佐藤正午 no.8        

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佐藤正午が自ら短編のベストと語った「カップルズ」の巧みさ。

カップルズ (小学館文庫)カップルズ (小学館文庫)
佐藤 正午

小学館 2013-01-04
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 作者である佐藤正午は、地元・長崎新聞のインタビュー(2013.1.8)
で代表作は?と問われ「長編では「5」、短編集なら「カップルズ」」
と答えている。「5」はいい、というかスゴい。これは必読だ。「カッ
プルズ」は未読だったので、文庫化を機に読んでみた。ううむ、やっぱ
りこの人はおもしろい。こういう小説らしい小説を書く人が僕は本当に
好きだ。

 さて、この物語、タイトルの通り、男と女をテーマに描かれた7つの
ストーリーが収録されている。話は噂から始まる。妻の不倫の噂、男の
夜逃げの噂、酒場で起こった事件の噂などなど。その噂を聞いて真相を
探ろうとする作者自らを投影したような、していないような「小説家」
が語り手だ。ある噂がめぐりめぐって事実とは違うものになる。あるい
は当事者の思惑とは別のところで違う噂を生み出す。著者がここで描き
出すのは人間というもののおかしさ、愚かさ、悲しさ。さらには、人と
人とのコミュニケーションの微妙さ、などなど。そこには、まるごとの
「人間」がいる。

 佐藤正午という作家は本当に巧みだ。巧みだけれどイヤミではない。
いつの間にか彼の術中にはまり、読み終わってみれば、いやぁやられた
なぁ、という類いの巧みさだ。1人の男が絡んだ2つの事件と女たちを
描く「アーガイルのセーターはお持ちですか?」と「小説家」自らの噂
に話が及ぶラストの一編「グレープバイン」が素晴らしい。(No.233)

5 (角川文庫)
佐藤 正午
404359304X


◯佐藤正午の他の本のレビューはこちらから。 

               ◯ ◯

2013.3.16 東京、桜開花したんだ。武蔵野市の桜まつりは4月の7日
かぁ。ううむ。読書は西田征史「小野寺の弟 小野寺の姉」。

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競輪をテーマに人間を描く佐藤正午の「きみは誤解している」。

きみは誤解している (小学館文庫)きみは誤解している (小学館文庫)
佐藤 正午

小学館 2012-03-06
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 文庫化されたのですぐに読んだ。と思ったら、これ何と2度目の文庫
化だ。単行本は2000年に岩波書店から発売され、03年に集英社文庫に。
僕が読んだのはこの3月に出た小学館文庫のものだ。当ブログでも以前
から佐藤正午ファンだと言ってるのに、このプロセスをまったく知らな
い。やれやれ。インチキくさいファンである。

 「きみは誤解している」は6つの作品を収めた短編集だ。すべて競輪
をテーマにした話である。登場するのは、競輪がなかなかやめられない
男とそのことでギクシャクしている恋人、堅いと自分で信じているレー
スしか買わない信金勤めの女、子供の頃からひとりぼっちで今も働かず
競輪だけで食っている男などなど。一人一人が人間くさくてグイグイと
話にひきこまれていく。

 さて、この本、競輪ファンやギャンブル好きしか楽しめないかという
とそんなことはまったくない。なぜなら、これはギャンブル小説ではな
くて、ギャンブラー小説だからだ。競輪選手を主役にした話はひとつも
ないし、選手がレースのアヤを語ったりもしない。ここで描かれている
のはあくまで「人間」。佐藤正午の他の小説がそうであるように、人と
人が出会ったり別れたりする中で、何かが変わったり、変わらなかった
り。何かを得たり、失ったり。運命にもてあそばれる人々のおかしみや
その変遷、人間心理の妙等々、ストーリーを通してじわじわっと心に迫
って来るものがある。これこそが佐藤正午の小説を読む醍醐味なのだと
思う。ある出来事をきっかけに車券を買わなくなった男が会社の金を持
ち逃げした兄を追い競輪場へと向かうラストの一編「人間の屑」が何と
いっても秀逸だ。(No.194)

◯佐藤正午、その他の本の書評はこちらから。

               ◯ ◯

2012.4.1 残念ながら今の日本にはエイプリルフールを楽しむ余裕もな
さそう。読書は朝井リョウ「少女は卒業しない」がもうすぐ終わる予定。

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巧みに交錯する人とストーリー。佐藤正午「事の次第」。

事の次第 (小学館文庫)事の次第 (小学館文庫)
佐藤 正午

小学館 2011-09-06
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 「バニシングポイント」(97年単行本、2000年文庫で発売)を改題
し、新装版として小学館文庫から刊行されたもの。正午ファンなのにな
ぜか読んでなかったので早速手に取った。

