■ま行の作家 no.75        

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【書評】盛田隆二「父よ、ロング・グッドバイ─男の介護日誌」

◇著者だからこそ書けた介護生活の「リアル」。


 「男の介護日誌」という副題の通り、著書の父が91歳で亡くなるま
での約10年間の介護生活を描いたノンフィクションだ。「リアリズム
の名手」と呼ばれる小説家がノンフィクション、しかも自らの体験を
書くのだから、この「リアル」は本当に心に迫る。盛田隆二だから書
けた一冊だと思う。

 実家に住む父と母、そして妹。少し離れたところに住む盛田夫妻。
冒頭で語られる母の病気と死。妹の病。父親は妻を亡くしたことで生
きる意欲を失い認知症がひどくなってしまう。それがすべての始まり。

 介護というのはただのルーティンではない。介護するべき人がいる、
ということで生活の全てが変わってしまう。そして、何事かが起これ
ばその大きな波にのまれて、まる1日、時には数日の暮らしを失い、
精神的なダメージを受け、「普通の暮らし」ができなくなる。父親の
言動に振り回される盛田氏の日々を読んでいると、このことを強く強
く感じる。

 タイミングの悪いことに、この時彼は小説家一本で生きていこうと
決意したばかりだった。大切な依頼原稿を断らなければならなくなっ
た辛さと焦り。様々なことが重なって、彼自身も心の均衡を失ってい
く。盛田氏は全編を通じて「介護っていったい何なんだ?」と自らに
問いかけているように思う。同時に読者にもその問いは向けられる。

 介護生活というものは、一家族一家族違う。だからこの本が今家族
を介護してるすべての人の参考になるわけではない。それでもこの実
話を通じて感じる強い共感は、大きな力になるのではないか。エピロ
ーグ。父が語る母との出会いの話。そして、ラストを飾る一葉の写真。
自然と涙がこぼれた。(No.364)

◯著者はこの介護経験を背景にした「二人静」という恋愛小説を書い
ています。これもまたおすすめです。

◯「二人静」を含む盛田隆二の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.6.24 さてさて参院選が始まった。ヘンな人がヘンはことをしな
いように最低限のことはしなければ。読書は窪美澄「アカガミ」。

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【書評】「ラオスにいったい何があるというんですか?」

◇アイスランドいいぞ!でも物足りない村上春樹の紀行文集。


 20年ほどの間にいくつかの雑誌のために書いたものをまとめた村上
春樹の紀行文集。出てすぐ買ったが小説最優先なので手に取るのが遅く
なってしまった。ここにはボストン2編、アイスランド、オレゴン州と
メイン州のポートランド、ギリシャのミコノス島とスペッツェス島、ニ
ューヨークのジャズ・クラブ、フィンランド、ラオス、イタリアのトス
カナ、熊本県という全10編が収録されている。以前暮らしていた土地、
初めての土地、それほど行きたくなかった場所などなど村上さんの気分
にも温度差がある。

 一番面白かったのはアイスランドかな。英語が通じる国だけど日本で
いうと「源氏物語」の時代と同じ言葉がそのまま現役のアイスランド語
として使われていることとか、パフィンという名物鳥の話とか、国中温
泉だらけだとか。アイスランド、なんだか行ってみたい。

 でもなぁ、村上春樹の紀行エッセイはすこぶるおもしろいと皆に言っ
て「遠い太鼓」とか「雨天炎天」とか「辺境・近境」とか名作を勧めて
きた僕としては、これはなんだか物足りない。一つの要因として日航の
ファーストクラス向け機内誌に連載されたものがほとんど、ということ
もあるかもしれない。とっとことっとこと文章は進んであまり脱線もし
ないし、いつもの軽妙洒脱さ、愉快なレトリックやユーモアも不足して
いる。スルスルと読みやすいけれど心に残らない感じ。写真も、ここ写
真でみたいよなぁ、というところになくてガッカリ。というわけでちょ
っと期待はずれの一冊。(No.362)

※Kindle(ある場合)や楽天ブックスにも対応できるようになりました。
よろしく!

というわけで、こちら、おすすめ!



