【書評】中島京子「長いお別れ」        

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【書評】中島京子「長いお別れ」

◇これは夫婦の絆、そして家族の絆の物語だ。
長いお別れ長いお別れ
中島 京子

文藝春秋 2015-05-27
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 読む前は認知症の父親とその家族の話という知識しかなかった。「小
さいおうち」で直木賞をとった中島京子の小説なので期待感はもちろん
あったが、このタイトルで認知症となるとやはり重い話なのかな、と思
っていた。しかし、この思い込みはいい意味で裏切られることになる。
「長いお別れ」は不思議な軽みとそこはかとないユーモアが漂う小説だ
った。これは作家自身の資質なのだろうか。いずれにしても、このライ
ト感覚がとてもいい。

 主人公の昇平には妻の曜子と3人の娘がいる。昇平は中学の校長など
を勤めた男だが、約束の場所にたどり着けなかったことから家族が心配
し、受診の結果、初期のアルツハイマー型認知症という診断を受ける。
この物語は発症して10年間の出来事が描かれているのだが、中島京子は
家族の介護生活を描くだけではなく、長女の息子の失恋話、妻曜子の目
の病の話などのエピソードも描いていて、それがゆるやかに昇平の話へ
とつながっていく。この構成が見事だ。

 最終章。夫に対する曜子の言葉が強く心を打つ。「(昇平は)妻、と
いう言葉も、家族、という言葉も忘れてしまった」「それでも夫は妻が
いないと不安そうに探す。不愉快なことがあれば、目で訴えてくる。何
が変わってしまったというのだろう」。これは認知症の物語であると同
時に、夫婦の絆、そして、家族の絆の物語である。忘れてしまう病によ
って、すべてが失われてしまうのか?

 何があっても動じないたくましささえ感じられる妻曜子のキャラクタ
ーがいい。娘たちの個性もキチンと描かれている。タイトル、認知症の
ことを英語で「ロング・グッドバイ」とも言うらしい。少しずつ記憶を
失くしてゆっくりと遠ざかっていくから。そうか…なるほどなぁ。
(No.349)

◯中島京子の他の本の書評はこちらから。
※一番上にはこのページが出ます。 

            ◯ ◯

2016.2.1 2月だ、2月だ、寒い寒い。暖冬、どっかにいっちゃった
なぁ。サッカーU23、見事でした。読書は角田光代「坂の途中の家」。

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