 これは7つの物語からなる連作小説だ。最初の話の冒頭は「今年四十
歳になるタクシー運転手、武上英夫は秘密を三つ持っている」というフ
レーズで始まり、7編目のラストは「今年四十一歳になるタクシー運転
手である武上英夫は、気をまぎらわせるために繰り返しそんなことを考
えていた」で終わる。この武上というドライバーは何編かに登場する。
「連作小説」というのは各々が全く無関係な話ではない、ということだ
が、この「事の次第」における登場人物の重なり具合はかなり微妙で、
話が巧みに交錯している。その交錯加減(?)が尋常ではなく、さすが
佐藤正午なのだ。語られるのは夫婦や恋人、不倫関係など男と女の物語。
今いる場所ではないどこかに、ちょっとしたことで踏み越しそうになっ
てしまう彼らのことを佐藤はいつものクールな文体で描いていく。でき
ればこれ、通勤電車で少しずつというような読み方ではなく、休日に一
気読みした方がいい。話が分断されると大切なことを読み落としてしま
う可能性がありそうだ。特にいいのは最後の2編。作者の描写力が冴え
渡り、非常に濃密な時間がこの中にある。読書の幸せを感じさせてくれ
る一冊だ。(No.183)

               ◯ ◯

2011.12.7 さてさてさて、母親の入院、さらには転院でなんだか忙し
い。その「先」のこともいろいろと考えないといけないし。代官山の蔦
屋書店、行けるのは来年になってからかなぁ。

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佐藤正午らしい、奇妙で一筋縄ではいかない物語「ダンスホール」。

ダンスホール (テーマ競作小説「死様」)ダンスホール (テーマ競作小説「死様」)
佐藤正午

光文社 2011-06-18
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 光文社のテーマ競作小説「死様」の中の1冊、佐藤正午をはじめ6人
の小説家がこのテーマで筆を競っている。競っていると書いたが、まだ
他は読んでないし、佐藤はまともにこのテーマと対峙しているようには
思えない。そこが彼らしさだし、ファンにしてみれば新作さえ読めれば
テーマなんていうくくりはある意味どうでもいいことなのだ。

 それにしても、この小説、読む者を十分に戸惑わせる。最初は小説家
の独白で始まる。病にかかり小説が書けなくなった彼は離婚後にどうに
か立ち直り、ふたたび小説を書き始めるのだと言う。そして、「小説」
が始まるのだが…。その物語はひとことで言えば消えた人物を探す話だ。
西という主人公は、別居中の妻から離婚届を2通渡される。ひとつは自
分たちのもの、もうひとつは妻の今の彼氏のもの。西は彼女から彼氏の
妻のハンコももらってきて欲しいと頼まれるのだ。ふふふ、なかなかお
もしろそうでしょ?

 探している女はいるべきところにはいず、さらに、小説家自身がから
んだちょっとアヤシいストーリーがあり、人と人とが複雑に絡み合い、
ラストあたりになると、もっともっとわけのわからないことになってく
る。でも、確実におもしろいし、登場人物に対する不思議な共感もある。
ちょっと奇妙で一筋縄ではいかない物語ではあるが、佐藤正午の小説の
こういった感じが僕はけっこう好きなのだ。(No.164)

◎「ダンスホール」は2013年11月8日、光文社文庫で文庫化されました。
ダンスホール (光文社文庫 さ)
佐藤正午
4334766609

               ◯ ◯

2011.7.20 いやぁ、なでしこ良かった。本当に良かった。しかし、ワ
イドショーの人って「恋人はいますか?」とかおしゃれはどうだとか、
よくそんなこと聞くよな。ワールドカップ優勝して帰って来たばかりな
のに。マスコミってどこか狂ってる。

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佐藤正午「5」は小説の面白さに満ち満ちている!!

最後の最後まで行き先がわからない佐藤正午ワールドの傑作。

5 (角川文庫)5 (角川文庫)
佐藤 正午

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-01-23
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 これは面白い!とにかく面白い。妻と旅行に来たバリ島で中志郎は一
人の女性と手と手が触れ合い、そのことによって、なぜか妻への情熱を
取り戻す。結婚8年目、すっかり冷めたと思われた妻への愛が突如甦っ
たのだ。その妻、中真智子と長年の間不倫関係にある小説家津田伸一、
実は彼こそがこの小説の主人公。津田は真智子から別れを告げられ、な
ぜか志郎とも会うことになる。そして、彼からは手を触れた相手の女性
についての話を聞くことになる実は…彼女は…。