◯村上春樹のその他の本の書評はこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.6.9 昨夜、また少し胃の調子がおかしかった。朝には治る。そ
れにしても舛添氏、いいかげんにしろよ。読書は北村薫「中野のお父さ
ん」。

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【書評】村田沙耶香「消滅世界」

◇日本の未来を暗示する?村田沙耶香、入魂の一冊。
消滅世界消滅世界
村田 沙耶香

河出書房新社 2015-12-16
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 そこは、人が人工授精を受けて出産し、もう交尾(セックス)によっ
て子供を産むこともなくなってしまった世界。未来というよりパラレル
ワールドだ。この世界の住人が恋をする相手は、アニメや漫画や本の中
のキャラクターがほとんどで、少数だがヒトの異性に恋する人間もいる。
夫婦にとっては「家族」であることと子育てだけが大事で、夫婦間のセ
ックスは「近親相姦」とみなされタブー視されている。夫婦が恋をする
ことはなく、結婚しても外に恋人がいたりするのだ。

 そんな世界で生きる主人公の雨音には大きなヒミツがあった。彼女は、
父と母の性行為で生まれた子供なのだ。それはコンプレックスであると
同時に、自分の中に母と同じ血が流れていることを彼女は恐れている。

 大人になった雨音は結婚をし恋人もできるのだが、あることがきっか
けで夫と共に実験都市・千葉へと移住することになる。そこでは、生ま
れた子は名前ではなく「子供ちゃん」と呼ばれ、すべての大人がすべて
の子供の「おかあさん」になる。男も人工子宮で妊娠する。雨音は、そ
の異様な世界に最初は嫌悪感を抱いていたのだが…。

 この小説の設定のスゴさ!セックスレスだと言われる現在の日本と地
続きの場所にあるようでやたらと怖い。これからこの国はどうなってい
くのか?男と女の関係、夫婦の関係、親と子の関係はどうなるのか?家
族とその未来は?いろいろなことを考えずにはいられない村田沙耶香、
まさに入魂の一冊!

◯村田沙耶香のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。

            ◯ ◯

2016.3.7 義母の葬儀も終わり、ようやく日常が戻ってきた。妻はまだ
いろいろ大変だが。読書はピエール・ルメートル「その女アレックス」。

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【書評】村上春樹「職業としての小説家」

◇村上春樹の書くことの喜びに触れることができる幸せ。
職業としての小説家 (Switch library)職業としての小説家 (Switch library)
村上春樹

スイッチパブリッシング 2015-09-10
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 いつになくマジメな村上春樹だ。いつもなら比喩などがもう少し入っ
てクスッと笑ってしまうところも多いのだけど、そういう箇所は少ない。
これはやはり村上さんがぜひ書いておきたいことだったのだろうと思う。

 デビュー当時の話など下世話?な部分もあってそれはそれで楽しいの
だけれど、この12回に分かれたエッセイの中で一番印象的なのは村上さ
んが「書くことの楽しさ」に言及しているところだ。特に6回目「時間
を味方につけるー長編小説を書くこと」がおもしろい。彼は自ら書いた
小説を「その時点における全力を尽くし」て何度も何度も数えきれない
ぐらい書き直し、ゲラになっても真っ黒になるぐらい書き直している。
ここで引用されているカーヴァーの言葉「『時間があればもっと良いも
のが書けるはずなんだけどね』、ある友人の物書きがそう言うのを耳に
して、私は本当に度肝を抜かれてしまった。(中略)もしその語られた
物語が、力の及ぶ限りにおいて最良のものでないとしたら、どうして小
説なんて書くのだろう?」、村上さんも又この思いを共有している。

 9回目「どんな人物を登場させようか?」で語られる人称の話も刺激
的だ。新しい人称は新しいヴィーグルなのだ!そして「海辺のカフカ」
を書いた時に感じたある感動的な体験の話。小説を書くことで彼は十五
歳だった自分が感じた空気や光をそのまま自分の中に再現することがで
きたという。「自分のずっと奥底に長いあいだ隠されていた感覚を、文
章の力によってうまく引きずり出すことができたのです。それはなんと
いうか、本当に素晴らしい体験でした」。

 村上春樹という小説家の「書くことの喜び」に触れることができるの
は本当に幸せである。そして、それを実現してる根底には彼の自由な魂
がある。いいなぁ、いいよなぁ小説家って。っていうか、いいよなぁ、
「村上春樹」って。(No.342)

◯村上春樹のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 
◯現在発売中の「MONKEY vol.7」の川上未映子による「村上春樹イン
 タビュー」はこの本の内容を補完するもので必読です。ぜひ!

