◯外国人作家 no.79        

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【書評】ジュンパ・ラヒリ「べつの言葉で」

◇彼女はなぜ今までの言葉を捨てなければならなかったのか?
べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)
ジュンパ ラヒリ

新潮社 2015-09-30
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 このエッセイ、すこぶるおもしろい。「その名にちなんで」「見知ら
ぬ場所で」などの世界的作家ジュンパ・ラヒリは、ベンガル人の両親を
持ち、アメリカで育った。ベンガル語は話せる程度、英語はパーフェク
トに話せて、小説も英語で書いているのだが、この2つの言葉は「仲が
悪い」と彼女自身は感じていた。そんなラヒリが2012年にイタリアに
移住する。住むだけではない。彼女はイタリア語で物語を書くことを決
心したのだ。

 周囲は当然、反対する。しかし、彼女にとってこれは「人生における
英語とベンガル語の長い対立から逃れること」なのだ。ううううむ、な
んだかスゴい…。このエッセイは移住までの顛末とイタリアに暮らし始
めてからの諸々がイタリア語で書かれている。もちろん、言葉の問題を
中心に。

 印象的なエピソードがある。イタリアで開かれる文芸フェスティヴァ
ルにイタリア語で小文を寄せた彼女が、その英訳をも自ら書くことにな
る。しかし、それがうまくいかない。彼女は「自分の英語の豊かさ、強
さ、しなやかさに圧倒される」のだが、同時に「生まれたばかりの赤ん
坊のように抱きかかえているわたしのイタリア語を守りたい」とも思う
のだ。

 これまでの彼女の小説は自らのアイデンティティーを探すために書か
れたものだった。イタリア語で書くことで、もうそういうテーマから開
放されるのではないか。もっと魂の深淵に触れるような作品が生まれる
ような予感がする。収録された2編の掌編にはすでにその萌芽がある。
ジュンパ・ラヒリの次の小説がとてもとても楽しみだ。(No.356)

◯ジュンパ・ラヒリの小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.4.25 トカラ付近で小さな地震が続いてるのが気になる。北海道
の補選、善戦したけれど…。読書は宮下奈都「羊と鋼の森」。

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【書評】ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」

◇またまた度肝を抜かれる、ルメートル鮮烈のデビュー作。
悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)
ピエール・ルメートル

文藝春秋 2015-10-09
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 さて、先日の「その女アレックス」に続いて、ピエール・ルメートル
の同じシリーズの作品「悲しみのイレーヌ」を読んだ。いやぁ、これが
また大変でさぁ。長い一部が終わって、さぁ二部。いよいよクライマッ
クスに突入か、というところでエ〜〜〜〜〜〜ッと度肝を抜かれる。誰
もがそうだろうが一瞬ア然となり、そ、そうなのか…とボー然となる。
デビュー作でこんなこと仕掛けるなんて、すごすぎるぞ!ルメートル。

 すでに周知の事実とも思うが、日本での発売はアレックス→イレーヌ
の順だが、イレーヌはルメートルのデビュー作で本国ではイレーヌ→ア
レックスの順で発表されている。これは日本の出版社の思惑もあったの
だろうが、そのことによって、日本の読者は「悲しみのイレーヌ」の肝
になる事柄を知ってしまっている。物語はまさにそこに向かって突き進
むわけだ。

 一部の冒頭では2人の女性が残虐な手段で殺される。さらに同種の事
件が起こるのだが、このシリーズの主人公である145センチという短躯
な男、カミーユ警部はそれらの事件にある「共通点」を見つけ出す。さ
らに同じような事件が過去に起こっていたことも明らかになるのだが…。
この犯人の恐ろしすぎる考えとその行動…、真実と虚構がないまぜにな
り、さらにその先には…。あぁ…!(No.355)

◯「その女アレックス」のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 
◯これまでの「出る本、出た本」はこちらでまとめて。一番上にはこの
 ページが出ます。
            ◯ ◯

2016.4.18 九州で高校卒業まで過ごしたので熊本のことがとても気に
なる。まだまだ余震が続いてるし、避難所生活も本当に大変だと思う。
早くいい方向に進むといいけれど…。読書は宮下奈都「羊と鋼の森」。