 ここから先の話をすると読む楽しみが半減するので止めておくが、こ
れは「記憶」に関する物語。そして、同時に「愛」についての物語だ。
もちろん佐藤正午のこと、直球勝負ではない。津田という小説家はけっ
こうヤなヤツだし、キーパーソンとなる石橋って女もかなりヘン。出会
い系にはまってる津田と女性たちのなんやかやが不思議な味つけになっ
ていたりもする。そして、くねくねくねくねとしながらも話は進み、最
後にとんでもないところにたどり着く。佐藤正午という希代のストーリ
ーテラーが紡ぐ物語の舟は、最後の最後まで行く先がわからない。ここ
ですよ、と降ろされた所はもちろん自分が望んでいた場所ではない。で
も、その航路をたどってみてフフフフフとほくそ笑んでみたりするのだ。
               ◯ ◯

2010.7.16 暑い。これはもう梅雨明けでしょう。明日から3連休のよ
うだけど、僕はあまり関係がない。やることやって、あ、そうそう、や
っと「小暮写眞館」に突入。まだ序盤で展開は見えてこない。

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「正午派」って、お昼ピッタリにご飯を食べる人じゃない。

小説家・佐藤正午の魅力にグググっと迫る!!
 佐藤正午はちょっと微妙なポジションにいる作家だ。人気作家という
わけではない(たぶん)。しかし、かなりの固定ファンはいる(たぶん)。
熱狂的というのではなく、密かに愛してる?そんな感じ。だから、この
本のタイトル、「正午派」っていうのはなかなかに正しい。「オレ、正
午派」って言ってみたいんだよなぁ、ファンは。

 背帯には「文壇屈指の小説巧者デビュー25周年記念」なんて書いてあ
り、帯には「完全保存版」とか究極の「佐藤正午読本」なんて言葉がお
どっている。う~む、そうか佐藤正午、あの名作「永遠の1/2」から
四半世紀も書き続けてきたのか…。この本には小説家以前からの年譜も
入ってるので、彼の軌跡をたどってみるのもなかなか楽しい。しかも、
単行本未収録の原稿や名作「Y」の幻の映画脚本まで収められている。
この脚本はなかなか突っ込みどころが多い。まずい、というより「Y」
って小説を映画化するのはやっかいだよなぁ、と思っちゃう。だから、
ま、幻、なんだろうけど。「またひとつおりこうさんになった」という、
佐藤正午が投稿に対して解答する企画がやたらとおかしい。この答えに
佐藤正午のすべてがあるような気がしたりもする。この人ってある意味、
村上春樹的でもあるのだよなぁ(えっ?)。

正午派
4093862443

「Y」もぜひぜひ読んで欲しい!
Y (ハルキ文庫)
4894568586


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佐藤正午「身の上話」、ことの起こりは宝くじ当選。しかし             

佐藤正午は新刊が出たら必ず買う作家の一人です。だってこの人の話は
奇想天外でいったいどこに連れて行ってくれるかわからないから。


2億円当選!もれなく死体も付いてくる!!
宝くじの話からしましょう。大切なポイントですからね。え~っとです
ね、主人公のミチルは上司や同僚から頼まれて昼休みに宝くじを買いに
行きます。

ちょっと細かい話になります。立石さんと沢田主任からはそれぞれ5千
円ずつ預かり、同僚の初山さんからは3千円預かりました。合計1万3
千円。宝くじは一枚3百円。単純に計算すると1万3千円で3百円の宝
くじは43枚買えます。残りは百円です。

[まとめて買っちゃう]
5000円+5000円+3000円=13000円
13000÷300=43枚あまり100円

でも、一人ずつからお金をもらったのですから、立石さんと沢田主任に
は各16枚でおつりは各200円、初山さんには10枚でおつりはなし。全
部で42枚、おつりは400円というのが正解です。
[1人ずつ対応]
2人 5000÷300=16枚あまり200円(2人で32枚あまり400円) 
1人 3000÷300=10枚あまりなし

ミチルは急いでいたので、まとめて43枚買っちゃいました。お金もあっ
たし。なぜ急いでいたかというと好きな男をバスターミナルまで見送り
たかったからです。で、何を思ったか彼女は男について空港、いや飛行
機に乗って彼が住む東京まで一緒に行っちゃうのです。

さて、宝くじです。1枚差が出ましたね。その1枚がもし2億円当たっ
ていたらどうします? そういう話です。いや、そういう話ではないの
ですが…死体ももれなく付いてくるし。でも、やはり宝くじはポイント
です。う~む、佐藤正午、やるなぁ、スゴいなぁ、好きだなぁ。

◎「身の上話」は2011年11月10日、光文社文庫で文庫化されました。

身の上話身の上話

光文社 2009-07-18
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身の上話 (光文社文庫)
佐藤 正午
4334763200

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