MONKEY Vol.7 ◆ 古典復活
柴田元幸
4884184025

            ◯ ◯

2015.11.10 いろいろ終わって、虚脱感漂う日々。雨だし。読書は西
川美和「永い言い訳」。

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【書評】又吉直樹「火花」

◇ウダウダとした会話の中にある真実が心を強く捉える。
火花火花
又吉 直樹

文藝春秋 2015-03-11
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 花火で始まり花火で終わる小説「火花」。それだけで十分にややこし
い。これ、芸人又吉のファンというだけで手に取ったならば、なんだな
んだ感が強いのではないか。特に前半はそれを感じる。

 売れない若手芸人の徳永と先輩芸人である神谷の話だ。神谷は破滅型
といってもよく、徳永はなぜかこの先輩に強く惹かれ、時々会って話を
するようになる。大阪の大手事務所にいた神谷が拠点を東京に移すこと
になって交流はさらに深まる。舞台になるのは神谷の彼女のアパートに
近い吉祥寺だ。

 神谷という男は漫才に対してはもちろんのこと、生き方や様々なこと
に対して一家言ある。しかし、出会いの時、彼は24歳の若者に過ぎな
い。神谷が言ってることはマトモであるようにも思えるし、そうでない
ようでもある。20歳の徳永は共感したり反発を感じたりしながらも、
神谷のことを信じている。この小説の魅力は、年若い2人のこのウダウ
ダとしたやりとりにある。芸の話、人生の話、そこにあるいくつかの真
実が心を強く捉える。

 終盤、出会いからすでに8年ぐらいの時が流れている。その間に2人
の人生にも大きな変化が起こる。一時期姿をくらましていた神谷との再
会、徳永は神谷の姿に驚かされる。なんと彼は…。徳永にしても神谷に
してもある意味分かりやすい人間で驚きはないのだが、この終盤にかけ
ての展開はおもしろく、成長小説としてとても魅力的だ。

 又吉直樹、処女作と思えない達者さ。これからも書いていくと思うし、
さらにおもしろいものも期待できるが、芸人とか自分の世界ではないも
のを早く読みたいと思った。(No.324)
 
            ◯ ◯

2015.5.6 GW中もなんだかんだと仕事をしていた。これが終わった
ら二子玉川に行きたいぞ。読書は絲山秋子「離陸」。

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【書評】宮部みゆき「ソロモンの偽証6 負の方程式」

◇本編とシンクロして見事な書き下ろし中編。
ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)
ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)宮部 みゆき

新潮社 2014-10-28
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 さて、「ソロモンの偽証」文庫化にともなって、最後の6巻に書き下
ろしが付いちゃってる「問題」については、ここで書きました。で、ど
うしよう?と思ったのですが、結局、図書館で借りて書き下ろしだけ読
みました。買っちゃうのはくやしいし。

 主役の1人藤野涼子の20年後を描いたという「負の方程式」という
中編ですが、うううううむ、素晴らしかった。まいったなぁ、まったく
もう‥宮部みゆき、スゴすぎる。

 ここからはややネタバレになるので、未読で読みたくなっちゃった人
はとばしてください。まぁ、発売から随分たったので知ってる人は知っ
てるでしょうが、語り手はなんと「ペテロの葬列」等の杉村三郎なんで
す。私立探偵になっちゃってる杉村と弁護士になっちゃってる藤野涼子
がある中学で起こった事件のことで出会う。

 すごいのはですねぇ、見事にこれが本編とシンクロしてること。そし
て、最後の最後に見せる藤野涼子の怒りの理由!これはねぇ、くやしい
けれど、読んだほうがいいです。宮部みゆきの凄味を再確認することに
なるでしょう。で、この最後のフレーズって‥再会がある???ううむ。
                           (No.323)

◯「ソロモンの偽証」を含む宮部みゆきの本のレビューはこちらで。
 ※一番上にはこのページがきます。

            ◯ ◯

2015.4.22 加瀬邦彦さん亡くなっちゃったんだなぁ。ワイルドワンズ
けっこう好きだった。読書は絲山秋子「離陸」。

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【書評】宮部みゆき「荒神」

◇それぞれの思いを抱え「怪物」に立ち向かっていく人々。
荒神荒神
宮部みゆき

朝日新聞出版 2014-08-20
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 これまで宮部みゆきの時代小説は宮部ワールドの中の時代物、という
感じがしていた。しかし、この「荒神」の前半などは、正統的な時代小
説の趣がある。宮部みゆきはさらにさらにスケールアップしている。