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【書評】ピエール・ルメートル「その女アレックス」

◇その正体に驚き、その真実に驚き、さらに「その先」に驚き。
その女アレックス (文春文庫)その女アレックス (文春文庫)
ピエール ルメートル 橘 明美

文藝春秋 2014-09-02
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 ううむ、これはどこまで書いたものやら。2014年の国内のミステリ
ー賞を総なめし、6冠に輝いたこの小説。すでに書評だって数限りなく
出ているだろう。とはいっても、これ、あまり書けないなぁ。

 「その女アレックス」は3部に分かれている。冒頭、アレックスは見
知らぬ男に誘拐され、身体の自由もほとんど利かない檻に閉じ込められ
てしまう。この誘拐事件を担当するのがパリ警視庁の警部であるカミー
ユ。145cmという短躯のキャラがユニークだが、彼は4年前にお腹に子
を宿した妻を誘拐され殺されるという悪夢を経験している。この事件は
カミーユにとっての復帰戦なのだ。なかなか手がかりのない犯人像、し
だいに衰弱していくアレックス。そうか、そういう話か、と思うのだが
この思い込みは2部になって激しく裏切られることになる。

 2部で明らかになるのはアレックスの「正体」だ。これには本当に驚
かされる。そして、3部。これはアレックスの「真実」ということにな
るのだが、さらにさらに驚かされることになる。しかし、この小説が多
くの賞を獲得したのは「その先」があるからなのだ。アレックスのまさ
に命をかけた魂の一撃。それに対するカミーユたち警察側の…。いやい
やいや、これ以上は…。

 全編を覆うのはアレックスという女性の激しい慟哭である。この悲し
み!この怒り!この絶望!しかし、この慟哭で覆い尽くされそうな物語
を作者は最終盤で少しだけだかやわらかくする。それはまさに読者にと
っての救いでもある。う〜む、巧いなぁ。巧すぎるぞ、ルメートル!
(No.354)
            ◯ ◯

2016.4.1 というわけで世間は新学期、新年度ということなのでしょ
うがフリーランスライフはあまり代わり映えもせず。読書は、ルメート
ルの「悲しみのイレーヌ」。

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【書評】カズオ・イシグロ「忘れられた巨人」

◇人は記憶に支配されているのか、それとも。
忘れられた巨人忘れられた巨人
カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro

早川書房 2015-05-01
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 読みだしてすぐにとまどった。とまどったまま読み進めていくと、何
だかトールキンの「ホビットの冒険」でも読んでいる気になってしまっ
た。カズオ・イシグロ久々の長編小説の舞台は、なんとアーサー王統治
後のブリテン島。伝説の世界だ。ううむ。とはいえイシグロはこれまで
もSF的な「わたしを離さないで」など様々なスタイルで小説を書いて
いる。だからまぁこういうファンタジー的な物語でも驚いちゃいかんの
だ。でも、やっぱり…。というわけで、ちょっとノロノロの読書になっ
てしまった。

 「忘れられた巨人」の主人公はアクセルとベアトリスの老夫婦。小さ
な村に住む2人は息子に会うために旅に出る。しかし、この村、いやこ
の国自体が「健忘の霧」に覆われていて、誰もがいろいろなことをハッ
キリと思いだせないでいる。アクセルたちも息子がなぜ自分たちの元を
去ったのかその理由さえわからない。旅の先では本当にいろいろなこと
が起こる。そして、この霧の原因もわかるのだが…。

 これは記憶にまつわる物語であり、老夫婦の愛の物語でもある。霧は
すべての記憶を覆い隠す。良い記憶も悪い記憶も。この霧が晴れた時、
ブリトン人とサクソン人という2つの民族がかつて憎しみ合っていたら
しいこの国は、いったいどうなるのか。いろいろと事情がありそうなア
クセルとベアトリスの2人はどうなるのか。ベアトリスは言う。「途中
どんな紆余曲折があっても、(中略)アクセルとわたしは一緒に人生を
思い出します」と。愛も憎しみもすべてを包み込んだ記憶。人は記憶に
支配されているのか、それとも記憶によって救われているのか。
(No.338)

◯カズオ・イシグロのその他の本のレビューはこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2015.10.2 ありゃりゃ、10月になっちゃった。ヤクルト優勝かぁ。
パチパチパチ…。読書は池井戸潤「下町ロケット」!

