、ちょ
っと夏バテ気味だ。読書は朝井リョウ「世界地図の下書き」。


【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。他の書評ブログもここから。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

いやいやいや、これはとんでもない!原田ひ香「母親ウエスタン」。

母親ウエスタン母親ウエスタン
原田 ひ香

光文社 2012-09-15
売り上げランキング : 76370

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 いやいやいやぁ、これはおもしろいなぁ。こういう小説を書く女性作
家がいることに僕は喜びを感じる。素晴らしい!とはいえ、この小説、
いったいどこまで紹介したらいいのか。「母親ウエスタン」というこの
タイトル! その意味を説明すれば、なぁ〜るほど、となるのだけど…。
いやぁ、これはなぁ、読み進めていくうちに自分で発見するべきなのだ。

 冒頭から戸惑いがある。広美という女の話と恋人同士であるあおいと
祐理の話が交互に語られるのだが、2つの話がどう結びついて行くのか
なかなか見えて来ない。どうなってるのかなぁ、と読み進めていくうち
に、あ〜そういうことか、と突然気がつく。タイトルの意味も理解でき
て、はははっ!と笑う。そこまでが第一段階。

 これがわかると、いったいこの女、何なんだ?という別の興味がわい
てくる。不思議な女である。「おそれいりましてございます」などとい
うヘンな言葉使いをする彼女、その造形がいい。そして、祐理たちとの
関係…。後半、広美の隠された過去やとんでもない秘め事があきらかに
なる、ここまではいいのだが、終盤にかけての展開はちょっとウェット
過ぎて僕には物足りない。違う終わり方があるのではないか。だって、
「母親ウエスタン」だぜぇ。思わせぶりで申し訳ないけれど、ぜひこの
小説読んでみて欲しい。それにしても、原田ひ香、すごいぞ!やるもん
だ!この人からは当分目が離せそうもない。(No.230)

               ◯ ◯

2013.2.15 ついにMacを買い替えた。今日届いたのだけどデータ移行
とかあるしなぁ。いつから使えるか? 読書は小川洋子「ことり」。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。他の書評ブログもここから。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

知的好奇心をくすぐる、原田マハ「楽園のカンヴァス」。

楽園のカンヴァス楽園のカンヴァス
原田 マハ

新潮社 2012-01-20
売り上げランキング : 6731

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
 

 今年の山本周五郎賞の受賞作、直木賞候補にもなった。アートを題材
にしたこの作品はニューヨーク近代美術館勤務の経験があり、フリーの
キュレーターでもあった作者が初めて自らの得意分野に挑戦した野心作
だ。アンリ・ルソーの知られざる名画を題材にした小説だが、最近のこ
の手の物語と同様にグイグイと読ませるし、構成もアイデアも素晴らし
い。もの足りない部分がないこともないのだけど、これだけ楽しませて
くれたら上出来である。

 発端は2002年の倉敷、大原美術館で監視員を務める早川織絵のエ
ピソード。そして、物語は一気に時をさかのぼり1983年のスイス・
バーゼルへ。当時、新進気鋭のルソー研究者だった彼女は、伝説のコレ
クター、コンラート・バイラーに密かに招かれスイスを訪れた。目的は
彼が秘蔵する「夢を見た」と名付けられたアンリ・ルソーの絵の真贋を
もう一人の男と争い見極めるためだ。しかも、絵ではなくある「物語」
を通して。この設定がなかなかいい。

 「夢を見た」はルソーのあの名作「夢」に極似した作品だった。なぜ
こんな絵が存在するのか?そして、美術界に暗躍する人だけが知るこの
絵をめぐるある噂…。それをここで明かすわけにはいかないが、この噂
が真贋の話を複雑にし、だからこそこの物語はおもしろいのだ。織絵た
ちが読んだ「物語」の中で語られる晩年のルソーの暮らしぶり、「夢」
のモデルになった女の「永遠に生きる」という意味、バイラーという男
の正体などなど、単純ではない作りがなんともうれしく、知的好奇心を
大いにくすぐられる。まさに読み応えのある傑作である。(No.217)

◯この小説は2014年6月27日に文庫になりました。
楽園のカンヴァス (新潮文庫)楽園のカンヴァス (新潮文庫)
原田 マハ

by G-Tools


               ◯ ◯

2012.10.19 水村美苗「母の遺産 新聞小説」もそろそろ終わり。こ
ういう展開になるとは…。やっぱり小説っておもしろいよなぁ。

【書評ランキングに参加中】
ランキングに参加中。押していただけるとうれしいです。他の書評ブログもここから。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ人気ブログランキングへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

戦争の世紀=20世紀を犬たちの生涯と重ね合わせる一大クロニクル。

筆にまかせて後先かまわずぶっ飛ばしてる感じがなんともいい。

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)
古川 日出男

文藝春秋 2008-05-09
売り上げランキング : 12611
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 職業柄なのか本のタイトルには敏感に反応してしまう。書名がいいだ
けで、これはひょっとして、と思ってしまうのだ。古川日出男のこの小
説もまずはタイトルに惹かれた。だって、かっちょいいじゃないですか。
タイトルだけで読みたくなってしまう。で、ベルカ、って?それはライ
カ犬の名前。宇宙に飛び立ち、初めて生還した2頭の犬のうちの1頭の
名だ。そして、世紀末の世を生きる彼の末裔の名前でもある。

 この物語は、戦争の世紀=20世紀を、四頭の軍用犬を始祖とした様々
な種類の犬たちの生涯と重ね合わせながら語る一大クロニクルだ。古川
日出男がスゴいのはその自在な語り口!語り口というか、もうグイグイ
グイと筆にまかせて後先かまわずぶっ飛ばしてる感じがなんともいい。
頭の中のイメージのままに筆が動いてる、そのスピード感!その自在さ。
いいよなぁ。こういう小説家は今なかなかいないのではないか。

 犬たちを主人公に20世紀を語る、というのはかなりのアイデアだが、
それもまともではない。ロシアマフィア対チェチェンマフィアの抗争が
大元にあったりするのだから!日本人ヤクザの組長の娘がカギを握って
いたりするのだから!想像力が限界を超えて頭が爆発しちまいそう。う
~む、古川日出男、世評通りのスゴいヤツである。(No.96)

               ◯ ◯

2010.10.4 今夜の「世にも奇妙な物語」。20周年スペシャルで人気
作家×豪華キャストのコラボ。京極夏彦、万城目学、宮部みゆき、東野
圭吾、朱川湊人の原作となれば見逃せませんよぉ。

◎応援クリックぜひ1つお願いします。他の書評へもここからいけます!

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

プロフィール

オクー

Author:オクー
コピーライターであるようだ。
吉祥寺にいるようだ。
そんなに若くはないようだ。
犬ブログもよろしく!

okuuuをフォローしましょう
更新情報はツイッター
フェイスブックで。
Akihiko Okumura

amazon
電子書籍で探す!
映画・ドラマなら
News
最新記事
お気に入りリンク
ブログランキング
blogram投票ボタン
カテゴリ
RSSリンクの表示
ブログ村
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。