 小説の舞台は東北にある二つの小藩、香山と永津野。敵対する2藩だ
が昔は一つの藩だった。その香山の小さな村が一夜にして壊滅してしま
うところから物語は始まる。村民たちの「逃散」と呼ばれたそれは、実
は「怪物」によるものだった。この騒動から動き出す両藩の人々の動き
を宮部みゆきは巧みに描いていく。香山藩の直弥と達之助の幼なじみ。
蓑吉という生き残りの少年。永津野藩の藩主側近で専横を極める弾正と
その妹・朱音。再び「怪物」が動き出し、それに引きつけられるように
彼らとその周辺の人々が集まって来る。遠い古から連なる因縁や呪詛が
明らかになるにつれて「怪物」の正体も薄ぼんやりと見えてくる。

 いつも書くことだが宮部みゆきの小説はその真ん中に人間がいる。一
人ひとりが持つ強さややさしさ、強欲さや身勝手さ、そして、哀しさ。
そういうものが一つになったその先に「怪物」がいるのだ。彼らはそれ
ぞれの思いを抱えてこの異端のものに立ち向かっていく。舞台を考えれ
ばこれは現代にもつながる人と「怪物」との物語。大いなる希望を感じ
るやさしいラストが素晴らしい。こうの史代が描く表紙もまたいい。
(No.314)

◯宮部みゆきのその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

◎「荒神」は2017年6月28日、新潮文庫から文庫になりました。
荒神 (新潮文庫 み 22-31)荒神 (新潮文庫 み 22-31)
宮部 みゆき

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            ◯ ◯

2015.1.19 なんだか大変だった校正も終わり、ホッとひと息。でも、
やることがいろいろと…。読書は角田光代「笹の舟で海をわたる」。

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【書評】宮部みゆき「ソロモンの偽証 第2部/第3部」

◇学校内裁判という設定とそのすごさ!
ソロモンの偽証: 第II部 決意
上巻 (新潮文庫)

宮部 みゆき
4101369372
ソロモンの偽証: 第II部 決意
下巻 (新潮文庫)

宮部 みゆき
4101369380
ソロモンの偽証: 第III部 法廷
上巻 (新潮文庫)

宮部 みゆき
4101369399
ソロモンの偽証: 第III部 法廷
下巻 (新潮文庫)

宮部 みゆき
4101369402

 このブログで「ソロモンの偽証」のことをいろいろ書いていたら、2
部と3部の書評を書いてないことに気がついた。何で書かなかったのか
な?内容は覚えていたけれど、ちょっと自信がないところがあったので
再読して、これを書いている。文庫版の最後には「書き下ろし」がある
のだけれど、それは読んでいない。文庫、買おうかどうしようか迷い中。

 2部の最初で主人公の一人、藤野涼子は学校内裁判を始めることを宣
言する。2部は彼女を中心に裁判の準備を進める中学生たちの話だ。判
事や検事、陪審員などが決まり、その中で新たな事実が明るみになり、
それぞれの立場で被告や証人たちとの絆を深めていく。各々をタテ糸ヨ
コ糸にしながら進めていく構成の巧みさはさすが宮部みゆきだ。

 3部はまさにその裁判そのものが描かれるわけだが、この小説の一番
すごいところは「学校内裁判」というある意味ありえない設定を作り出
したところだ。これは本当にスゴいぞ。で、裁判の場面。回想部分もあ
るが、そのほとんどが「法廷」でのやりとりで、これはもう大迫力!!
裁判を通していろいろなことが分かってくるのだが、その中でも被告で
ある大出俊次の人間性が浮き彫りになるところが大きい。この人間の強
さと弱さ。そして、ラスト近くで明らかになる驚くべき真実!