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【書評】トーベン・クールマン 「リンドバーグ」

◇夢を実現しようとする思いの強さがあふれている。
リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険
トーベン クールマン Torben Kuhlmann

ブロンズ新社 2015-04-15
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 さて、久々の絵本だ。作者のトーベン・クールマン、なんと大学卒業
時にこの「リンドバーグ」を完成させ、これがデビュー作というから本
当に素晴らしい。この人の絵には絵力がある。ニューヨーク上空を飛ん
でいる絵などなどなど、ずっと見ていても飽きない美しい絵がたくさん
あるのだ。そして、この発想力。まぁ、力がある人は若い時から抜けて
いるのだろうけど、まいっちゃうなぁ。

 「空飛ぶネズミの大冒険」という副題がついたこの絵本、ヨーロッパ
にある港街(ドイツのハンブルクか)が舞台。そこに住む知りたがりや
の小ネズミの話だ。ある日、図書館から帰ってみると、町にいるはずの
仲間のネズミたちが一匹もいない。どうやら新しいネズミ捕りが怖くて、
みんな逃げちゃったらしい。それも、船に乗って遠い国へ。

 自分も、と考えた小ネズミだが、港には腹をすかせた猫が見張ってい
てどうしようもない。そこで考えた。「そうだ!空を飛んでいこう!」
と。この知りたがりやのネズミはいろんな部品を集めて、試行錯誤を始
める。そのプロセスの楽しいこと!

 そして、ついにその日がやって来る。なぜか小ネズミを敵視し、監視
を続けるフクロウたちの目を盗んで彼は旅立つのだ!!いろいろやって
みようとする精神や夢を実現しようとする思いの強さがこの物語にはあ
ふれている。この人の新作出ないかなぁ、早く読みたいぞっ!(No.332)

◯この絵本の特設ページがあります。こちら

            ◯ ◯

2015.7.13 つゆなのか夏なのか、ハッキリしてくれっ。それにしても
新国立競技場…。読書は窪美澄「さよなら、ニルヴァーナ」。

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【書評】ジュンパ・ラヒリ「低地」

まさに「人生」を描いて見事な物語。今年のベスト候補だ。

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)低地 (Shinchosha CREST BOOKS)
ジュンパ ラヒリ Jhumpa Lahiri

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 これは今年のベストかもしれない。「停電の夜に」「見知らぬ場所」
「その名にちなんで」、どれもが素晴らしいジュンパ・ラヒリの最新長
編。その帯には「殺された弟。その妻とともに生きようとした兄。」と
ある。

 年子としてカルカッタで生まれたスバシュとウダヤン、仲の良い兄弟
として育ったが、ウダヤンはインドの革命運動に参加し、身重の妻ガウ
リの目前で射殺される。留学先のアメリカから戻ったスバシュは実家に
いる弟の妻を両親から守るため、彼女と結婚しアメリカに連れ帰ること
を決意する。なかなかすごい話だが、物語の重点は実はこの後にある。

 一人の男の死によって、彼らの人生は一変する。どちらもウダヤンの
死に心を残していて、吹っ切れることがない。特にガウリは、夫の死を
ずっとずっと引きずったままだ。彼女は、元々哲学に興味があり、最終
的にはカリフォルニアの大学で教えることになるのだが、そこには夫で
あるスバシュも娘ベラの姿もない。その残酷な決断が哀しい。

 そうするしかない、そうすることでしか生きられない。

 結局、ウダヤンの死は娘ベラの人生さえも変えてしまうことになる。
ある死、ある事がきっかけでその後が変わる。そのことにからめとられ
てうまく生きることが出来ない。それはけっしてこの物語の家族だけの
ことではないだろう。それが人生だ、ということも言えるのかもしれな
い。そういう意味では、まさに「人生」を描いて見事な一編!晩年のス
バシュとガウリ、最後に少しだけさす薄明かりが救いだ。

 短いセンテンスを積み重ねていくラヒリの文章がとてもいい。時の経
過をフラッシュバックのように描いていて素晴らしかった。(No.309)

◯ジュンパ・ラヒリの他の小説の書評はこちらから。
※一番上にはこのページがでます。 

            ◯ ◯

2014.12.1 昨日、若いコピーライターの友人と会う。親が僕より若い
ことを知りア然。読書は窪美澄「水やりはいつも深夜だけど」。

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【書評】E・ゴーリー「ギャシュリークラムのちびっこたち」

