【書評】小池真理子「沈黙のひと」        

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【書評】小池真理子「沈黙のひと」

◇生きること、老いることを描いて、これは見事な小説。
沈黙のひと沈黙のひと
小池 真理子

文藝春秋 2012-11-28
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 今年の吉川英治文学賞受賞作だ。作者自身が「生涯の勝負作」と語っ
ただけのことはある力の入った小説。内容的にも今までの小池作品とは
まったく違う。いや、根底に流れているものは一緒かもしれないが。

 「沈黙のひと」とは主人公玲子の父親泰造のことだ。父とはいっても
彼は母を捨て別の女に走り、2人は玲子が幼い頃に離婚している。物語
はその父の死から始まる。老人ホームで死んだ泰造だが、この父娘、差
し向かいで接するようになったのは泰造がホームに入ってからだった。
それまで玲子は、父に対して憎しみもないが、深い情愛も持ってはいな
かったのだ。

 短歌を作り、本をよく読んだ文学好きでダンディな父、仙台赴任中に
不倫関係の女性がいた父、パーキンソン病になってほとんど話すことが
できなくなった父、そんな父親の遺品からは、ポルノビデオや性具が見
つかった。遺品整理、49日の法要での異母姉妹可奈子や千佳との交流
も交えながら作者は「沈黙のひと」の人生を描いていく。印象的なのは
幼い頃の家族3人の暮らしであり、ホーム入居後の父娘のふれあいだ。

 小池真理子は登場人物をていねいに描くことで、その「人間」をくっ
きりと浮き彫りにしていく。泰造はもちろんだが、玲子や母の久子もし
っかりと描かれている。そして作者は、どんな人間もどんな生き方も許
容しているように思える。「生きること」「老いるということ」「家族
というもの」を描いて、これは見事な小説である。(No.245)

◎「沈黙のひと」は2015年5月8日、文春文庫で文庫化されました。
沈黙のひと (文春文庫)
小池 真理子
416790358X

               ◯ ◯

2013.7.3 「あまちゃん」をヘラヘラ見ているうちに1年の半分が終わ
ってしまった。読書は原田マハ、窪美澄他の「恋の聖地」。

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