 「その法廷は十四歳の死で始まり偽証で完結した」というのがこの小
説のキャッチフレーズだが、最後の最後にもう一度証言を求めるある証
人の心の叫び。そのすべてを受けて陪審員たちが出す判決が素晴らしい。
「人のことを思いやる」「相手のことを慮る」こと、この長い物語を通
じて、その大切こそが作家の伝えたかったことではなかったのか。この
経験を通して、中学生たちは大人への階段を一歩ずつ登り始めるのだ。

 これは宮部みゆきにとって代表作のひとつに数えられるであろう傑作
だ。文庫化を機に未読の人はぜひ読んでみて欲しい。(No.308)

◯「ソロモンの偽証」いろいろ、その1その2
◯「ソロモンの偽証 第一部」を含む、宮部みゆきのその他の本のレビ
 ューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2014.11.24 3連休最終日。妻は実家に帰ったので愛犬ひなたとお
留守番。読書はジュンパ・ラヒリ「低地」。

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【書評】松家仁之「優雅なのかどうか、わからない」

◇後半にしたがって濃くなる陰影。そして、生を思う深い余韻。
優雅なのかどうか、わからない優雅なのかどうか、わからない
松家 仁之

マガジンハウス 2014-08-28
売り上げランキング : 5384

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  48歳の岡田匡は離婚し、15年余り住んでいた元代々木のマンション
を出て、井の頭公園近くの一軒家で気ままな一人暮らしを始めた。最初
の方はなんだかちょっとムカつく。結婚当時の回想なのだが、編集者で
あるこの男、マンションのリフォームと家具にやたらとお金をかけ、時
代も時代なのだがやたらとバブリーな暮らしをしていたのだ。何だかな
ぁ、と思いながらそれでも読み進めていく。

 一人暮らしを始めた一軒家の話になるとそんな思いはすぐに消えてし
まう。古い民家であるその家や周囲の自然を語る作者の描写!とにかく
うまいのだ、松家仁之は。そして、昔の恋人、佳奈との再会。ここから
は何だか男ってほんとしょうがないなぁ、って話なのかな、と思い始め
る。再会した若い彼女に激しく引きつけられ、青年みたいにふるまう48
歳。思ってることも言えず、大人の恋の成熟もない。それはそれで何だ
かとてもいいのだけれど…。

 物語は後半になるにしたがって陰影が濃くなっていく。これからどう
生きるのか、佳奈とはどうするのか。家のオーナーの園田さん、彼女か
ら託された猫のふみ、海外にいる息子、そして佳奈の父親。それぞれの
エピソードが物語に深みを与えている。前の2冊よりちょっと軽めの話
かと思っていたが、最終的にはズシリと心に残った。松家の小説はいつ
も余韻が深い。(No.305)

◯松家仁之のその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2014.11.4 さて、広告のコンペも今日で終わり。もうひと頑張りして
みるか。読書はミロコマチコ「オオカミがとぶひ」。すごいっ!!

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【書評】村上春樹「女のいない男たち」

◇誘発されるものが多く心を揺さぶられる、村上春樹の短編。
女のいない男たち女のいない男たち
村上 春樹

文藝春秋 2014-04-18
売り上げランキング : 80

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  村上春樹はやはりおもしろい。7話が収録されたこの短編集、最初
の物語など本当に普通に始まってフツーな感じで進んでいくのだけれど、
読んでいるうちにコトリと心のどこかで音がする。それに耳を澄ませて
いると、いつの間にか主人公のことよりも自分のことをいろいろと考え
ている。物語から誘発されるものが村上春樹の小説ではひときわ多いよ
うな気がする。特に、短編、では。

 作者自身がまえがきで語っているように全体のモチーフはタイトル通
りの「女のいない男たち」だ。妻に不倫され、しかも先立たれた舞台俳
優、初めて夢中になった人妻に去られた独身主義の医者、寝物語を語っ
てくれる女がいなくなることを恐れる正体不明の男、妻に裏切られ離婚
し、バーを始めた男などなど。それぞれの喪失のカタチ、どれもがおも
しろく、思いを巡らすことも多いのだが、「独立器官」と「木野」が僕
は特に好きだ。

 恋煩いから、成功者である医者が自分の価値に深い疑念を抱くように
なる「独立器官」、彼が堕ちて行くそのプロセスが強く心を打つ。「木
野」は結婚に傷つき、バーを始めた男が、直視できずにいた自らの心の
闇に向かいあう話で、これは読み応えがあった。そして、表題作である
最後の一編。人とその生、男と女、それらすべてを飲み込んだような話
で、村上春樹らしいレトリックたっぷりの語り口に心引かれた。彼の短
編は以前から好きだが、これもまた一編一編が充実した短編集だった。
                           (No.287)

◯村上春樹のその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.6.1 6月なのに真夏のように暑い。やれやれ。今年は冷夏だと聞
いたが、ホント?読書は「HHhH プラハ、1942年」。興奮。

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