◇死や暴力や悪、そして、乾いたユーモア。
ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとでギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで
エドワード ゴーリー Edward Gorey

河出書房新社 2000-10
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 エドワード・ゴーリー、吉祥寺のブックファーストでフェアをやって
いて彼のことを初めて知った。有名?いやいやまだ知らない人も多いだ
ろう。ゴーリーはアメリカ人の絵本作家、モノクロームの線画が印象的
で文章も書く。子供向けではなく大人の絵本と言ったほうが正解だ。

 さてこの「ギャシュリークラムのちびっ子たち」はそのフェアでゴー
リーならまずはこれ!と書かれていた初めての翻訳単行本だ。この本が
出たのが2000年だから(彼は同年4月に75歳で亡くなっている)、や
はり日本に紹介されたのが遅かったようだ。この本の他にも、今、何冊
か手元にあるが、彼の絵本世界には独特なものがある。そこにはいつも
死や暴力や悪が横たわっているのだ。とはいえ、陰湿な感じはまったく
なく、乾いたユーモアを強く感じる。こういうの、僕は好きだなぁ。

 この本は「Aはエイミー かいだんおちた」に始まり、「Zはジラー
 ジンをふかざけ」で終わるいわゆるアルファベットブック。子供たち
はそれぞれの理由で死んでしまうのだ。絵は見るほどに好きになってい
く奥深さ。柴田元幸の訳が原文の趣向を活かしていて素晴らしい。あぁ、
エドワード・ゴーリーにはまりそう。(No.300)

            ◯ ◯

2014.9.26 書評の末尾についてるナンバーは紹介した本の数なので今
までに300冊紹介したことになります。おぉ、そうか、パチパチパチ。
読書は原田マハ「太陽の棘」、これもまたおもしろいなぁ。

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【書評】ショーン・タン「夏のルール」

◇遠い夏の日への郷愁を感じる見事なショーン・タンワールド。
夏のルール夏のルール
ショーン タン Shaun Tan

河出書房新社 2014-07-23
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 これはいいなぁ。ショーン・タンの最新の絵本。訳者は岸本佐知子!
なにがいいって、大判なのがまずいい。何判って言うのかな?ヨコ31
センチ弱でタテ28センチ弱。これぐらい大きいとショーン・タンの絵
を存分に楽しめる。パラパラ見る、じっくり見る、何度も見る。いろい
ろな謎があり、新しい発見がある。すごく楽しい!!

 タイトルの通り、これはルールの話。ルールって経験が元になってる
のだから、言い換えればひと夏の経験の話だ。主人公はショーン・タン
の兄弟がモデルになったという男の子2人。最初に「去年の夏、ぼくが
学んだこと。」とあり、次のページから「ルール」が語られていく。左
ページに一行のルール、右ページがそれに対応した絵。最初のルールは
「赤い靴下を片方だけ干しっぱなしにしないこと。」。絵は、真っ赤な
巨大ウサギが狭い路地を進んでいき、兄弟が震えているというヴィジュ
アル。もちろん赤い靴下も。なんだか恐ろしく、ちょっぴりユーモアの
ある絵が続き、不思議な気分になってくる。正装した不気味な鳥たち、
怪しい機関車、巨大な猫などなど、まさにショーン・タンワールドだ。

 「夏の最後の一日を見のがさないこと。」というお終いのルールも素
敵。読み終えて本を閉じると、子供の頃の夏休みが蘇ってくる。自由で
なんの束縛もなかった夢の様な日々!この絵本には遠い夏の日への郷愁
が確かにある。(296)

◯ショーン・タンのその他の本のレビューはこちらから。 

            ◯ ◯

2014.8.21 広島、大変なことに。今年は特に水の事故が多かったよう
な気がする。読書は山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」を文庫で。

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【書評】ローラン・ビネ「HHhH プラハ、1942年」

◇何とも素晴らしいこのスタイル!この物語!
HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)
ローラン・ビネ 高橋 啓

東京創元社 2013-06-28
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 素晴らしい!「HHhH」で一番スゴいのはスタイルだ。こういうスタ
イルで小説が書けるとは!この物語、副題の通り、舞台は1942年、
ナチ占領下のチェコ・プラハ。ユダヤ人大量虐殺の首謀者で「金髪の野
獣」と恐れられたラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件を描いている。

 最初、読む者は混乱するだろう。登場する「僕」って誰?これはどう
いう物語?しだいに分かってくるのは、この「僕」が作者ローラン・ビ
ネ自身であること。彼はこの暗殺事件について、あらゆる文献を読み、
関連の小説や映画などにもしっかりと目を通している。そして、彼は思
うのだ。いろいろなことは分かった。しかし、分からないこともたくさ
んあるのだ、と。

 小説の中でビネは「この場面も、その前の場面も、いかにもそれらし
いが、まったくのフィクションだ。ずっと前に死んでしまって、もう自
己弁護できない人を操り人形のように動かすことほど破廉恥なことがあ
るだろうか!」と言い放つ。物語を書きながらも作者は、自問自答を続
けるのだ。「フィクションなら何をしてもかまわない」のか、と。裏返
せばこれは、暗殺を実行した2人の青年、そして、彼らを助けたチェコ
の人々への敬意と弔意に違いない。いいかげんなことは書けない、とビ
ネは思っている。

このスタイルは、暗殺のその場面でピークに達する。作者と暗殺者た
ち、過去と現在が渾然一体となったようなこれまでにない表現!感じた
ことがないような興奮!ローラン・ビネ、恐るべし!こういう新しいス
タイルで語られながらも、この小説は戦争の恐ろしさ、人間の狂気をし
っかりと伝えている。反戦への思いも強く感じる。ラストのいかにも小
説らしい終わり方もまたこの作者らしい。これはもう、小説好きにとっ
ては必読の1冊だと僕は思う。(No.289)
       
            ◯ ◯

2014.6.18 Mac、ついにハードディスクを交換。トラブルが続いたが
これで直ってくれれば。サッカー日本代表も、しっかり治して?がんば
ってね。読書は逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」。

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【書評】J.D.サリンジャー「フラニーとズーイ」

◇ありったけの言葉で妹を救おうとする兄の姿が心を打つ。
フラニーとズーイ (新潮文庫)フラニーとズーイ (新潮文庫)
サリンジャー 村上 春樹

新潮社 2014-02-28
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 村上春樹訳の「フラニーとズーイ」。初めてではない。以前、野崎孝訳
の「フラニーとゾーイー」(タイトル表示が変わった)を読んだ。とはい
え、かなり昔のことなので内容を正確には覚えていない。読み進めるうち
に、あぁ、こういう物語だったかと少しだけ思い出した。

 この小説は「フラニー」と「ズーイ」、2つの章からなっている。フラ
ニーとズーイはグラス家7人兄弟(女性もいる)の末の2人にあたる。サ
リンジャーはこの兄弟のことを他の小説でも書いているのだけれども、ニ
ューヨークに住む彼らは「イッツ・ア・ワイズ・チャイルド」というTV
番組にいつも誰かが出ていたというある意味有名人で、そのためにどこか
少しゆがんでいる。この物語は、自意識過剰でどうにも生き難くなってし
まった末娘フラニーを五歳上の兄ズーイが何とか救い出そうとする話だ。

 彼ら2人のやりとりはおもしろいといえばおもしろいのだけれど、フラ
ニーは宗教に助けを求めているので、なんだかちょっとついていけない部
分も多い。昔、読んだときはあまりそれを感じなかったのだけど、今はな
んだかそういうのがめんどくさい。ただ、妹を何とかしようとありったけ
の言葉と知識を用いて語りかけるズーイの姿は心を打つ。サリンジャーら
しいといえば、すごくサリンジャーらしい作品だ。

 読後に野崎訳を手にとってみると、1968年初訳というそれは、恐ろ
しいぐらい古くさかった。古くさいのだけど、洗練された村上訳より僕は
こっちの方がなんだかピンと来る、そんな気がした。(No.285)

◯村上春樹の「フラニーとズーイ」特別エッセイはこちら
○村上春樹のその他の本の書評等はこちらから。

            ◯ ◯

2014.5.20 義父、義母の調子が今ひとつ思わしくなく、妻が実家の高崎
とこちらを行ったり来たりしてるので何だか落ち着かない。読書は川村元
気「世界から猫が消えたなら」。途中から急激におもしろくなる。

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